スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット型多機能端末に使われているパケット通信に関する技術をめぐり、米アップルの日本法人が韓国サムスン電子の特許権を侵害していないことの確認を求めた訴訟
平成25年(ネ)第10043号 債務不存在確認請求控訴事件の控訴審判決が16日、知財高裁であった。
判決概要が下記に公開されています。
http://www.ip.courts.go.jp/hanrei/pdf1/g_panel/H25ne10043.pdf
判決では、控訴人による特許権に基づく損害賠償請求権の行使が,FRAND条件でのライセンス 料相当額を超える部分では権利の濫用に当たるが,FRAND条件でのライセンス料相当 額の範囲内では権利の濫用に当たるものではないと判断されました。
今回の判決では、サムスン側はの一部勝訴で終わりました。
しかし、ライセンス料は、本来、支払わなくてはならないものです。
つまり、結果的に、本来支払われる額が支払われるようになっただけなのですよ。
両者、これまでの訴訟でかかったコストの分だけ損をしているので、今回の判決は、両者痛み分けですね^_^
以下、判決概要の抜粋です。
(5) 本件特許権の行使が権利濫用に当たるかについて
本判決は,次のとおり判示して,控訴人による損害賠償請求は,FRAND条件での ライセンス料相当額を越える部分では権利の濫用に当たるが,FRAND条件でのライ センス料相当額の範囲内では権利の濫用に当たるものではないと判断した。
「a FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求 UMTS規格に準拠した製品を製造,販売等しようとする者は,UMTS規格に準拠 した製品を製造,販売等するのに必須となる特許権のうち,少なくともETSIの会員 が保有するものについては,ETSIのIPRポリシー4.1項等に応じて適時に必要 な開示がされるとともに,同ポリシー6.1項等によってFRAND宣言をすることが 要求されていることを認識しており,特許権者とのしかるべき交渉の結果,将来,FR AND条件によるライセンスを受けられるであろうと信頼するが,その信頼は保護に値 するというべきである。したがって,本件FRAND宣言がされている本件特許につい てFRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求権の行使を許容するこ とは,このような期待を抱いてUMTS規格に準拠した製品を製造,販売する者の信頼
を害することになる。 必須宣言特許を保有する者は,UMTS規格に準拠する者のかかる期待を背景に,U
MTS規格の一部となった本件特許を含む特許権が全世界の多数の事業者等によって幅 広く利用され,それに応じて,UMTS規格の一部とならなければ到底得られなかったであろう規模のライセンス料収入が得られるという利益を得ることができる。また,本 件FRAND宣言を含めてETSIのIPRポリシーの要求するFRAND宣言をした 者については,自らの意思で取消不能なライセンスをFRAND条件で許諾する用意が ある旨を宣言しているのであるから,FRAND条件でのライセンス料相当額を超えた 損害賠償請求権を許容する必要性は高くないといえる。
したがって,FRAND宣言をした特許権者が,当該特許権に基づいて,FRAND 条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求をする場合,そのような請求を受け た相手方は,特許権者がFRAND宣言をした事実を主張,立証をすれば,ライセンス 料相当額を超える請求を拒むことができると解すべきである。
これに対し,特許権者が,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を 有しない等の特段の事情が存することについて主張,立証をすれば,FRAND条件で のライセンス料を超える損害賠償請求部分についても許容されるというべきである。そ のような相手方については,そもそもFRAND宣言による利益を受ける意思を有しな いのであるから,特許権者の損害賠償請求権がFRAND条件でのライセンス料相当額 に限定される理由はない。もっとも,FRAND条件でのライセンス料相当額を超える 損害賠償請求を許容することは,前記のとおりの弊害が存することに照らすならば,相 手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの特段の事情は,厳 格に認定されるべきである。
b FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内の損害賠償請求 FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内での損害賠償請求については,必須
宣言特許による場合であっても,制限されるべきではないといえる。 すなわち,UMTS規格に準拠した製品を製造,販売等しようとする者は,FRAN D条件でのライセンス料相当額については,将来支払うべきことを想定して事業を開始 しているものと想定される。また,ETSIのIPRポリシーの3.2項は「IPRの 保有者は・・・IPRの使用につき適切かつ公平に補償を受ける」(IPR holders ...sh ould be adequately and fairly rewarded for the use of their IPRs[.])ことをも ETSIのIPRポリシーの目的の一つと定めており,特許権者に対する適切な補償を
確保することは,この点からも要請されているものである。 ただし,FRAND宣言に至る過程やライセンス交渉過程等で現れた諸般の事情を総
合した結果,当該損害賠償請求権が発明の公開に対する対価として重要な意味を有する ことを考慮してもなお,ライセンス料相当額の範囲内の損害賠償請求を許すことが著し く不公正であると認められるなど特段の事情が存することについて,相手方から主張立 証がされた場合には,権利濫用としてかかる請求が制限されることは妨げられないとい うべきである。
c まとめ 以上を総合すれば,本件FRAND宣言をした控訴人を含めて,FRAND宣言をしている者による損害賠償請求について,1 FRAND条件でのライセンス料相当額を 超える損害賠償請求を認めることは,上記aの特段の事情のない限り許されないという べきであるが,他方,2 FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内での損害賠 償請求については,必須宣言特許による場合であっても,上記bの特段の事情のない限 り,制限されるべきではないといえる。」
「本件に現れた一切の事情を考慮しても,控訴人によるFRAND条件でのライセンス 料相当額の範囲内での損害賠償請求を許すことが著しく不公正であるとするに足りる事 情はうかがわれず,前記特段の事情が存在すると認めるに足りる証拠はない。」
「本件について被控訴人にFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない場 合など特段の事情が存するとは認められない。」
「よって,控訴人による本件の損害賠償請求が権利の濫用に当たるとの被控訴人の主張 は,控訴人の主張に係る損害額のうち,後記7のとおりのFRAND条件によるライセ ンス料相当額を超える部分では理由があるが,FRAND条件によるライセンス料相当 額の範囲では採用の限りではない。」
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