初夏の日や カメルーン代表 回り道


 俳句で綴る、「私」と「時代」。『Shi語俳句の世界』、2回目の更新です。予告も無く、宣伝もほぼ無しでひっそりと始まった連載ですが、俳句を送ってくださるという形で反応をいただきました。この紹介も行いながら、進めていきましょう。


かぎりなく しめやかだけど カズダンス (おかだあづま)


 「Shi語俳句」とは言いますが、一体俳句はどのように書いたらいいのでしょうか。松田ひろむ『一番やさしい俳句再入門』(第三書館)によると、「普段のことばで、見たこと感じたことを素直に詠む」「俳句らしく作ろうとしない」とあります。これはどの入門書でも同じようなことが言われますね。かといって、普段の言葉で俳句を作っていいよと言われても困ってしまいます。


ブルータス FA巨人 お前もか (中島ゴム)


 そうなると、「俳句」と「川柳」の境界もはっきりとしてきません。「季語」のあるなししか違いは無いのか。最初に誕生した「俳句」から、どのようにして「川柳」は派生していったのか、探求してみる必要がありそうです。これは次回にでも。


してあげる。 裏を返せば、 してやんよ! (サンタ)


 さて、「Shi語俳句」を作るにあたり、やはり季節を表す「季語」のように、時代を表す「死語」あるいは「流行り語」をなるべく入れることを心がけてみましょう。その時代、時代で浮かんでくる光景があるはずです。


ジュリ扇で 遊ぶ子供を 母いさめ (導堂)


 では、今回の俳句を見てみましょう。「初夏の日や」の句、時代を表す言葉は「カメルーン代表」、年代は2004年です。W杯当時の熱狂振りを、3面記事と6月のシーズンとで出来事化させました。

 「かぎりなく」の句、時代を表す言葉は「カズダンス」、1994年あたりを詠んだ者でしょうか。いやしかし、当時の熱狂振りの中にあったカズダンスとは違い、時代を経た印象を持ちますね。その時代を表す言葉も、盛り上がった時代を越えていくと、別の深さが出てくるように思えます。

 「ブルータス」の句、時代語は「FA巨人」でしょうか。清原氏が巨人への入団が決まったのが1996年ですから、その頃になるでしょう。「憧れ」と「巨人」が強く結びついていた時代でした。それが「お金」と「巨人」への結びつきへと変わり、「巨人」の意味合いはそっくりそのまま「メジャー」へと変化していきました。

 「してあげる。」の句、時代語は「してやんよ」、初音ミクですから2007年ですね。インターネットをやり始めて8年。やはり昔に流行した言葉は使わなくなったように思います。先ほど「侍魂」を検索したら、2004年くらいで更新が途絶えていました。ゼロ年代の言葉が、今後どうなっていくのかも気になるところです。


 さて、今回一番心を動かされたのが「ジュリ扇で」の句です。正直、こういう句を作れたらいいなと思ってしまいました。1990年頃の時代背景でしょうか。ただ、これは現代の句です。お立ち台を席巻していた女性が、今では家庭を持ち子育てをしているのです。その中での「ジュリ扇」の存在感は異質です。なぜ「ジュリ扇」は今も大切に残っているのでしょうか。夫と知り合えたのは「ジュリ扇」がきっかけなのか、それとも容認してのことなのか。なぜ子供に見えるところに置いてあるのかも気になります。「母」と「ジュリ扇」という言葉の取り合わせが、まさに時代的とも言えるのではないでしょうか。想像が広がりますね。


 まだまだ皆様からの「Shi語俳句」を募集しています。メールは、 hagaki_night@yahoo.co.jp  「Shi語俳句」係まで。時代を表す言葉を入れてくださると、少しだけありがたいです。それでは、また来週お会いしましょう。