中学受験を理由に、子どもの睡眠時間を削ったり、遊ぶ時間を奪ってはいけません。(改) | 総合国語塾の徒然話

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※前に書いた内容を推敲したものです。

中学受験を控えている子を持つ保護者の中には、「こうした方がいいですよ。」という情報収集に熱心な一方、「これはやってはいけないですよ。」という情報には疎い方も多いようです。

そこで、今回は「受験のために・・・」を理由に、小学生に対してやってはいけないことを書き記していきます。

・受験を理由に、小学生にしてはならないこと
①睡眠時間を削る。

これが一番やってはいけないこと。当たり前過ぎて書くことでもないと思っていたのですが念のため。

子どもは、寝て成長することが最も重要な仕事です。これ以上の優先順位はありません。どんなにあせっても、睡眠時間を削ってまで勉強させてはいけません。睡眠時間を削ると、ストレスと疲労から情緒不安定、集中力低下、身長が伸びない、発熱、腹痛、暴力的に(キレやすく)なるなどの精神・肉体面での問題がでてきます。

そもそも、「成績をあげるために勉強時間を増やして、そのかわりに睡眠時間を削ろう」という発想が大きな誤りで、子どもは寝ている間に起きている時間に入手した情報の取捨選択と整理整頓を行い、記憶の定着を図っています。記憶の定着が成績に大きく影響することは誰にでも理解できるはず。それには充分な睡眠が必要です。

さらに、しっかりと寝ることで元気度もあがります。よって学習への意欲と集中度も高まり、物事の吸収力もあがります。

要するに「成績をあげたいなら睡眠時間の確保は絶対条件」と言うことです。私が見たところ、睡眠時間を削ってまで勉強をして、成績があがった小学生はいません。あったとしても一時的なもの。長期的には例外なく落ちていきます。睡眠不足はデメリットだらけです。

一昔前までは、寝る間を惜しんで勉強するのが美徳だという風潮もあったかもしれません。しかし、「睡眠時間が少ない子どもは、成績が悪くなる」という最新の研究データもあることはご存知でしょうか?

受験だから、と寝る時間を削って毎日勉強している・・・なんて小学生の話を聞くと悲しくなります。子どもが深夜まで勉強する風景はおかしいとハッキリ申し上げておきます。

小学生は自分で生活のコントロールをするのが難しい時期。様々な事情はあると思われますが、家庭での就寝時間を定めて、「もう寝なさい」と声かけしてくださいね。

・受験を理由に、小学生にしてはならないこと
②遊びの時間を奪う。

これもやってはいけないことです。だらだら一人でゲームをするなどの遊びではなく、スポーツをする、楽器を演奏する、好きな漫画を読む、絵を描く、などの趣味に近い「遊び」のこと。特に、体を使う遊びは奪ってはいけません。

例えば、あなたの子どもが幼い頃から運動大好きで、近所の子とよく走り回っている、サッカーなど運動系の部活に所属しているなど、今でも体を動かして楽しんでいるのなら、その時間を無理に奪ってはいけません。

こう言うと反発する指導者や保護者もいらっしゃるかもしれません。「睡眠時間を削ってはいけないという話は理解できるが、これはいいじゃないか。遊んでいた時間をそのまま勉強に充てるのだから、学習時間は増えるでしょう?効率的だと思いますよ。」と。

確かに、そう感じるかもしれません。しかし、好きなことを奪われる悲しみやショックは、私たちが考える以上に大きなマイナスをもたらします。

小学生は、自分の状況を冷静に分析できる年齢ではありません。遊ぶ時間が勉強時間にすり替わった「ストレス」を理解できず、それが問題行動となって現れます。そもそも、子どもの脳の作りや成長段階を考慮せず、大人の理屈で「効率よく進む」と思う時点で間違っているのです。子どもは機械ではありません。

百歩譲って、2~3ヶ月程度なら我慢できるかもしれません。しかし、その間も表面に見えないだけで、遊ぶ時間を奪うことによって「ストレス」という澱が心の底にゆっくりと溜まっています。もちろんこれは勉強どころか健康にも有害です。遊びによって排出されることのなくなったその澱は、ある日突然溢れだします。

例えば、
・家族に乱暴な言動をとる。
・学校でけんか・いじめなど、人を傷つける行動をする。
・キレるようになる。
・学校の授業を聞かない。学校を抜け出す。
・嘘をつく。
など。

同じ事を長時間続けても、集中力は継続しません。体を動かすなど、勉強と逆の行動を取ってリフレッシュすることで、また集中力が回復します。それも「遊び」の役割です。つまり、成績を伸ばすためにも必要なのです。

遊びは子どもの成長に不可欠なのに、あせる保護者はそれが見えなくなる場合があります。

ところで、人間に必要な三大栄養素はご存知でしょうか?そう、「炭水化物」・「タンパク質」・「脂質」ですね。これに「ビタミン」や「ミネラル」を加えて五大栄養素と呼ばれます。「ビタミン」や「ミネラル」は身体機能を助けてくれる栄養素ですが、「炭水化物」・「タンパク質」・「脂質」はこれがないと身体機能そのものが成り立ちません。

無理なダイエットの失敗例として、「ビタミン」・「ミネラル」は摂取するものの「脂質」をカットした結果、肌は荒れる、体調を崩すなど、結局健康を損なう方がいます。「脂質」は体に絶対必要な栄養素なのに、まるで余分なもののように避けるからです。

もうおわかりでしょう。勉強は「ビタミン」や「ミネラル」のようなもの。遊びは「脂質」のようなもの。勉強は子どもの成長を助ける栄養素でありますが、遊びは子どもの成長に絶対必要な栄養素です。遊びを奪って勉強だけさせようというのは、無理なダイエットを強要するのと同じことです。

脂質と同じで「摂りすぎ」はよくないものの、遊びは子どもの権利です。子どもから遊ぶ時間をなくそうなんて思わないで下さいね。

世界のあらゆる発明、文化、文明だって、全て「遊び」の結果生じたものですから。

・受験を理由に、小学生にしてはならないこと
③愛情のない食事を続ける」

「お母さんの手作り料理が子どもにとって一番」は、よく聞く言葉です。なぜなら、作り手の温もりは子どもに伝播し、「温もりの大切さ」に気付く子に育つから。

対して、誰が作ったのかわからない無機質な食事が続くと、子どもはご飯を食べる楽しみや、作る嬉しさを覚えません。それに、外食や出来合いの弁当は味付けが濃く、画一的になりがち。

もちろん、夫婦共働き、休みが不規則など、理想通りにはいかない家庭も多いでしょう。とくに沖縄の場合は顕著です。その場合は父親や、親戚、子どもの面識のある親しい人でも大丈夫。そういった大人が作ってくれたなら、子どもは安心と愛情を感じます(というわけで、このブログを読んでいるお父さんは料理を覚えて協力しましょう)。

そして、食事はできるかぎり親子で会話をしながら行いましょう。よく言われることですが、子どもだけで食事を取る、いわゆる「孤食(こしょく)」はコミュニケーション能力の低下を招きます。

「まとめ」
志望中学の合格は人生のゴールではありません。勉強は確かに大事ですが、子どもはしっかりと『寝る』『遊ぶ』『食べる』、というそれよりももっと重要な仕事があります。勉強がこれらより先に来てはいけません。誤った方向にがんばった結果、成績不振、体調不良、無気力、燃え尽き症候群に陥る子が一人でも減ることを願っています。

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