懐かしの肝試し

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お盆と言えばお墓まいり。
この時期になると思い出すことがあります。
それは、肝試し。

あれは中学時代の話。

実家の近くに、親戚のお寺がある。
町では一番大きなお寺で、墓地も広く、
その一角がぐるっと林で囲まれていた。
だから夜になると真っ暗になって、気味が悪い。
絶好の肝試しスポットになっていた。

ある時、友達男女数名と肝試しをしようということになり、
夜に集合することになった。

僕は男友達と待ち合わせ場所に向かって歩いていた。

近道をするため、お寺の敷地の裏から入って行き、
これから肝試し会場になる墓地を歩いていた。

その時、僕はひらめいてしまった。

「お墓の影に隠れていて、みんなを驚かしたら盛り上がるじゃないか」と。

友達にそのアイデアを伝えると大いに盛りあがった。

僕らは、隠れる場所を決めて、何度か脅かす練習をした。
笑いが止まらなかった。

もちろん、驚かす役割は、発想者の僕だ。
彼もやりたそうだったけれど、ここはゆずれない。
彼には、後から来る友達に、
僕が家の用事で来れなくなったことを伝えてもらって、
驚かすポイントに誘導してもらう役目を頼んだ。

僕は、お墓の影に隠れた。

みんなどんな顔して驚くだろうかと想像しただけで、
ニヤニヤ、ワクワクが止まらない。

友達が墓地に入ってくるのを、
いまかいまかと待っていた。



「りーんりーん、ギリギリギリギ〜」
虫の音が聴こえる。
「グワグワグワァ〜」
カエルも鳴いている。


数分経った頃だっただろうか。数十分だっただろうか。

なかなかこないなと思い始めたその時、
ふと、風を感じた。
何とも言えない、肌にまとわりつくような感触。
背筋に冷たいものが走る。


「・・・あれ、ひとりだ」



そう、僕は気がついてしまった。

真っ暗な墓地の墓石の陰にひとりでいることに。


さっきまでのワクワクな気持ちが吹っ飛んだ。

カサカサッと草が揺れてビクッとする。

気持ちを変えるために、小さな声で、カエルの歌をうたうも、
輪唱が入ってきたら、と思ってとめる。

何か気配がある。
前の方の暗闇を凝視してみる。
暗くて何も見えない。

すると、

「ピ〜ヒョロ〜ピ〜」

すぐ後ろの方から笛の音が聞こえてきた。
体が硬直した。


耳を澄ましてみる。
虫の音とカエルの鳴き声だけが響いている。

とそのとき、

「だめだよ」

耳元で女のささやくような低い声がした。

それから僕は走った。
「ごめんなさい」と何度もいいながら、
友達のところへと走って行った。

みんなは待ち合わせ場所で、まだ楽しそうに話をしていた。

僕は今まさに体験したことを
2倍くらいに盛って話をした。

みんなはそれから、しゃべらなくなった。
やっぱり肝試しはよくない、ということで、帰ることになった。

ちがう意味だけど、
みんなを怖がらせることに成功した肝試しでした。








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