昨年に引き続き、香港のカナン国際バレエコンクールの審査員を務めることになりました。
昨年、私が選ばせてもらった受賞者の方々の写真が掲載されています。
昨日もお話した、振付や衣裳、メイクの改善…
昔のインドネシアだったら考えられないくらい、改善されています。
私が一番感心したのは、やはりバレエシューズで丁寧に踊っていたこと。高いドゥミポアントで、体幹も強く、コーディネーションも良く、下肢の開きも十分あり、トウシューズは履いても支障がなさそうなのに、あえてバレエシューズでエントリーしてきました。
このインドネシアのバレエ学校からは、昨年のYAGP中国予選でも一位受賞者を輩出するなど、いまアジアの中で注目度が高まっております。
校長のマルピィ先生は、かなり若手の先生方に指導を任せて、あとは的確なアドバイスをしていました。
私より年配の先生なのに、感性が若い!(笑)
「あなたから学びたいから、沢山教えて!」
と言われました。
私が20年後の68歳のときに、20代の先生方に
「あなたから学びたい!」
と言って、今まで信じてきた自分のポリシーを捨てること…
これが私の目標です。
細胞だって変わるわけだし、皮膚も髪の毛もサイクルがある。人間関係も、情勢も、環境も…全てに永遠はなく、いつか必ず終わりが来る。最近ヒシヒシと感じます。
信じていた人や価値観に裏切られたり、または疑っていた人や価値観が意外と自分が思っていたほど悪くなかったり…全ては誰かの噂話やプロパガンダに騙されるのではなく、自分の目で、肌で感じたことが真実。
以前にも言いましたが
「このお店、日本でいま、一番流行っているんだよ!みんなが好きだから」
「あの人って、みんなから嫌われてるんだよ」
その「みんな」って誰ですか?
そのような話を持ってくるひとも、その話を鵜呑みにして真実を見ないひとも、私は同類だと思っています。
人の歴史を紐解けば、悲しい戦いが繰り返されるのは、もっぱらそこです。断ち切るためにはどうしたら良いか…
自分の目で確かめて納得いったものを信じれば良いのです。
「売り上げ第1位」
「オリンピック金メダル」
「日本人初入賞」
このようなセンセーショナルな見出しにフラフラと騙されるのではなく、その人やその場所をしっかりと自分の目で見てから
「あ、売り上げ第1位なんだ、納得」
と思えばいいんです。
幸運やチャンスは、組織によって、意図的にプロパガンダによって隠されている場合がありますから。だって、みんながみんな幸せになったら困る人、いるじゃないですか?そこに騙されてはいけない、ということです。
私が韓国や香港に行ったとき、当時の日本の先生たちは鼻から馬鹿にしました。時代はバブル真っ只中。もちろんローザンヌ国際バレエコンクールに韓国人なんてエントリーしてない頃。日本のバレエが一番華やかな時に、私は日本を離れたので
「韓国、香港なんてバレエ後進国」
「日本にいたほうがお金になるのに」
「日本は何でも手に入る」
「国内のコンクールは世界一レベル高いのに、あなたはわざわざ日本を離れちゃって」
といわれ…私は自分の目で確かめて日本を離れましたから後悔はなかったです。あの当時、日本ではレパートリーにも入っていなかったバランシン作品を沢山踊れ、ABTのダンサーたちと毎日一緒にレッスンして、毎月世界中からゲスト教師陣が来てコーチングしてもらい…しかし日本で報道されることもなかったですから、注目されることもない。
そして、ついにバブル崩壊…韓国、香港はお給料をきちんと支払ってくれるバレエ団が私が在籍していた頃からずっと存在していて、バレエ教育の環境も整っていくうちに…日本が取り残されました。取り残されることなく成長しているのは、バブルを知らない(もしくはバブル期に日本にいないで質素な生活をしていた人たち)人たち。
兎と亀の兎のよう…兎になってはいけないんです!
自分の感性を大切に。今日もそれを生徒たちに伝えます!
左右木健一