夜想曲
遮光カーテン越しの柔らかな光
響くバイブ音
乱れた白いシーツ
ガラス製のサイドテーブルの上にはグラスに入ったミネラルウォーター
私はそれを手に取り、飲み干す。
ミネラルウォーターはひどくぬるい。
再びシーツの中に埋もれた。
バイブ音は鳴り続けている。
携帯で時間を確認すると、2時間ほど経過していた。
少々寝すぎてしまった。
今にもずれ落ちそうなバスローブをかろうじて引っ掛けてバスルームに向かう。
その途中で眠りにつく前に携帯が着信していたことを思い出して、ベットルームに戻った。
ディスプレイに浮かぶ文字は”クロ”からの着信があったことを表していた。
またと呆れ気味に呟く。
それが嬉しさを隠す為のものとは着信を見たときに思えず微笑んでしまったことで自分でも自覚している。
バカだなと思いながらバスローブを脱ぎ捨てた。
PCに向かい仕事をこなし、晩御飯の材料を買いに、百貨店に行って、帰ってきたら、夕方まで、再びPCで仕事をこなす。
ひどく肩が凝ってしまっていた。
早くお風呂に入り凝りをほぐしたいが、晩御飯を作る前に入っても汗をかくだけなので、先に晩御飯の支度をする事にした。
ほどなくして、オニオンスープ、ハンバーグ、そして、付け合わせの野菜が完成。
満足気にため息を吐き出すと、エプロンを外してスーツを脱ぎ、バスルームに向かった。
一日の疲れを落とし、バスタブに浸かる。暖かいお湯の中で幸せを感じていると、インターホンの音がなった。
お風呂についている画面で人物を確認して、ロックを外すと、タオルをまとって出た。
「早かったね」
ちょうど二重になった玄関の扉を空けて入ってきた彼に言った。
彼は少し間を空けて、
「バスタイムでしたか、それは失礼」
と微笑んだ。
「濡れてる」
鎖骨に触れる。
髪から滴った水、タオルを剥ぎ取られ、体を拭かれる。
「こっちも?」
「…ん」
そう言った声がたまらなくセクシーだった。
「クロ、ご飯、できて、」
私に触れる彼を止めようとそんな事を言ってみる。
「先に甘いものを食べてから」
口付け
私も止める気はないから、さっきの言葉は、なすがままでいたくないというただの意地だ。
軽々しく彼に抱き上げられると、暗いベットの上に降ろされた。
そして、暗転。
白い天井が視界に広がり、すぐ、彼の意地の悪い微笑みが目に入った。
スーツを1枚、1枚と脱がされながら、ぼんやりと、窓から月を見ていた。
彼はそんな私を咎めるように、内股に吸い付き
「余所見しないの」
と口付けた。
「さっき、すぐに食べれば、出来たてだったのに」
冷えたご飯とおかずを再び暖めたものを食べながらそんな会話をする。
「ごめんごめん」
「もう」
心がこもってない、そう呟くと
「ハンバーグ、美味しいよ」
と彼は言った。
彼はクロ、本当の名前ではないし、本当の名前は知らない。
何処に住んでいるのかもわからない。
たまに、というか、ほぼ毎日、私の家に来て、ご飯と、私を食べにくる。
彼が誰だとか、どこに住んでるのかとか、普段は何をやっているのだとかは関係ない。
彼がここに来なくなったら私は寂しい、それだけだ。
「ごちそうさまでした」
彼は満足そうに言うと、食器をシンクに運ぶ。
運び終わると、私の分も持っていってくれた、そして、鼻歌を歌いながら洗い物を始める。
彼はたまにこうして洗いものをしてくれた、私はやることがないので、音楽を流し、雑誌を広げる。
耳に心地よく響く、ピアノの曲。
夜に聞くのにぴったりな少しロマンチックな曲。
曲が1曲終わるかというところで、首筋に冷たいものが触れる。
「クロ?」
彼の指だ、私の問いかけに彼は構わず手を増やし、両の首から頬にかけてを包むと後ろに向けさせられる。逆向きに彼と向き合う形。
ソファーに座る私と、ソファーの後ろに立つ彼。
彼の少し眺めの黒髪が、私の顔に触れてくすぐったい。
冷たい色の瞳に釘付けになる。
どこまでも、透き通った色、きれい。
じっと見つめてると、彼の顔が段々と近づいてきて、
また口付け。
「どうしたの」
喉を鳴らした猫がやるみたいに、顔を彼にすり寄せる。
「メインディッシュを食べた後は、やっぱり、デザートだよね」
「さっき、食べたんじゃなかった?」
意地の悪い笑顔。そんな笑顔にも見蕩れる。
再び軽々しくベットルームに運ばれる。
ふと、目を覚ますと彼がいない。
サイドテーブルにはミネラルウォーター
それを手に取って飲むとまだ冷たかった。
少し前に彼が用意してくれたんだろう。
喉が渇いていたので、全部飲み干す、と
「全部飲んじゃったの?」
彼がベットルームの扉に寄りかかっていた。
私は、こくりと頷く。
「しょうがない人だな」
彼は微笑むと、またミネラルウォーターを注いだグラスを持ってきた。
グラスが二つ。一つは空で、一つは並々と水が入っている。
はい、と言って彼は注がれた水を、半分、空のグラスに移した。
水で満たされたグラス。
「まだいいの?」
「今日はもうちょっとゆっくりしてく」
一口グラスの水を飲むと、布団に潜り込んで、私の腰に抱きついた。
「そっか」
嬉しいけど、そっけない反応をしてしまった。
思えばちゃんと二人で寝るのは初めてだ、私も一口グラスの水を飲むとベットに潜り込んだ。
二つ並ぶグラス、二人で眠るベット。
なんだか、明日は特別な日なんじゃないかと、今からわくわくした。
--------------------------------
とある曲を聴いて思いついた小説なんだけど、最初思ってたのと全然別物になってしまったもの。
だから曲のイメージとも全然違う。
目標はちょっとセクシーな文章だったのだけれども、まあ、うん。
本人に色気も何もないからしょうがないのかな(笑)
白と薄桃
さくらがまう
ひらひらと
大きく枝をのばし、大きく枝を広げた見事な桜の木
それは、綺麗な花を咲かせ、今はその花を散らしている
ひらひらとまうさくらのはなびら
薄桃色の花弁が空へと舞う、青い空とのコントラスト
ひらひら
なびく君のスカート
女の子らしいワンピースに身を包む君、今日は薄化粧をして何時もより魅力的に見える。
桜の木の下で僕に招きをする
ひらひらなびく白いスカート
春の暖かな日差しが注ぐ、白と薄桃のコントラスト
かけよる僕、微笑む君。
最初とは違う、今は
僕に靡いた君
「おまたせ」
手を繋ぎ、どこまでも、
やっと、振り向かせた君と歩いていきたい。
-------------------------
舞うとなびくと靡くをかけてみました。
短くまとめるが目標だったけれども、なんとも恥ずかしく仕上がりました。
最後の部分は最初なかったけれども、あまりにもまとまらなかったから付け足しました←
よって、こっ恥ずかしいものに・・・・。
薄桃は2つのものにかかっています(笑)
ひらひらと
大きく枝をのばし、大きく枝を広げた見事な桜の木
それは、綺麗な花を咲かせ、今はその花を散らしている
ひらひらとまうさくらのはなびら
薄桃色の花弁が空へと舞う、青い空とのコントラスト
ひらひら
なびく君のスカート
女の子らしいワンピースに身を包む君、今日は薄化粧をして何時もより魅力的に見える。
桜の木の下で僕に招きをする
ひらひらなびく白いスカート
春の暖かな日差しが注ぐ、白と薄桃のコントラスト
かけよる僕、微笑む君。
最初とは違う、今は
僕に靡いた君
「おまたせ」
手を繋ぎ、どこまでも、
やっと、振り向かせた君と歩いていきたい。
-------------------------
舞うとなびくと靡くをかけてみました。
短くまとめるが目標だったけれども、なんとも恥ずかしく仕上がりました。
最後の部分は最初なかったけれども、あまりにもまとまらなかったから付け足しました←
よって、こっ恥ずかしいものに・・・・。
薄桃は2つのものにかかっています(笑)
Do you wonder?
僕は迷っていた。
時計がないから、どのくらいの時間迷ったかかはわからない、けれども自分の感覚では、半日くらいたったのではないかと思う。
右を見ると僕の背よりも高い木でできた、垣根。
左を見ると僕の背よりも高い木でできた、垣根。
同じように後ろを見ると、少し離れた所に僕の背よりも高い木でできた、垣根。
前ははるか向こうに垣根が見える。
葉は青々と生い茂り、覗き込んでも、垣根の裏に何があるかわからない。
まるで、迷路だ。
いや、まるでじゃない、実際迷路なのだ。
垣根は、まっすぐ立ってはおらず、時折直角に曲ったり、途中で切れてたりする。
何度目かわからない溜息を吐きながら、僕は再び歩き出した。
沢山歩いたけれども、思ったより足は疲れていなかった。
踏みしめる足裏の感触はふわふわしている。
2色の芝生が地面を覆っていて、それは市松模様になっている。凝った造りだ。
しばらく歩くと、垣根が途切れており、どうやら、右に進めるらしい。
右が真っ直ぐか。
心なしか、右の道から甘い匂いが漂って来た。
右に行く事に、決めた。
甘い香りの招待は、紅茶であった。
しばらく右に歩くと、また、右に折れ、更に右に折れたところが行き止まりで、そこには、長く白いテーブルクロスがかかったテーブル。
その上には、白いティーポットと、温かい紅茶の入った、ティーカップがいくつも置いてあった。
ティーカップからは、豊かな香りが立ち込める。上質な紅茶だ。
傍らには、バスケットに入ったお茶菓子の数々。
色とりどりの包装紙が、私を食べてと、言ってるようだ。
僕は一通りその紅茶の香りを楽しんだ後に、無人のお茶会の場を去った。
このご時世に、道端にある物を口にする、などという馬鹿な真似はしない。
そういうのは、本の中や、空想だけだ。
実際、目の前に美味しそうな紅茶、お茶菓子があったからと言って、食べようなんて気にはならない。
結局さっき誤った選択をした道まで戻り、真っ直ぐの道を進み始めた。
しばらく歩くと、薔薇の花々が咲き乱れる、薔薇園に迷い込んだみたいだ。
真っ赤な薔薇が美しい。
しばらくこの、薔薇園は続くらしい。
先を見ると、見える位置までは薔薇が咲き乱れ、華やかな道となっていた。
薔薇を眺めながら、歩く。
薔薇のいい香りが鼻をくすぐった。
こんな風に、景色が変わり、飽きないのが、この迷路の救いだった。
さすがに、ずっと緑色の垣根だけだったら、気が滅入ってしまっていただろう。
ここまで、来るのにも、様様な花の花壇や、垣根じゃなくて、高い塀になっているところもあった。
その塀の上にひとつの大きな卵がおいてあるのには笑ったけれども。
薔薇園を抜けたところに、ちょうどいい大きさの腰掛けがあった。
もちろん椅子などではなく、それは大きなキノコの置物である。
赤い傘に水玉の模様。
典型的とも呼べるキノコである。
僕はそこで休憩することにした。
なにかあるかな、と水色のワンピースのポケットを探すと、瓶に入ったジュースと、一枚のクッキーが出てきた。
少しお腹もすいたし、のども乾いた。
瓶の蓋をあけると、何とも言えない甘酸っぱい匂いがした。
クッキーを食べて、パサパサになった口内に流し込む。
そして、またクッキーを頬張ろうとした時だ、
一匹のうさぎが通りかかる。
(遅れてしまう)
頭の中で声が反芻した。
何か、引っかかる。
前にも一度、こんなことがあったような。
妙な既視感を僕は感じていた。
食べかけのクッキーの最後の一口を食べ、ジュースの瓶を傾ける。
すると、思い付いた。
この既視感の理由と、この迷路の抜け方を。
今までにもヒントはあったはずなのに、気づくのが遅すぎる。
自分に呆れ、苦笑い。
そして、ゆっくりと目を閉じた。
---------------------
不思議の国の迷路
とい、安易なタイトルを考えたのですが、
最初からネタばれやとおもって変えました。
時計がないから、どのくらいの時間迷ったかかはわからない、けれども自分の感覚では、半日くらいたったのではないかと思う。
右を見ると僕の背よりも高い木でできた、垣根。
左を見ると僕の背よりも高い木でできた、垣根。
同じように後ろを見ると、少し離れた所に僕の背よりも高い木でできた、垣根。
前ははるか向こうに垣根が見える。
葉は青々と生い茂り、覗き込んでも、垣根の裏に何があるかわからない。
まるで、迷路だ。
いや、まるでじゃない、実際迷路なのだ。
垣根は、まっすぐ立ってはおらず、時折直角に曲ったり、途中で切れてたりする。
何度目かわからない溜息を吐きながら、僕は再び歩き出した。
沢山歩いたけれども、思ったより足は疲れていなかった。
踏みしめる足裏の感触はふわふわしている。
2色の芝生が地面を覆っていて、それは市松模様になっている。凝った造りだ。
しばらく歩くと、垣根が途切れており、どうやら、右に進めるらしい。
右が真っ直ぐか。
心なしか、右の道から甘い匂いが漂って来た。
右に行く事に、決めた。
甘い香りの招待は、紅茶であった。
しばらく右に歩くと、また、右に折れ、更に右に折れたところが行き止まりで、そこには、長く白いテーブルクロスがかかったテーブル。
その上には、白いティーポットと、温かい紅茶の入った、ティーカップがいくつも置いてあった。
ティーカップからは、豊かな香りが立ち込める。上質な紅茶だ。
傍らには、バスケットに入ったお茶菓子の数々。
色とりどりの包装紙が、私を食べてと、言ってるようだ。
僕は一通りその紅茶の香りを楽しんだ後に、無人のお茶会の場を去った。
このご時世に、道端にある物を口にする、などという馬鹿な真似はしない。
そういうのは、本の中や、空想だけだ。
実際、目の前に美味しそうな紅茶、お茶菓子があったからと言って、食べようなんて気にはならない。
結局さっき誤った選択をした道まで戻り、真っ直ぐの道を進み始めた。
しばらく歩くと、薔薇の花々が咲き乱れる、薔薇園に迷い込んだみたいだ。
真っ赤な薔薇が美しい。
しばらくこの、薔薇園は続くらしい。
先を見ると、見える位置までは薔薇が咲き乱れ、華やかな道となっていた。
薔薇を眺めながら、歩く。
薔薇のいい香りが鼻をくすぐった。
こんな風に、景色が変わり、飽きないのが、この迷路の救いだった。
さすがに、ずっと緑色の垣根だけだったら、気が滅入ってしまっていただろう。
ここまで、来るのにも、様様な花の花壇や、垣根じゃなくて、高い塀になっているところもあった。
その塀の上にひとつの大きな卵がおいてあるのには笑ったけれども。
薔薇園を抜けたところに、ちょうどいい大きさの腰掛けがあった。
もちろん椅子などではなく、それは大きなキノコの置物である。
赤い傘に水玉の模様。
典型的とも呼べるキノコである。
僕はそこで休憩することにした。
なにかあるかな、と水色のワンピースのポケットを探すと、瓶に入ったジュースと、一枚のクッキーが出てきた。
少しお腹もすいたし、のども乾いた。
瓶の蓋をあけると、何とも言えない甘酸っぱい匂いがした。
クッキーを食べて、パサパサになった口内に流し込む。
そして、またクッキーを頬張ろうとした時だ、
一匹のうさぎが通りかかる。
(遅れてしまう)
頭の中で声が反芻した。
何か、引っかかる。
前にも一度、こんなことがあったような。
妙な既視感を僕は感じていた。
食べかけのクッキーの最後の一口を食べ、ジュースの瓶を傾ける。
すると、思い付いた。
この既視感の理由と、この迷路の抜け方を。
今までにもヒントはあったはずなのに、気づくのが遅すぎる。
自分に呆れ、苦笑い。
そして、ゆっくりと目を閉じた。
---------------------
不思議の国の迷路
とい、安易なタイトルを考えたのですが、
最初からネタばれやとおもって変えました。
サイト改装
昨日、サイトを改装しました。⇒-love tablet-
チェック柄から、トランプのマーク柄に。
ついでに、ブログも同じ柄に。
お借りした素材サイト様はリンクに貼ってあります。
ものすごく久しぶりにサイトを更新した気がします(笑)
チェック柄から、トランプのマーク柄に。
ついでに、ブログも同じ柄に。
お借りした素材サイト様はリンクに貼ってあります。
ものすごく久しぶりにサイトを更新した気がします(笑)
3 最後のキス スクラップ
循環型社会形成法が成立し、かつて豊富にあった資源は枯渇し、今では再利用する事が当たり前となった。今では色んな規制の元、様々なものが再利用されている。
本当に環境に優しい時代だ。
定期的な点検。
人間に置き換えるなら健康診断。それに彼女が引っ掛かるなんて思いもしなかった。
彼女は普通に動いてる、笑ってる、可笑しな事もしない、従来通りの彼女なのに。
あと数日で俺の前から永久に消える循環型社会形成法という法律の元に。
「マスター、今日のご飯は何がいいですか?」
ワンピースの裾を翻して振り返った彼女は笑顔でそう聞いた。
元々彼女は両親が家事が全く出来ない俺が一人暮らし始めた時、行きなり送られたものだ。
チャイムが鳴り、何だろう?とインターホンを見ると宅配便のお兄さんが立っていた。
判子を持って玄関を開けると
「判子お願いします」
爽やかな笑顔と共に伝票を渡された。
「荷物大きいので今お持ちしますね」
その言葉の後、運ばれた荷物は確かに相当大きなものだった。
荷物は二人がかりで運び込まれ、リビングに置いてもらった。
箱を開けた瞬間俺はびっくりして思わず後ろに後ずさってしまった。
そこには見たこともない、可愛い女の子が横たわっていたのだ。
肌は白く、陶器のように滑らかで伏せられた瞼には長い睫毛。
絹のような細く艶のある髪の毛は柔らかいクリーム色だった。
放心してしばらく段ボールに横たわる彼女を見ていた、すると行きなり彼女は立ち上がった。
「マスターを確認します、暫く動かないでください」
淡々と機械的な口調で言われて思わず従ってしまう。
確認作業は数秒で終わったらしく、彼女は次にこう言葉を発した。
「今日の晩御飯は何がよろしいでしょうか?」
混乱を極めた僕は思わず
「シチューで」
と言った。
「マスター?聞いてます?」
僕が追憶の彼方へ飛び立っていると彼女がそう聞き返した。
「あぁ…聞いてるよ、そうだな、シチューがいいかな」
初めて会った時の晩御飯に作ってもらったシチュー
あのあと落ち着いて彼女の入っていたダンボールを確認したら母と父の手紙が入っていて、
家事が出来ない僕のことを心配して買った旨が書かれていた。
その時は、社会人になって自分で買おうと思えば買える自分にこんなものを買って、心配性(過保護?)な親だと若干のあきれを感じたけど、今となっては感謝している。
彼女に会えたのは両親のお陰だ。
彼女が台所に立つ、まな板に包丁が当たるこんこんという定期的な音が響く。
耳に心地よい。
こんこん…
彼女の腕が動く、
ふーん、ふふふん…
彼女が鼻歌を歌い始める
僕はそれをじっと目に焼き付ける。
ああ…幸せの瞬間だ。
「今日は、買い物行く途中の道で桜を見ました、もう春ですね」
彼女が嬉しそうに話す、
些細な日常の事を彼女は笑顔で話す。
それを聞くのが僕は好きだ。僕も自然に笑顔になる。
「そうだね、そう言えば僕も今朝駅に行く途中に、たんぽぽの花をみたよ。コンクリートの隙間から生えてた」
「たんぽぽはどこでも生えますからね」
「うん、それで昔歌った歌を思い出したよ」
「どんな歌ですか?」
おたまを持った彼女がしょっこり顔を出しながら言う。
「幼稚園に通ってた頃に歌った歌で、他の部分はちょっと忘れちゃってこのフレーズしか分からないんだけど、
『どんな花よりたんぽぽの花を貴方に送りましょう~』
っていう歌なんだけど、今思うとたんぽぽの花送ったら子供じゃない限り怒られそうだね」
「そうですね、バラとかなら兎も角、女の子にたんぽぽ送ったら怒られそうですよね」
「だよねー」
「でも、私は怒りませんよ、たんぽぽ好きですしね。どんな所でも咲いて何にも負けないって感じが」
うん、彼女のこういうところが好きだ。小さい頃は僕もそう思った。この歌が好きだった。
今忘れてしまってた昔の感情が蘇る。彼女と居るとこういう純粋な気持ちを思い出す。
「うん、僕もこの歌好きだった。」
「忘れちゃったのに?」
彼女は意地悪して聞いてくる。
「うん、忘れちゃったのに」
くすくすと彼女は笑うと「あ、お鍋!」とキッチンに戻って行った。
僕は手元にあった雑誌を取り最初の1ページをめくる。
『限りある資源を大切に』とでかでかと書かれた文字に、分別して捨てようという事を表している何十とあるゴミ箱と一人の人間の絵。
そこのゴミ箱の一番は端にはAndroidと書かれている。
胸が痛んだ。
もう彼女と過ごせる時間は僅かだ。
何時もと変わらぬ毎日を過ごしてきた。
あの宣告が無かったかのように。
でも今日は少し違っていた、何時もならとっくに寝ている時間、二人ただリビングで座っていた。
玄関にはたんぽぽの花が一輪飾ってある。
少し可哀そうかなと思ったけど、会社帰りに摘んできてしまった。
彼女にあげたら少しの驚きの後にすごく喜んでくれた。
「マスター」
しんと静まり返る中彼女の声が響いた。
「どうした?」
聞くと彼女は少しためらいつつも
「あの、最後にお願いがあります」
最後、その言葉にちくりと胸が痛む。
「うん、なに?」
僕はどんな願いだって叶えよう。君が望むなら、たとえ今「君がまだ君でいる事を望むなら」僕は社会にだって反抗する。そのくらい彼女が大切だ。
しかし、彼女はそんな事は望まない。望んでくれたらと思うのは僕の勝手な願い。
「あ、あの…私のような、物がこんなお願いするのは場違いな事は分かっています。けど、あの…」
彼女は少し赤くなりながら「あの…えと…」「嫌ならいいんですよ」と何度も聞いて
混乱の為か、焦点が定まらずに視線を左右、上下にに動かす。
そんな動作もかわいいと思う。
「何でも叶えてあげるから、言ってごらん?」
僕がこう言うと言う決心がついたのか、こくっと頷いた。
「最後、に…あの…キス…してほしいです」
どくんと心臓の自分の心臓の音が聞こえた。
彼女は恥ずかしいのか、俯いている。耳までが真っ赤だ。
彼女が望んだものは僕が望んでいた事だった。
僕が何も言わないからなのか、彼女が俯くのを辞めてこちらを見た。そして口を開く。
彼女の口が開かれて言葉を言うその前に、僕は言った。
「僕もしたいと思っていた」
そう言うと彼女の頬が朱に染まる。
両手を口にあてて、驚いている。
「そんな事したらできないでしょ」
そう言って、彼女の細い腕を掴み、引き寄せる。
すんなりと彼女は腕の中に収まった。
空いている腕で彼女の背に腕をまわし、唇を重ね合わせた。
キスする瞬間に息をのむ音、呼吸音
甘い、香りと、柔らかい、感触
そして暖かい。
人間とまったく同じなのに、人間ではない存在
こんなにも愛おしいのに、ずっと一緒に居たいのに。
叶わない。
その晩僕たちは何度もキスをした。
翌朝、彼女は笑顔で出かけて行った。
夜になったらまた帰ってくるような、そんな何時もと変わり映えしない朝。
何時もと違うのは、僕たちは玄関でキスをした。
朝に飲んだココアの香りがする、ほんのりと甘いキスだった。
僕たちの最後のキスだった。
------------------------------
前ブログから移動!
最後のころ恥ずかしい展開で、ね、、、本当に。
きゃーってなりながら書いてました。
二次辞めてから、甘甘なんて書いてないから慣れてないんですねきっと。
話的には、結構自分的には気に入ってます。
ちょっと未来のお話ちっくな感じです。
話の中で歌ってるのはたんぽぽっていう曲で、幼稚園の時によく歌ってた曲でしたね。
たんぽぽ組だったからかな?
1 レース(競争) 出来心
2 「ただいま」 鍵
3 最後のキス スクラップ
ランダム2×3題 イノモ様
本当に環境に優しい時代だ。
定期的な点検。
人間に置き換えるなら健康診断。それに彼女が引っ掛かるなんて思いもしなかった。
彼女は普通に動いてる、笑ってる、可笑しな事もしない、従来通りの彼女なのに。
あと数日で俺の前から永久に消える循環型社会形成法という法律の元に。
「マスター、今日のご飯は何がいいですか?」
ワンピースの裾を翻して振り返った彼女は笑顔でそう聞いた。
元々彼女は両親が家事が全く出来ない俺が一人暮らし始めた時、行きなり送られたものだ。
チャイムが鳴り、何だろう?とインターホンを見ると宅配便のお兄さんが立っていた。
判子を持って玄関を開けると
「判子お願いします」
爽やかな笑顔と共に伝票を渡された。
「荷物大きいので今お持ちしますね」
その言葉の後、運ばれた荷物は確かに相当大きなものだった。
荷物は二人がかりで運び込まれ、リビングに置いてもらった。
箱を開けた瞬間俺はびっくりして思わず後ろに後ずさってしまった。
そこには見たこともない、可愛い女の子が横たわっていたのだ。
肌は白く、陶器のように滑らかで伏せられた瞼には長い睫毛。
絹のような細く艶のある髪の毛は柔らかいクリーム色だった。
放心してしばらく段ボールに横たわる彼女を見ていた、すると行きなり彼女は立ち上がった。
「マスターを確認します、暫く動かないでください」
淡々と機械的な口調で言われて思わず従ってしまう。
確認作業は数秒で終わったらしく、彼女は次にこう言葉を発した。
「今日の晩御飯は何がよろしいでしょうか?」
混乱を極めた僕は思わず
「シチューで」
と言った。
「マスター?聞いてます?」
僕が追憶の彼方へ飛び立っていると彼女がそう聞き返した。
「あぁ…聞いてるよ、そうだな、シチューがいいかな」
初めて会った時の晩御飯に作ってもらったシチュー
あのあと落ち着いて彼女の入っていたダンボールを確認したら母と父の手紙が入っていて、
家事が出来ない僕のことを心配して買った旨が書かれていた。
その時は、社会人になって自分で買おうと思えば買える自分にこんなものを買って、心配性(過保護?)な親だと若干のあきれを感じたけど、今となっては感謝している。
彼女に会えたのは両親のお陰だ。
彼女が台所に立つ、まな板に包丁が当たるこんこんという定期的な音が響く。
耳に心地よい。
こんこん…
彼女の腕が動く、
ふーん、ふふふん…
彼女が鼻歌を歌い始める
僕はそれをじっと目に焼き付ける。
ああ…幸せの瞬間だ。
「今日は、買い物行く途中の道で桜を見ました、もう春ですね」
彼女が嬉しそうに話す、
些細な日常の事を彼女は笑顔で話す。
それを聞くのが僕は好きだ。僕も自然に笑顔になる。
「そうだね、そう言えば僕も今朝駅に行く途中に、たんぽぽの花をみたよ。コンクリートの隙間から生えてた」
「たんぽぽはどこでも生えますからね」
「うん、それで昔歌った歌を思い出したよ」
「どんな歌ですか?」
おたまを持った彼女がしょっこり顔を出しながら言う。
「幼稚園に通ってた頃に歌った歌で、他の部分はちょっと忘れちゃってこのフレーズしか分からないんだけど、
『どんな花よりたんぽぽの花を貴方に送りましょう~』
っていう歌なんだけど、今思うとたんぽぽの花送ったら子供じゃない限り怒られそうだね」
「そうですね、バラとかなら兎も角、女の子にたんぽぽ送ったら怒られそうですよね」
「だよねー」
「でも、私は怒りませんよ、たんぽぽ好きですしね。どんな所でも咲いて何にも負けないって感じが」
うん、彼女のこういうところが好きだ。小さい頃は僕もそう思った。この歌が好きだった。
今忘れてしまってた昔の感情が蘇る。彼女と居るとこういう純粋な気持ちを思い出す。
「うん、僕もこの歌好きだった。」
「忘れちゃったのに?」
彼女は意地悪して聞いてくる。
「うん、忘れちゃったのに」
くすくすと彼女は笑うと「あ、お鍋!」とキッチンに戻って行った。
僕は手元にあった雑誌を取り最初の1ページをめくる。
『限りある資源を大切に』とでかでかと書かれた文字に、分別して捨てようという事を表している何十とあるゴミ箱と一人の人間の絵。
そこのゴミ箱の一番は端にはAndroidと書かれている。
胸が痛んだ。
もう彼女と過ごせる時間は僅かだ。
何時もと変わらぬ毎日を過ごしてきた。
あの宣告が無かったかのように。
でも今日は少し違っていた、何時もならとっくに寝ている時間、二人ただリビングで座っていた。
玄関にはたんぽぽの花が一輪飾ってある。
少し可哀そうかなと思ったけど、会社帰りに摘んできてしまった。
彼女にあげたら少しの驚きの後にすごく喜んでくれた。
「マスター」
しんと静まり返る中彼女の声が響いた。
「どうした?」
聞くと彼女は少しためらいつつも
「あの、最後にお願いがあります」
最後、その言葉にちくりと胸が痛む。
「うん、なに?」
僕はどんな願いだって叶えよう。君が望むなら、たとえ今「君がまだ君でいる事を望むなら」僕は社会にだって反抗する。そのくらい彼女が大切だ。
しかし、彼女はそんな事は望まない。望んでくれたらと思うのは僕の勝手な願い。
「あ、あの…私のような、物がこんなお願いするのは場違いな事は分かっています。けど、あの…」
彼女は少し赤くなりながら「あの…えと…」「嫌ならいいんですよ」と何度も聞いて
混乱の為か、焦点が定まらずに視線を左右、上下にに動かす。
そんな動作もかわいいと思う。
「何でも叶えてあげるから、言ってごらん?」
僕がこう言うと言う決心がついたのか、こくっと頷いた。
「最後、に…あの…キス…してほしいです」
どくんと心臓の自分の心臓の音が聞こえた。
彼女は恥ずかしいのか、俯いている。耳までが真っ赤だ。
彼女が望んだものは僕が望んでいた事だった。
僕が何も言わないからなのか、彼女が俯くのを辞めてこちらを見た。そして口を開く。
彼女の口が開かれて言葉を言うその前に、僕は言った。
「僕もしたいと思っていた」
そう言うと彼女の頬が朱に染まる。
両手を口にあてて、驚いている。
「そんな事したらできないでしょ」
そう言って、彼女の細い腕を掴み、引き寄せる。
すんなりと彼女は腕の中に収まった。
空いている腕で彼女の背に腕をまわし、唇を重ね合わせた。
キスする瞬間に息をのむ音、呼吸音
甘い、香りと、柔らかい、感触
そして暖かい。
人間とまったく同じなのに、人間ではない存在
こんなにも愛おしいのに、ずっと一緒に居たいのに。
叶わない。
その晩僕たちは何度もキスをした。
翌朝、彼女は笑顔で出かけて行った。
夜になったらまた帰ってくるような、そんな何時もと変わり映えしない朝。
何時もと違うのは、僕たちは玄関でキスをした。
朝に飲んだココアの香りがする、ほんのりと甘いキスだった。
僕たちの最後のキスだった。
------------------------------
前ブログから移動!
最後のころ恥ずかしい展開で、ね、、、本当に。
きゃーってなりながら書いてました。
二次辞めてから、甘甘なんて書いてないから慣れてないんですねきっと。
話的には、結構自分的には気に入ってます。
ちょっと未来のお話ちっくな感じです。
話の中で歌ってるのはたんぽぽっていう曲で、幼稚園の時によく歌ってた曲でしたね。
たんぽぽ組だったからかな?
1 レース(競争) 出来心
2 「ただいま」 鍵
3 最後のキス スクラップ
ランダム2×3題 イノモ様