やり残した夏 | 牧童の溜息

やり残した夏

「やり残しあるや否やの老いの夏」牧童

子供の頃や青春時代、夏休みが楽しかった。
気分も体も高揚し、あれもやりたい、これもやりたいと夢と野望と欲望が全身を駆けめっぐっていた。

もうすぐ夏が終わる。

もっと日焼けして真っ黒になりたい、もっと泳ぎたい、もっと遊びたい……

立秋が過ぎれば、子供心にも夏の終わりが段々見えてくる。
夏休みの計画表をぼんやり眺める。やり残したことが山積みだし、そういえば宿題、ひとつもやっていない。まあ、いいか。学校が始まるのはまだまだ先だし、夏ちゃんちに遊びに行って、好きだよって告白してこよう。

さてさて、五十路の夏がまもなく終わる。どこへも行かず、何もしなかった。
やり残したことがいっぱいあるのに、思い出せない。やり残せたことがないようだ。

◆季節が変われば

「陽が沈み虫にバトンを渡す蝉」牧童

日の出が遅くなり、日の入りが早くなる。
少しずつ少しずつ、季節が着実に変っていく。
夜になれば蝉の声が止み、秋の虫たちが鳴きはじめる。

夏は短い。
そんな気がする。

季節が変れば、僕の周りの人も変っていくのだろう。