ともかくシナリオがずば抜けて良い。
原作者は並の天才じゃない。凄すぎる。

頭からラストまで2時間半あるのに
全く時間を感じさせない異色の展開。

ヘッド、ハート、ベースという3種類の香料の話をしているが
そのまま映画にも当て嵌まる、いや当て嵌めているのだろう。

ヘッドにおいて、強烈な悪臭漂う世界を表現し
そのグロテスクさでインパクトを与え、さらにいきなり少女を殺す。

・・・・・正直なところ、見る前まで少女殺害シーンはラストに来ると思っていた。
15分程度でいきなり殺した事に驚いた。これがシリアルキラーによるストーリーならともかく
基本は調香師の話だからだ。
いっぱつめで度肝を抜かれた。ここがヘッドだろう。

数ヶ月は記憶に残るベースに
調香の知識などがあげられるのだろう。
その正確さ、繊細さは素人ではない。
感情が揺れ動く事で、匂いが濁る事を知っているとは
相当な鼻の良さだ。
そして彼は殺す女性を美しいだけでなく
香りが良い女を選んでいる。
果物や花を扱う仕事をしている女だ。

そして彼が異常に強い鼻を持っている理由も明らかになる。体臭が無いのだ。
自分の体臭は香りを探す時には邪魔にしかならない。
彼が天才的な鼻を持つ最大の理由かもしれない。


さらにハートの部分として
やはりラストシーンだろう。


貴族の服で現れ、全員を平伏させ
殺害した娘の父親にすら『息子よ』と言わせたのだ。
その天国の香りは想像を絶するだろう。

そして彼はその香水で世界すら握らずに
生まれ故郷にて人々に天使として喰われたのだ。


こんなシナリオをよく通したと思うし、よく映像化したなと思う。
こんな素晴らしい映画を、また観たいと思うな私は。