第三百五十話、MS01 アクイレギア計画――Part8
前回の続き――
さて、いよいよ後輪――。
前輪と同じく、ニップルをマイナスドライバーでテキトーに締める。
――が、注意点がひとつ。
締めこむのはフリー側のみ。
反フリー側は、締めすぎないこと。
この段階で反フリー側が締まってると、後でややこしいことになるので適度にゆるめとく。
(まったく締めないでもいいくらいだ)
第二段階
ココでも前輪同様、イチオ~スポークテンションを出していく。
――が、かなりコツが違う。
まず下の写真アンド略図を見て欲しい。
ちなみにコレが、縦フレ・横フレ・センター出し、まで終わった最終形。
右の略図のように、理想的な後輪の形状になっている。
まず、フリー側(ギアスプロケ側)のスポークのみテンションを出す。
基本は、前輪の第二段階
・第三段階
と同じ。
違いは、反フリー側のスポークを一切無視するコト。
フリー側だけ、テンションバランス・なじみを先に出してしまう。
完成すると、写真のようにものすごくセンターが偏った状態になるはずだ。
(撮影協力 Coda Sport の初期ホイール)
この作業の最中、反フリー側はけして締めない。
締まっているスポークがあればワザと緩めてから始めよう。
迂闊に反フリー側にテンションがかかってると、フリー側のテンションまで変化するからだ。
(撮影協力 Coda Sport の初期ホイール)
さて――
次の段階に移る前に――ホイール構造の基礎知識
(これを理解してないと話にならん……)
ホイールが加重に耐えるのは――
リム真円が歪みそうになるのを、複数スポークが引っ張り支えることによって変形を防ぎ支えてる。
私のように体重が重い場合、スポークテンション高めにした方がいいのは、このような理由からだ。
より大きい負荷に耐えるには、スポークテンションも強くないとイケナイ。
後輪の場合、リムそのものを強く引っ張っているのは実はフリー側のみ。
反フリー側スポークは、フリー側に偏ったテンションを微調整して、センターに引っ張り戻すのが主目的。
(とはいえ、物理的負荷がかかった場合、反フリー側も負荷がかかるはずだが……小難しい理屈は横に置いとこう)
つまり――
・固い後輪を組むなら、フリー側スポークテンションをかなり強くしておく。
・柔らかい後輪を組むなら、フリー側スポークテンションをやや強めにする。(弱いとダメ)
すべての基準はフリー側で決まる。
反フリー側のテンションはフリー側スポークを基準にして決まるので、主導権・優先順位はフリー側が握っているのだ。
フリー側だけで体重を支えるので、当然しっかり組まなくてはならない。
(前輪より後輪の方が加重比率が大きい)
ちなみに――私は当初スポークテンションを「25」で組んだ。
15~26が限度範囲なのでかなり高めに思うかも知れないが、
フレ取り・試走・馴染みだしを経ると、このテンションは下がって、「22~25」とやや低下した。
なので、フリー側テンションは通常より高めで組み始めるのがポイント。
さらに、コレは絶対理解しておかなくてはならない要注意事項なのだが――
後輪は、
・左右のスポーク長が違う
・左右のスポークテンションも違う
そう……左右でスポークテンションまで違うのだ。
ちなみに最終形まで組み上がり、フレ取り・試走・馴染みだしが終わった時点で、
反フリー側のテンションは、15~21の範囲だった。(箇所によってテンションが違う)
さらに小難しいことに、
片側のテンションを統一しても、必ずしもリムが真っ直ぐにならない。
実は……反フリー側を締めこむと、フリー側のテンションが上下する。
なぜなら、反フリー側を締めこむとリムが引っ張られ、テンションがそのままでもリムそのものが遠ざかってしまうからだ。
この遠ざかる時に、クロス部分の交わる角度・圧力まで変化する。
結果、クロスの上と下のスポークテンションまで、バラつきが発生する。
かなりややこしい――そう思う方も多いだろう……。
しかし、対処法はちゃんとある――
どうするのか?
結論――気にするな!!!(爆)
(う~ん、コレってもう最終奥義やね。(笑))
フリー側のテンションを張った段階で、ほぼ最終形態のテンションなのだ。
それ以降、テンションがバラついても、よほどのことがない限り無視する。
だって、どうせ反フリー側いじったら変化するんだから、気にするだけ無駄!
随時変化するテンションをマメに調整するなど不可能に近い。
むしろ、調整のたびにフレが悪化する恐れすらある。
それをフレ取りすると、またテンションバランスが崩れ――etc
フリー側を迂闊にいじりだすと、テンション調整エンドレス地獄に陥る。
無理にバランスを保とうとすると自爆コースなので、細かいことは気にしない。
後輪の手組は、まずこの辺りの重要度を十分理解しておいて欲しい。
モチロン左右同時に作業を進める人もいるが、それは相応の腕前があるか、理屈無視して作業を進めているかどちらかだろう。
どんな手順を踏もうが使える形にすることは可能だ。
(やり方によって苦労するかもしれないが、試行錯誤もいい経験だから悪い選択ではない)
私の手順は、折角テンションメーターあるんだし、
「なるたけ丈夫で安定したホイールに仕上げたい」
という視点から、テンションバランスにこだわっているだけのことだ。
このやり方が唯一の手順ではない――ということは、ご承知おき願いたい。
さて、次から反フリー側の調整だ。
実はココからが後輪の真髄……。
次回に続く――
(注)
内容が複雑なので、毎日更新厳しいかも……。(写真で説明するの大変なモンで)
じっくり造ってますので、まあ暖かい目で気長に見てやってください。