マーカーキングピン | スキーヤー古瀬和哉

スキーヤー古瀬和哉

白馬でバックカントリーガイドをしているスキーヤー古瀬和哉。  スキーが上手いってどうゆう事か、どうしたらスキーが上達するのかを常に考えながら書いてます。スキーに人生を捧げた滑り手のブログ。



今回は先シーズン僕が使用した、


MARKER KINGPINについて書きます。


MARKERが満を持して発表したテックビンです。


先シーズン1月から5月まで主に


ガイディングや春のロングルートで使用しました。




感想から言うと、


まず、第一に


アルペンビンディングと同じ


滑走フィーリングが得られます。


『アルペンビンディングに近い』とか、


『同じ様な』でなくて、


『同じ』です。


その理由はやはり、ヒールピースが従来のテックビンの様な、

2本のピンでなく、アルペンビンディングと同じ様にブーツのコバ


をホールドするシステムだからでしょう。


従来のテックビンでは、ターン中にヒールピンがスキーのフレックスに

同調して、たわむ事が無かったので、ブーツ下のスキーのフレックスが


でませんでした。


だからMARKERは従来のブーツコバを押さえるヒールピースを


採用しなければならなかったのです。


このヒールピースにより、


アルペンビィンディングと同じ滑走フィーリングが


得られます。




次に


誤解放の少なさ。というか一回もありませんでした。


(マーカービィンディングの他のモデルでも一回もありませんが。)


ハイシーズンのパウダーコンデションで


マッシュからジャンプしたり、


オープンバーンでスピードを出したり、


パークで15m位のキッカーを飛び、着地しても外れませんでした。


従来のテックビィンディングは誤解放し易いからと言って


トゥピースを解放しない様にロックして滑る人がいますが、


もちろん僕は一回もロックして滑りませんでした。


スキーのビィンディングに求められる


最も基本的で最も重要な機能は


転倒した時にちゃんと解放し、


転倒していない時に誤解放しない事です。


解放機能をロックすると言う事は


この最も重要な機能を自ら放棄すると言う事です。


ビィンディングは怪我に直結するギアですので


ロックして滑るのは辞めましょう。




強度に関しては


先シーズン、先行販売された海外では、


ピンが抜ける事例が報告されましたが


もう既に改良され、1シーズンかなりハードに


使用しましたが、故障は一カ所もありませんでした。


僕は週5日~7日滑っているので


僕の1シーズンの使用回数は


毎週末滑るスキーヤーの数年分の使用回数に


なると思います。




使いやすさ


マーカーの他のツアーバインディングもそうなのですが


滑走、登行モードの切り替えレバーがセンターにあり


ブーツを脱がないと切り替え出来ないシステムになっています。


多くのユーザーはこのシステムをいやがります。


他社の様にブーツを履いたまま切り替えがしたいと


よく言われますが、


僕はdukeが発表されたときこのシステムを見て


『さすがマーカーだ。』


と感じました。


滑走中に、ストックや枝などの接触で


誤ってモードチェンジしてしまう


誤作動が絶対に起きない様に


あえてブーツの下にレバーを配置しています。


ブーツを履いたままモードチェンジしたい


人の多くはシール登行時に現れる


下りが苦手な人だと思いますが


アドバイスとして、兼用ブーツの場合


ブーツを滑走モードにしましょう。


僕もビィンディングが登行モードでもいくらでも


滑れますが、ブーツが登行モードだと


全然滑れません。


ちょっとはなしがそれましたね。





最後に重要なのが


ブーツと板との相性です。


以前ギア選びに付いて


このブログでも、同じ事を書きましたね。




ある程度の滑走性能があり


少し軽さも意識してデザインされたスキーなどとの


相性はいいと思います。




テック対応の兼用ブーツの中では


滑走性がある程度重視されたモデルとの


相性がいいです。


『相性がいい』


と言うのは、つまり


キングピンはテックビィンディングの中では


一番滑走性能が高いモデルですが


DUKEの方が更に上を行く強度と剛性があります。


重さに関しては


MARKER TOURよりも軽いですが


他社のテックビンの方が軽いです。


スキーもブーツも同じ様なコンセプトで


デザインされたモデルと組み合わせた方が


お互いの性能が発揮されます。




このセットアップがギア選びで一番難しく


失敗する人が多いところです。


各ギアのコンセプトを良く理解して


スキー、ブーツ、ビィンディングのコンセプトを


あわせましょう。


この前まで早期予約会などで


『その板にはキングピンじゃないですよ』


とご案内する事が何件もありました。


マーカーの仕事で行ってキングピンを


売る為に会場に立っていながら、


お客様も、話題のキングピンを買う気満々なのに、、、


ちょっとめんどくさい店員ですよね。


でもお話しすると皆さん納得してくれます。


今期、マーカーからキングピン用のブレーキが


125 mmまでしか発売されないのは


『それ以上太い板にはキングピンじゃないでしょ。』


と言うマーカーからのメッセージでもあります。


僕自身も、先シーズンはキングピンの耐久性も含めた


テストをしたかったので、


かなりの回数キングピンを使いましたが、来シーズン以降は、


ルートやコンデションなどによって


より強度と剛性があるMARKER DUKEと使い分けます。



キングピンはとても良いテックビンディングだと


思いますが、それが全てのスキーやにとってとは限りません。


とにかく軽さにこだわりたい人や


崖からジャンプしたい人にとっては


他にもっと適した物があります。


滑走性能は妥協出来ないけど


やっぱり軽さも気になる人や、ハイシーズン中の近場と


春のロングルートで板を使い分けてる人


にとっては革命的ビィンディングだと思います。



なんだか2007年にMARKERがDUKEを発表


してバックカントリーシーンに革命を起こした時の事を思い出します。


2007年以前、僕の様な滑走性能を犠牲に出来ない滑り手にとっては


アルパイントレッカーやセキュラフィックスなどのアタッチメントを使うか


スノーシューで気合いのラッセルをするしか選択肢がありませんでした。




スキーメーカーは、現在小さなガレージブランドが沢山あります。


僕らが見た事も、聞いた事も無い様なブランドが


世界中に沢山ありますが、


ビィンディングのガレージブランドって


聞かないですよね?


おそらくガレージで作れる代物ではないからだと思います。


それだけ


滑走中に誤解放しなくて、転倒時には正しく解放する


この基本的な性能を作り出すのに高い技術が必要だからではないでしょうか。


ビィンディングは信頼出来る物でないと安心して滑れません。


マーカーの技術力と開発力は素晴らしいですね。


ギア選び迷っている人の参考になりましたでしょうか?


マーカーキングピン結構人気ですので


品薄になる可能性もあります。


検討中の方はお早めに。


長文最後まで読んで頂きありがとうございます。

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