■ 制服への着替え時間

おはようございます、東京都府中市の社会保険労務士 飯田弘和です。

 

 

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【チェックポイント その420

制服への着替え時間

 

制服などへの着替えの時間が労働時間になるのかどうか、時々問題となる論点です。

 

労働時間とは、事業主の指揮監督下にある時間とされています。

そのため、制服への着替えが事業主から義務付けられ、着替える場所も指定されているような場合、着替えの時間は事業主の指揮監督下にあり、労働時間に該当すると考えられます。

そうであれば、制服の着用は義務付けられていても、自宅から着てくることが許されているような場合は、着替える場所を指定しているとはいえず、着替えの時間は労働時間に該当しないことになります。

そのような場合には、たとえ事業所内の更衣室などで着替えた場合であっても、その着替えの時間は労働時間には該当せず、あくまで、更衣室は労働者への便宜上、使用することができるに過ぎないということになります。

 

そこで問題となるのが、このような場合には、制服の支給が、労働者への特別利益として所得税等の課税の対象になる可能性があるということです。

 

以下は、国税庁の質疑応答事例に掲載されているものの要旨となります。

 

制服・事務服・作業服等の支給が非課税とされるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

1.           専ら勤務する場所において通常の職務を行う上で着用するもので、私用には着用しない又は着用できないものであること。

2.           制服・事務服・作業服等の支給または貸与が、その職場に属する者の全員または一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるものであること。

3.           それを着用する者が、それにより一見して特定の職員または特定雇用主の従業員であることが判別できること。

 

上記の考え方からすると、自宅から着用して出勤することが許されている制服では、私用に着用できるとして、その制服の支給または貸与に対し、所得税がかかってくる可能性があります。

また、背広・スーツなどの支給は、私用が可能ですから、給与等として所得税がかかります。

 

以上、今回は何だかスッキリしない、モヤっとしたお話となりました。

 

 

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■ 職種限定社員への同意のない配置転換

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【チェックポイント その419

職種限定社員への同意のない配置転換

 

今回お話しするのは、職種限定社員の他職への配転についてです。

最近出た最高裁の判決において、職種が限定されている雇用契約の場合、労働者の同意なしに他の職種への配置転換をすることはできないとの判決が出されました。

(職種限定のない労働者であれば、配置転換には、会社の裁量が広く認められます)

今までは、たとえ職種限定の雇用契約であっても、業務上の必要性や解雇を回避する目的等であれば、同意のない配置転換も認められると考えられていました。

しかし、今回の判決によって、「職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、その個別の同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しない」と判示しました。

要は、「職種限定の労働者に対し、会社には他職への配置転換を命ずる権限はない」ということです。

 

では、その労働者の従事する業務がなくなってしまう場合や業務量が極端に減少している場合は、どうすればよいのでしょう?

この場合、労働者から配置転換について同意を得られないのであれば、解雇しか方法がなさそうです。

今までは、解雇を回避するために、職種限定の労働者に対して配置転換を行っていた会社も少なくないと思いますが、これも労働者の同意がなければできないことがはっきりしました。

また、職種限定の雇用契約かどうかは、原則、雇用契約書での記載内容等によりますが、採用から現在までの経緯等を踏まえて、たとえ契約書での明示がなくても、黙示の職種限定合意があったものとされてしまう場合があります。

(まさに、この最高裁判決の原告の場合が、それに当たります)

そのため、長期に同じ職種に携わり、とりたてて配置転換等が想定されていないような場合には、黙示の職種限定合意があったと判断されてしまう可能性がありますので、このような労働者への配置転換には注意が必要です。

また、このような最高裁判決が出たからと言って、解雇が容易になるわけではありません。

裁判所は、ダブルスタンダード・トリプルスタンダードによって、労働者保護の判決を出す傾向にあります。

したがって、たとえ職種限定の労働者への配転同意が得られなかったとして解雇した場合でも、なんやかんやの理屈をつけて、解雇無効の判決を出すことが想定されます。

したがって、相も変わらず、「解雇は慎重に行ってください」ということになります。

 

 

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■ 退職日の勝手な変更

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【チェックポイント その418

会社による退職日の勝手な変更

 

今回ご紹介するお話は、退職にかかわるお話です。

ある労働者が、2023年12月31日での退職を申し出ました。

会社は退職の申し出を了承した旨のメールを送ってきました。

ということは、会社と労働者との間で、2023年12月31日での退職の合意が成立したことになります。

 

ところが、会社は勝手に、2023年12月15日での退職とし、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きを行いました。

そして、労働者に対して、12月15日付で退職になった旨のメールを送ってきました。

なぜ、会社がこのような対応を取ったのかは不明です。

 

いくつか考えられる理由をあげます。

1.月末退職だと、社会保険料が1か月分多く発生するから。

2.少しでも退職日を早めることで、有給休暇消化を全部は消化しきれずに辞めることになり、給与の支払い額が減るから。

3.給与の締め日が15日だったため、給与計算が楽だから。

4.担当者が退職日を勘違いしていたから。

5.労働者への嫌がらせ。

 

どの理由だったとしても、会社の対応はお粗末で残念な対応としか言いようがありません。

 

ちなみに、この会社には、この後、労基署の調査が入りました。

労働者が、解雇されたと労基署に訴えたのです。

 

2023年12月31日での退職で合意しているものを、会社が勝手に日付を早めて、12月15日での退職としたのであれば、それは解雇と解されます。

解雇なので、解雇予告手当30日分の支払いが必要になります。

会社には監督署から是正勧告がなされ、会社は30日分の解雇予告手当を労働者に支払うことになりました。

会社のお粗末な対応によって、会社と労働者とのトラブルに発展し、本来は支払わなくても済んでいた解雇予告手当を支払うことになりました。

 

これがもし、担当者の勘違い・ミスであれば、一般的には監督署の是正勧告は出されません。

その代わりに、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きの修正が必要になります。

それはそれで、なかなか面倒です。

 

退職時には、会社と労働者との間でトラブルが発生することが多々あります。

そして、既に退職した労働者には、会社に媚びを売る必要もなく、会社の言いなりになることもありません。

ですから、退職手続きは、きちんと行うようにしてください。

 

 

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