読解力をつけるための作文指導法…まとめ | 総合国語塾の徒然話

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※「読解力をつけるための作文指導法」のまとめ…約3000字

この仕事をしていると、「読解力をつけてほしい」という要望を多く聞きます。そこで、「『つけてほしい読解力」とはどんな力ですか?」と質問すると、「書かれていることを正確に読み取る力」、「文章の大事な部分を掴み取る力」といった答えが返ってきます。

残念ながらそれは認識不足。私が子どもの読解力を養う際には、書く指導にも重点をおきます。その一例で、読解力をつけるための作文指導法について書きましょう。

読解力とは、そのまま「読み解く力」と解釈できます。しかし問題を解く際には、読み解いた内容を、「誰にでも理解できるように言いかえ、説明する力」も必要です。いわゆる書く力、記述力ですね。当たり前の話ですが、いくら内容を理解したと言い張っても書かなければ正解にはなりません。正しくインプットする能力と、正しくアウトプットする能力の両方を育てることが本当の読解力につながります

ですから、読解力をつけたいという要望に応えるために、私は子どもたちに小作文を書かせて「説明する力」、「要約する力」、「発想する力」を鍛えています。そうやって総合的なアウトプット能力を育てるのです。

何だか難しい話になってしましました。では、実践例を紹介しましょう。とある教材にこんな問題がありました。

例題
「歩みよる」(意見のちがいなどをゆずり合って調整する)という言葉を使って自由に短文を作りましょう。
※以下の言葉を使っても良い→(話し合い・ようやく)


こうした短文指導を行うとき、最初は、言葉をつなぎ合わせて作成できれば正解とします。例えば、「話し合いのすえ、ようやく歩みよる。」といった単純なものでも最初だけは○を与えます。

しかし、ここで終わってはいけません。「楽(ラク)」は何のためにもならないので、慣れてきたら少しずつ頭への負荷を重くしていきます。

・自分で考えた言葉を付け加えさせる。
「次は、自分で考えた言葉を三つプラスして作りなさい。」と条件を加えます。するとこんな短文を作りました。

「何度も話し合いを重ね、お互いが歩みよった結果、問題は解決した。」

どんな言葉をプラスするかは状況に応じて変えていきます。「今回は名詞をプラス」「次回は形容詞をプラス」といった具合に変化していくと文のバリエーションも増えていきます。こうすると手抜きもできませんし、長めの文になるので、必然的に文法力も鍛えられます。

さて、上の文では最初よりだいぶ分かりやすくなりましたが、まだまだ輪郭がはっきりしませんね。ということは、その子の思考もまだまだはっきりとしていないということです。文とは、書き手の頭の中身がそのまま晒されるものです。「何度も話し合いを重ね、お互いが歩みよった結果、問題は解決した。」という文は、まだ細部のイメージがはっきりしていないので、そこを明らかにして説明させてみましょう。

・具体的な言葉に置きかえさせる
「言葉を三つ加えたおかげで、読んでいる人に伝わりやすくなったね。」と評価したあと、

①「何」について話し合ったのか。
②「お互い」とは誰と誰か。
③どんな「問題」が解決したのか。

を明らかにしてごらん、と声掛けします。つまり、できるだけ具体的な言葉に置きかえさせます。実際に実在する人物や身のまわりのものなどを入れるといいんだよ。一言付け加えると子どもは取り組みやすいでしょう。しばらくしてこんな短文を作りました。

「委員長のノリハル君を中心に、『学習発表会の出し物を何にするか』についてクラスで何度も話し合いを重ねた結果、意見が分かれていた男子と女子も歩みよって協力し合うようになった。」

委員長のノリハル君、学習発表会、クラス、といった具体的な名詞を差し込むことで、イメージが広がり、読みやすい短文になりましたね。ちなみにこの文章は、小学4年のAさんが五分くらい一生懸命考えて作ってくれました。このレベルの文を作り上げるには少々時間がかかります。それは、「漠然としていて、相手に伝わりにくい文章のもと」を、「明確で、相手に伝わりやすい文章」に変換する作業を脳内で行っているからです。脳への負荷は相当なものです。ですが、この練習を繰り返すとだんだんスピードはあがり、説明上手になります。(~について60字以内で説明しなさい、といった記述問題の正答率も上がるのは言うまでもありません)。

最後に、もう一つ条件を与えてみましょう。

・接続助詞を加えた文を作らせる。
接続助詞とは、前の文節と後の文節をくっつけて、前後の因果関係を示してくれる助詞です(専門的な説明は省略)。たとえば「ば」「と」「ても(でも)」「けれど(けれども)」「が」「のに」「ので」「から」「し」「て(で)」「ながら」「たり(だり)」「ものの」「ところで」

これらを使うと、説明的な短文を作れます。次の文章を読んでください。

「体調は悪かったけれど、欠席すると他のメンバーに迷惑がかかるので、がんばってミーティングに参加した。」

接続助詞「けれど」と「ので」が前後の文章をつなげて、明確でわかりやすい短文になっています。接続助詞を使うと、因果関係を説明した文章ができあがるので、物語文の状況描写や心情を問う設問の訓練にもなります。


先ほどの「委員長のノリハル君を中心に、『学習発表会の出し物を何にするか』についてクラスで何度も話し合いを重ねた結果、意見が分かれていた男子と女子も歩みよって協力し合うようになった。」は、既に完成された短文ですが、これに接続助詞を付け加えると、

例①(確定の順接「ので」、と並立の「し」を使った場合)
委員長のノリハル君を中心に、「学習発表会の出し物を何にするか」についてクラスで何度も話し合いを重ねた結果、意見が分かれていた男子と女子も歩みよって協力し合うようになったので、本番も大成功だった、男女間の仲も一層良くなった。

例②(確定の逆接「ものの」を使った場合)
委員長のノリハル君を中心に、「学習発表会の出し物を何にするか」についてクラスで何度も話し合いを重ねた結果、意見が分かれていた男子と女子も歩みよって協力し合うようになったものの、本番に間に合うかどうかはまだわからなかった。

因果関係が示された、さらに長い文章になりましたね。小さな作文と言ってもいいでしょう。

接続助詞はざっくり下の五つに分けてみましょう。

①仮定の順接…「ば」「ど」
②仮定の逆接…「と」「ても(でも)」「ところで」
③確定の順接…「ば」「と」「ので」「から」「て(で)」
④確定の逆接…「ても(でも)」「けれど(けれども)」「が「のに」「ながら」「ものの」
⑤並立・対比…「ば」(~「も」をともなう)「けれど」「が」「し」「て」「たり」

パターンを使い分けて、「②で作ろう」「その次は④で作ってみよう」「今度は③と⑤を一文に入れよう」と揺さぶりながら指導すると、自然と筋の通った文章が書けるようになります。

・終わりに
読解力というと、「読む力」(インプット)にとらわれすぎて「書く力」(アウトプット)を軽視する保護者が多いようです。しかし、読解問題というのは文章内容を自分の言葉で言い換えて説明する作業に近いので、たとえ100%の純度で読解したとしても、書く力が乏しければ理解したことをうまくアウトプットできず、正解へたどりつく可能性も落ちます。

読む力と書く力は表裏一体です。実際作文が上手な子は読解力も高い傾向にあります。子どものうちはどんどん書いて脳に刺激を与えましょう。それが結果として読解力の向上につながりますよ。

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