【コラム】世界同時デフレの引き金~原油価格40ドル割れ | 相場残日録(元相場師天の日記)

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昨年6月に1バレル100ドルを超えていたWTI原油先物価格が、今年1月に半値の50ドルを割れ「逆オイルショック」として話題になりました。


その時、原油価格の下落は、はたして米国の株価にプラスなのか、マイナスなのか という議論が戦わされたことはご記憶に新しいのでは?

当時BLOOMBERG等の情報メディアも、原油価格下落で米国株価指数が下落したと解説した数日後に、米国経済にプラスの原油価格の下落が米国株価指数を押し上げた との解説を載せたりしていました。


正確に表現すれば、ミクロの視点では、原油価格の下落が米国経済にプラスであることは間違いなく、その意味では米国株価指数の上昇要因。


しかしマクロの視点では、原油価格の下落は世界経済の減速の表れであり、世界経済の減速は米国経済に悪影響を与え、ひいては米国株価指数の下落要因ということでしょう。


さて、50ドルを割れ、1月と3月に44ドル台まで下げ、ダブルボトムを作りその後5月には60ドルを超えるところまで回復していた原油価格が、ついに1月と3月の安値を下抜けてきました。


今回は、中国経済の減速懸念が注目されているので、原油価格の下落を米国株式指数の下落要因と捉える向きが多いように思います。


WTI原油先物価格は、過去の歴史を振り返れば、1バレル40ドルというレベルが非常に重要な意味をもつことが解ります。


1983年に創設されたWTI原油先物価格はその後20年余り 10ドル~40ドルでのレンジ内での推移でした。


しかし、逆に2004年に初めてレジスタンスラインであった40ドルを超えると、以後40ドルが強いサポートラインとして機能しています。

2008年7月に147ドルまで駆け上がり、リーマンショックで暴落した時も、一時的に40ドルを下回ることはあっても、それが定着することはありませんでした。


2004年といえば、日銀の超低金利政策により金利ゼロが定着、投機筋による「円キャリートレード」という言葉が定着した時代です。


このころグリーンスパンFRB議長は実体経済からかけ離れて肥大し続ける金融経済を過剰流動性バブルとして盛んに警告を発していました。


原油価格40ドルというレベルを実体経済と金融経済というキーワードで考えると、2000年をピークとするITバブルは、100年に一度の生産性革命と呼ばれたように、実体経済における画期的な変革であったことは間違いないでしょう。


但し金融経済の象徴であった株価はバブルとなり破裂しました・・・・・・


次のサブプライムバブルは不動産バブルであったことから、これは実体経済というよりは資産価格上昇という金融経済での事象です。

それがリーマンショックで破裂しました。


しかし、原油価格はかろうじて40ドル以上を維持しました。、その後、FRBによる量的緩和で、資産価格上昇が人為的に作り出され、再び金融経済の時代へ。


見方を帰れば、原油価格40ドルより下は実体経済の時代、40ドルより上は金融経済の時代です。


逆説的ですが、今後原油価格40ドル以下が定着するとすれば、それは実体経済主体の時代への逆戻り、それは世界同時デフレによる資産価格の下落を意味するのではないでしょうか?


原油価格40ドル以下の時代が到来するとすれば、世界同時デフレ→株は下落=今は株の売り場。


40ドルが維持されると考えれば、資産価格バブルは続く=まだまだ株は買いということでしょうか。


バブル崩壊は歴史の必然とすれば、私には前者の確率が高いような気がします。


以上