オペラとワイン | Die Ruine der Walhalla

Die Ruine der Walhalla

In dieser Ruine findet man nichts.

ということで 、早速書いてみる。(笑)


標題は、別に私が好きなものを二つ並べた訳ではない。オペラの中に意外とワインが頻繁に出て来るという話である。ワイン


ワインはヨーロッパの人々の日常生活の中において、今日の日本人のお茶のような存在であると言っても過言ではない。中には茶道のような堅苦しいものもあれば、極上の玉露のように、庶民はなかなか飲む機会のないものもある。しかし、多くの人は安いお茶を毎日食事と一緒に、あるいは単に喉が渇いた時に飲んでいる。


かつてのヨーロッパにおけるワインも、ちょうどそんな存在であった。昔のフランス人やイタリア人は、年間1人当たり(老人から赤ちゃんまで平均して)100リットル近いワインを消費していた。健康な大人なら、毎日1本近いワインを飲むのが普通であった。最近日本でもよく売られている、1本500円足らずの安いワイン、今でも現地では100円くらいで買えるのである。その一方、上流階級や中流階級の一部で、非常に高価なワインを楽しむ習慣もある。何れにせよ、日本のお茶と殆ど一緒ではないか。そんなワインであるから、登場人物が貴族であれ庶民であれ、ドラマの中に出てこないほうがおかしいのである。


では、ワインが出て来るオペラ、片っ端から並べてみよう。


ドン・ジョヴァンニ、後宮からの誘拐、魔笛、
椿姫、リゴレット、愛の妙薬、カヴァレリーア・ルスティカーナ、
ラ・ボエーム、トスカ、外套、サロメ


それぞれどういう場面でどう出てくるかを書こうと思ったのだが、ことオペラとなるとリブレットやスコアを確認してからでないと気が済まないので、後日改めてゆっくりと書くことにする。


最初にワインは庶民のお茶のようなものだと書いたが、ソムリエが出て来るような高級レストランでは話が違ってくる。本当の高級レストランは、本来庶民が行くところではない。本当の高級レストランは料理が美味しいだけではない。さりげない調度品、バカラのワイングラスの渋い輝き、銀食器の輝きと手触り…そういうものをごく自然に楽しめる素養を持った者でないと十分に楽しめるものではない。逆に、そういうレストランのスタッフは、客が席について一言二言喋っただけで、どの程度のレベルの人間か判断してしまうことになる。


そのような店を訪れる客の多くは高等教育を受けた者である。現在は猫も杓子も大学に進学するが、つい30年も前は大学進学率なんて3割以下であった。そして、大学生の多くはドイツ語を学んだ。また、昔は日本ではドイツワインが好まれていた。ドイツワインの名前を見て、客が面白い名前だと話題にしたりすることもあろう。そういう客を相手に、多くは中卒か高卒のソムリエがワインをサービスするのである。ソムリエ試験では、ドイツワインの名前をわけも分からず覚え、そのドイツ語の意味を丸暗記する勉強が求められていた。


さて、オペラもまた、本来は上流階級の楽しみであり嗜みであった。高級レストランでワインを楽しむ階級とオペラを楽しむ階級は一致する。パリにいたとき、日本でワイン会社が主催するソムリエコンテストの問題を考えてくれと頼まれたことがある。ありきたりのワインの問題は他の人が作るだろうから、有名なオペラに出て来るワインについて4択で答えさせる問題を数問作ってみた。


よく考えたら日本のワイン会社の担当者がこの手の話題を理解できるはずもない。私の作った問題は採用されなかったのはいいとして、後日その会社のサイトに掲載されたゲームに流用されていた。ロールプレイイングゲームの中でワインのクイズに答えて行くのであるが、その最後の難関の問題3問が私の作った問題であった。(笑)