思い出とこれから | The world of imagination

思い出とこれから

人の営みがどうあろうと、太陽の運行は変わることなく、植物は淡々と、冬支度をする。
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今回のプロジェクトで直面している解けない状況を見たとき、もしかすると私は、サラリーマンとしての能力のピークが、いつのまにか過ぎてしまっているのではないかと苦闘しているのに、上位の人たちはこれまでの私の実績から、期待をかけてくれる。その、矛盾に連なる焦燥感で、この4か月、ハートが一杯になってしまったわたしは、


それ・・・透き通る晩秋の空と、木々の紅葉に、はっと気づき、ひとりの人間に戻る。


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ただ、そうはいっても私はまだ強いほうなのだろうか。これまで、私は胃潰瘍になったことはない。周りでは、厳しい業務の果てに急激に白髪が増えた30台とかもいるが、そういうこともない。新任の業務が辛くて、「夜も眠れないんです」と相談を受けた隣の部の若手のようなこともない。


別に、会社に行きたくない、などとは、考えに浮かんだこともない。むしろ、現実に身をさらし、走る続けている時、こころは安定する。


もう少しだ。ひとつひとつのハードルを区切りにして走ってみよう。


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・・・それにしても、誰かと、たわいのないおしゃべりして、笑いたいな。昨夜、24時に発泡酒飲みながら、ふと気づいた、この一週間、僕はなんとほぼ一分も、「雑談」をしていない、と。そして、笑ってない、と。


笑わないと、ふけるんだよね!

いや勿論、よきふけ方もよいことだ。そうじゃなくて、活き活きとしなくなるのは、僕らしくないって、ことだ。


おしゃべりしたいなぁ。


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わたしは20台の頃から、あしなが育英会に毎月引き落とししているので、定期的に状況がわかる。今、とても厳しいらしい。↓

http://www.ashinaga.org/index.php


・・・私が子供の頃、色んな支払いは、家に集金に来る時代だった。その中には、牛乳のおばあちゃんがいて、ヤクルトをくれたので、支払いは母がするのに、おばあちゃんがくると、私も玄関まで出たものだった。


そして、定期の支払い集金訪問の中には、生命保険会社のおじさんも、いた。


大人になって、ふとその頃のことが、不思議に感じられたのだ。我が家は中産階級よりは下層に位置していた。

なのにどうしてあれだけ、危機に対応できるようにしていたのか。


父も母も、旧家(どちらも家系図は12世紀までさかのぼれる)の出来損ない(<--本人達がそういっている)で、「家」がきらいで、だから貧乏でも、早く独立したかったのだという。だが、それだけではない。


父も、母も、10歳になる前に、実母をなくしている(と、いうことは私は成人してから知った)。そしてその後すぐに親は再婚し次の子供が出来た。上の子はもう既に大人に近づいており母の死にはきちんと泣きそして対処できていた。下の子は次の母の子なので喪失の経験はない。私の父と母だけが、幼少の頃に衝撃を受け、まああまりパッとしない性格も有って、家の中で、孤立していたのだ。


だから、二人は、当時のこととはいえ見合いではあるけれども、こころはすぐ、ひとつになれたのだった。


そして、喪失は身近なものであり、生きることは荒波を乗り越えることであって何もしなければ災禍が降りそそぐものであり、人は、自分に何かあったときにもちゃんと愛する人を守れるようにしていくのが愛なのだからと、


貧乏なのに、若いときから、生命保険を、しっかりと、かけていたのだった。


そして、結婚13年目に、父は事故で死んだ。


けれど、その愛が、遺されたわたしたちに、お金の心配はせずに生活できるような、保険の支給を、与えてくれたのだ。


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しかしこのような、リスク対処をして生きていく人は少ないから、社会で応援しなければいけない。


仕事ばかりではない何かを、始めたい。出来るところから。それは、結果的に、真空のような週末を暖めてくれて自分自身のためにも、きっと成ることなのだから。


毎月の寄付金以外に、まず何が出来るのか、考えて見たい。


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久しぶりに、リルケの、全集を開く。。


■エリカ・ミッテラーから、リルケへの詩の手紙-1


 (・・・)


私たちに悦びのための尺度があるのでしょうか

--悦びはすべて充足 でもこれは

感動を内に秘めた穀物の穂のようにうねり

風になびきます。いやかたまる風の動きに


惑乱し きらめきつつ 喜びは感謝にみちて

風に身をささげるのです 私は感謝しています

自分が生きていると 感じるこの心の

すべての生気を あなたに感謝します


 (・・・)


■リルケによる、エリカへの返信詩-3


「私の波の防波堤」というあなたは・・・・

                  波頭は海が荒れて

防波堤に打ち寄せるところに泡だつもの

そうして波頭が高まれば高まるほど

波頭は白く輝き いよいよみごとに泡立つ


このようにわたしの昂ぶりを求めるのだろうか それとも

優しい海が岸辺に寄せては返す あのさざ波のことを

あなたは思いつつ まだ見ぬ人よ あなたは私に

鎮静の回帰となって あなたを贈ってくれるのだろうか(*1)


 (・・・)



*1:「リルケ全集 第五巻 詩集Ⅴ」、エリカ・ミッテラーとの往復書簡詩より。リルケ死の前年で既に白血病に掛かっていた。エリカはウィーンの18歳の読者。高校を卒業して、社会福祉関係の仕事をちょうど始めた頃だったらしい。原版はシュトゥットガルト版。河出書房新社。