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濱野 太郎 38歳

日本人選手がメジャーリーグで活躍する裏側で日本人審判がメジャーリーグを目指して渡米していることをどれだけの人が知っているだろうか。

UMPIRE=ATHLETE

濱野 太郎 審判一筋の人生を紹介したい。

審判の序列はrookieから始まり
Major>3A >2A >advanced A >A>short season A>advanced rookie>rookie
渡米して5年、今Aで審判を行う。そして目指すはMajor。

そして先月「解雇通知」が濱野の元に来た。

majorへの道は今現在絶たれた。

「解雇通知」を受けながらも、この記事を更新する意味。

そこに濱野らしさがあると思う。




第二回「解雇」


着実にスキルアップし、評価もしてもらい、自分なりのやりがいを感じる。
成長を実感してフィールドに立つ日々が増える中、ずっと気にかけてくださった
指導員の方がリタイアされる。
そして後ろ楯のいなくなった濱野を取巻く環境が変わって行く。

「僕の人間関係の築き方が上手くなかったというのもあります。
広く浅くいろいろな人と上手に付き合うということが得意ではなく、
信頼できる人と深く付き合う方が自分に向いていて、
最も信頼できる方がいなくなってしまった。
審判の評価の基準は明確ではないし、人間の集まりである以上
仕方ないですが、世渡り上手な人ほど出世できていたりと
自分にとっては大きな変化でした。」


そんな中、事件が起こる。

「審判として6年目、ストライクゾーンの高めをストライクにするという
ルール改正があり、春のキャンプからこのジャッジをルールブックに基づいて
行おうという話になっていました。

そのルール改正が行われた春のオープン戦の初戦。
星野さんが阪神の監督になったその初陣、
マスコミも注目する試合の後半の球審を任されたんです。

9回裏、2アウトまで滞りなく試合が運んだのですが、
対戦相手の西武の帆足君の投げた高めのストレートを

『ボール』とジャッジしてしまったんです。

そのジャッジがきっかけで阪神が逆転勝ちしてしまったんですね。」



今まで小さいながらも積み立てて来たことで裏付けされた自信が一気に崩れてしまう。

「後悔の残るジャッジでした。」

案の定マスコミからもあのジャッジはルール改正前と変わらないじゃないか?
と指摘を受け、
それをストライクという為に春から練習してきたんじゃないの?
と上司からも対戦相手のコーチからも言われる。

ここで上手くジャッジできたら1軍の試合で審判ができたかもしれない。
しかしそのチャンスを自分自身で潰してしまう。

『なぜストライクと言えなかったのだろう』

後悔しか残らない。自分に腹が立って仕方がない。
その時の心理状態を省みる。でも改善策が見当たらない。
信頼できる相談員にも相談できない。
仲間の目も気になる。
転がるように悪い方向へ解釈して行く。

そこから自信を持ってジャッジすることはなかった。

そして2年後、解雇を言い渡される。

31歳のことだった。

当たり前のことを当たり前にやることでGAMEをコントロールする。

そのプレッシャーに打ち勝つメンタルをどう作り、どう保つのか?

ひとつの自分のジャッジが観客を沸かすことにもなるが、試合を壊すことにもなる。

当時の濱野がこの責任をひとりで負うには重過ぎたのかもしれない。


次回は11月10日(水)更新予定です。