御馳走☆デリシャス☆恋童話-かぼちゃ2



田舎から出てきた。わたしはかぼちゃのかぼえ。


横綱・かぼちゃ山とは同じ茨城の出身。ついでに言うと、幼なじみだ。


今横綱のかぼちゃ山は、甘みと舌触りのいい稲敷市の「えびすかぼちゃ」。


わたしはほくほくあま~い古河市の「みやこかぼちゃ」。


かぼちゃっつってもいろいろあるんだよ。



御馳走☆デリシャス☆恋童話-かぼちゃ1



そんでも、町は広いなあ。電車に乗ったら間違いなく来れるからって


横綱は言うけど、電車を降りた後は、どうしろって言うんだろか。


おろおろしてたら、急いでる人に背中がぶつかっちちまって、転んでしまった。


ああっ、わたしがとろいもんで、申しわけねえ!


すると、通りすがりの人が親切に声をかけてくれた。




御馳走☆デリシャス☆恋童話-かぼちゃ3




なあんて、きれいな人なんだぁ。これが噂の、紫キャベツか。


わたしは、見とれちまった。


美しいだけでなく、心もやさしい人だなあ。





御馳走☆デリシャス☆恋童話-かぼちゃ4




「だいじょうぶです。どうもありがとうございます。田舎から出て来たんだども、


あんまり駅が広いんでまよっちまったんです」


「どちらに行くの?ご案内しましょうか?」


「わたし、野菜相撲国技館に行きたいんです」


「あら!それでしたら、ちょうどここからバスが出てますよ。こちらにどうぞ」


「ああ、ありがてえ。ありがてえ」


わたしたちはうちとけて、バスまでの短い距離をおしゃべりしながら歩いた。


まるで、以前から知り合いの友達みたいに。























「ああ、ここだ!」








わたし(紫キャベツ)はその日のことを一生忘れないと思う。


その人は、何度もお礼を言って、オレンジ色のバスに乗り込んだ。



こぼれるような笑顔の、かわいい人。


それは、横綱・かぼちゃ山のお嫁さんになる人だった。




御馳走☆デリシャス☆恋童話-かぼちゃ5

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