2012-06-30 19:27:38

+ オスカー・ワオの短く凄まじい人生【ディアス ジュノ】

テーマ:* 最近読んだ本。
 デジャーソリスなんて名前、人生でもう聞く事はないと思ってたよ。
 主人公を取り巻くオタク事情には、AKIRA ハーロック 攻殻機動隊 etcetc・・・・・・スターウォーズやトールキン以上に日本のアニメが数多く出てくる。これぞ日本文化万歳。

 舞台はトルヒーヨ独裁体制下のドミニカ。
 若い美人は発見次第権力者に献上、権力者に目をつけられたら無理矢理な濡れ衣を着せられ私刑。何だか昔のSFや少年漫画のような独裁者による無法地帯だ。
 そんな穏やかならぬ舞台で「オスカー家サーガ」とも言えそうなこの話は主人公オスカーを軸にオスカーの祖母、姉、母と巡り、時代も50年くらいは前後する。

 大筋では三次元の女性と何とかして付き合いたい!脱童貞したいという思春期のオタク少年オスカーが、足掻いて足掻いてどんどん追い詰められていく話だが、そのオスカーを支える姉、姉と親子の葛藤を繰り広げる母、時代を遡って若かりし頃の母、祖母など、出て来る人間が生き生きと生々しくて熱量やドッシリとした重みさえ伝わってくる程。作者なんて男なのに、どうしてこんなに母娘間独特のの支配関係(それだけじゃないけどね)を分かってらっしゃるか。
 私にとって日本はホームだし、所謂英米ものももう慣れ親しんだ庭みたいなもん。だがドミニカともなると感情表現や感覚、感性もかなりアウェイで読んでいるだけで新鮮なのも手伝って。

 オスカーにも何度か彼女が出来かけもするのだけど、読んでいる側にすればそれが愛なのか、自分の衝動の対象として妥当で現実的だと思っただけなのかよく分からず、衝動と焦りと絶望感だけが伝わって来る。
 発情期の動物のように、いっそピュアとも言える気持ちで異性を求め、異性に認められたいと足掻く。まるでそれが自分の全存在価値であるかのように。
 文化だとかカッコだとか人生設計だとか。そういうものを取っ払った南国の生々しさのようなもの。
 私には「愛のために死んだ」のではなく「発情のために死んだ」ようにしか見えないのだが。そこに男女の性差を感じる。

ネタバレあり
(最終、最後の手紙より )
 それでどうなったと思う?イボンとやつと本当にセックスしたのさ。神は偉大なり!オスカーは気に入ったと書いていた。(略)オスカーが本当に感動したのは(略)それまでの人生で彼が予想もしなかった、ちょっとした親密さだった。(略)イボンから少女時代の話を聞いたり、自分がこれまでずっと童貞だったことを話したりするという親密さ。こんなにも長い間これを待たなきゃならなかったなんて信じられないとオスカーは書いていた(待っていたなんて言い方はしないほうがいいと言ったのはイボンだった。じゃあなんて言えばいい?彼女は言った。そうね、ちゃんと生きてきた、かしら)。オスカーは書いていた。他のやつらがいつも話していたのはこれだったんだね!まったく!僕も前から知っていたらなあ!素晴らしい!素晴らしい!


 イボンの表現「ちゃんと生きてきた」が素晴らしい。
 Jock(イケメンリア充)は逆立ちしてもこの境地に立てないだろう。オタク万歳。

 そうそうwikiでスクールカーストを調べていたら、面白いリンクがあった。
 オタクが人気者になれない理由

 最近はこういった事が「発達障害」や脳の欠陥とされる風潮があるが、私には「皆が迷う時に迷わない、"自分が欲しいものが予め分かっている"ギフテッド」にしか思えない。

 そういった意味で、上記リンクには共感する。

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2012-06-21 22:07:39

+ 逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録【市橋達也】

テーマ:* 最近読んだ本。
 不謹慎ながら冒険小説として読めてしまった。

 日頃から記憶している防犯カメラの場所を避けつつ逃亡する。
 図書館で図鑑を見て毒のある魚を覚え、魚を釣って食料にする。
 離島まで泳いで渡り、サバイバル。


 裁縫道具を取り出した。針に糸を通した。鏡を見ながら、鼻に鍵を向けた。
 鼻筋の横から糸のついた針を突き刺した。反対側から糸を抜いて、糸をギュッと締めた状態にして、また反対方向へ針を刺した。それを何度も繰り返した。ちょうどラーメンのチャシューの肉のかたまりをたこ糸でぐるぐる巻きに縛るようにして、鼻を細くしようと思った(P19)。


 素頭が良くて運動神経にも恵まれている子なのだろう。絵も上手いし我慢も努力も出来る。そして少しネジが緩んでいる。それがよく分かった。


 そして人間には優れた資質があれば善悪なんて関係ないのかも知れないと皮肉な気持ちになった。


 この子は犯罪でさえも自分の経験にして糧にして個性にしてしまうのだろうか?


 ある種の、過去が汚いアーティストやクリエイターのように。

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2012-06-03 15:17:06

+ 命のカウンセリング【長谷川 泰三】

テーマ:* 最近読んだ本。
 普段私が居る世界(社会?)と真逆で、新鮮で、面白かった。


《リストカッターに対する記述》

 心の感覚の麻痺にも、同じことが言えるのです。

 あなたが長時間正座をしていて足がしびれて、感覚がなくなったとします。そのとき、あなたはどうしますか?足をパンパンと叩いたりしますよね。それは感覚を取り戻すために行っているのです。
 リストカットも同じことです。p25


《「助けて」に対する記述》
「助けて」という言葉の裏側には、「愛している」という意味が隠れています。
「助けて」とは、好きな人にしか言えないものだからです。「ありがとう」という言葉も同じです。p43


 これは物凄いトラウマと波瀾万丈の人生を一人頑張って生き抜いて来て、「助けて」が言えずに追い詰められてしまった人の話だった。

 この人から「助けて」の一言を引き出す為のセラピーの描写が延々とあり。・・・・・・まるで助けてと言うと死んでしまうかのように、その一言が言えないのだ。

 私が普段忌むのは軽々しく助けてと言って人に負ぶさって楽をする要領良し。死ぬぞ死ぬぞと周囲をコントロールしようとする人。
 そんな紛い物のオリジナルは、こんな人達なのだなと思った。オリジナルは大変そうなのに、元々真面目なオリジナルが「助けて」を言えなくなるのは、そんな紛い物の悪いイメージのせいもあるだろう。



 作者も「助けて」が言えない人だったのだそうだ。それが10代の頃グレて巻き込まれた自動車事故で下半身不随に...「助けて」と言わなければ生きていけない身体になってしまったという。

 そして新たな発見。「助けて」と口に出す事で、迷惑がると思っていた人達が、怒り出すかと思っていた人達が、とても優しい顔になり快く助けてくれたのだという。


 下半身の障害を後から振り返って、神様に「この子の足を取っておこう。でなければ、この子は助けてと言えないまま生きていくだろう。それは足を失う事よりも辛い人生だ」と言われたような気がする と表現されていたのが、この本のテーマそのもので印象に残った。



 日常の話に置き換えても、困っている人間に「助けて」と言われてムっとする人間なんて少ないだろう。
 居たとして、自分がもっと困っているか相手が困っているように見えないか。両方ともムっとするのは無理もない。


 だから生真面目な人は、自分が本当に人様の手を煩わせるほど困っているのか、自分で我慢したり努力すれば良いだけなのではないかと追い詰まってしまうのだろうな。
 上の世代の「(人様に迷惑をかけるから)救急車を呼べない」というものも、教育による刷り込みはあれど、この類なんだろう。

 この場合は自分の「困っている」が「助けて」と言って良いレベルかどうか、言うべきかどうかを客観的に判断出来れば解決するような気がする。


 もうひとつ。「助けて」を言えない程、周囲を信じられない。この場合が「助けて」=「愛してる」の話なのかな。

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