冷たい月 許されない行為 | love tablet -ノート-

冷たい月 許されない行為

貴方はペット
私は御主人様


真丸の綺麗な月
冷えた鋭い空気が肌を刺す。
「月姫」
凛とした、そうまるで今日の月のような声で呼ばれる。心地よい。
「ユエ」
「またそんな格好してー。風邪引くよ?」
ため息をつき、呆れた様に言う君は最後に小首を傾げる仕草をする。
私はそれが可愛くて、くすりと笑ってしまった。
それを見たユエはまたため息をついて、私に自分が着ていたコートを着せた。
「もう、笑ってないで、少しは自分の体を心配してよ」
ユエがそういうのも無理ない、冬も間近、吐く息が白くなるような外気だというのに、私はリビングにある大きな窓を全開にして、肩に細い紐がついただけの膝丈の真っ白なワンピースを着ている。
今はユエが着せてくれたコートを羽織ってはいるが、それでも少し寒いと感じる。
それでも窓を閉めないのは、月が綺麗だから。
リビングの大きな窓。
私は月を見るのがすき、綺麗、不思議、見惚れてしまう。
手を伸ばせば届きそう、でも絶対に届きはしない。
窓を閉めたら月が曇ってしまうから、、、、
窓は綺麗に拭いてあるから、実際には曇らないけど、そんな気がする。
「ユエ・・・」
「なに?」
私が視線を向けたからか、ユエはもう今日の月観測は満足したのだと思い、窓を閉めた。
私はユエが窓を閉める仕草をみながら細く息を吐く。
綺麗な爪、綺麗な指、綺麗な腕、体のラインも勿論綺麗で、容姿は息を呑むほど整っている。
「ねぇ、今日、欲しくない?」
「・・・っ」
私が長い髪の毛を梳いて、首筋を覗かせると、ユエは声にならない声を発し、顔を反らした。
決して悪い行為ではないというのに、
むしろ彼にとっては当然の、生きるために必要な行為だというのに、
彼の心には罪悪感が芽生えるらしい。
そんな事を言うのなら、私のほうが罪を犯している。
自ら餌になりたがる、
そんな禁忌。
「ユエ?」
私が彼の名前を呼ぶと、彼は、
顔を切なそうに歪めて、
「――――っん」
突き抜ける痛みはただ一瞬で、すぐに、甘い快楽に変わる。
あたりは静寂に満ちていて、ずっずっと聞こえるのはただ、血を啜る音。
ユエの牙が自分の皮膚に突き刺ささって、そこから血が奪われる。
なんて、甘美な・・・。
視線の先にある、ユエの陶器のような滑らかで白い肌。
腰の辺りから首筋まで背骨をすーとなぞると、ユエの反応が牙ごしに伝わった。
さっきよりも一瞬深くなった牙。
月を見ると先ほどよりも赤く感じた。
「・・・っつ」」
抜き取る際はちょっと痛かった
ちょっと深く噛まれすぎた。
首からは飲みきれなかった血がつーっと伝い、真っ白いワンピースに新しい模様を作る。
「あーあ・・・またやっちゃった」
ユエのその言葉は、ワンピースに赤い模様を作った事に対してか、吸血行為に対してか・・・
血がそれ以上垂れない様、首筋を舐められた。
「ユエ、美味しかった?」
意地悪だとはわかっていても、くすくす笑いながら聞いてしまう。
「むー」
その拗ねた顔がとても可愛いから。
「月姫の血は麻薬だね、一度吸ったら抜け出せない」
一度自分で飲んでみれば?と神妙な面持ちで言われた。
そうなのかな?
手首をおもむろに口の前にもって行き、口をあけて、行きよいよく―――
咬もうとした所で、ユエに止められた。
「冗談だから!」
「うん?」
素でびっくりしてる。
「美味しいなら、飲んでみたかったんだけどなー」
残念と呟くと。
「はぁ・・・」とため息で返された。
「もう月姫は!」
そんな風にちょっと乱暴目に名前を呼ばれ、かなり乱暴に抱きしめられた。
「なに?」
「別にーなんでもないよ」
拗ねたような声でそう呟くユエは、抱きしめられていた所為で顔は見えなかったけど
やっぱり可愛かった。


貴方はペット、私は御主人様?
いいえ
私がペット、貴方が御主人様



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サイトの拍手として使っていたのを見直し、アップしてみました。

当時の後書き↓


ヴァンパイア好きなんですよね、だから吸血シーンは書いて本当に楽しかったです。
耽美的な文章になるようにがんばりましたが、無理でした・・・。


吸血シーンもゆる。