同族経営の弊害がよく取り沙汰される。


同族経営というのは、代表取締役会長、社長など経営権が一家族、一族によって運営される形態。


同族経営では、経営権というパイが一族によって独占された状態。


さて、同族でない企業は、同族経営とは無縁でその弊害はないのかな?


そんな事はない。同族ではないけど、同属経営が当たり前のように通用している。


経済は詰まるところパイの奪い合いでしかない。


今やグローバル社会の中で世界の市場を舞台にしたグローバル会社のほとんどが、海外現地法人を設立している。


国内でも子会社を持っている。


そうでない企業を含め、新規事業戦略としての新規子会社設立、M&Aによる子会社化や議決権のある筆頭株主となり、グループ化する動きは当然の如く行われている。


子会社化やグループ化には


◎その企業の主たる営業収益を拡張する為の事業

 -国内では当該事業の国内市場に占める割合をあげる為。

 -海外では当該事業の海外市場に進出または占める割合をあげる為。

◎多角経営的な事業

 -国内市場に新規参入。

 -海外市場に新規参入。

◎内製化という概念による事業

 -場合によっては多角経営に含まれる

 -他社から仕入れていたモノやサービスを自社グループで調達。


などがある。


新規参入もシェア拡大も将来に渡って企業が生き残る為の重要戦略として位置づけられていて、この弱肉強食の自由経済化で競争を生み、価格安定(価格低下)にも貢献する。


弱肉強食であるがゆえに、これは同業他社とのシェア争いであり、パイの奪いあいとなる。


一方、内製化は主たる商品・サービスに係る他社依存度を低減し、仕入先業界のパイを奪う。


内製化、グループ化、子会社化できる企業というのは、それ相当の資産を保有しており、ある程度安定した企業であることが多い、つまり、市場におけるシェアもある程度あり、売上も相当あげている企業ということだ。


とするとその企業の仕入先からしてみれば、内製化されてしまうことは相当な痛手となる。


元々仕入れ先にあたる業界はこうした大手クライアントが顧客である場合、仕入先同業他社間の競争を煽られ、コストダウンを含めた低価格競争に追われる。


低価格競争に疲弊して追随できない企業もでてくるけど、大手クライアントの内製化となると低価格競争どころか市場の大きなパイが消滅してしまうことを意味する。


海外進出した場合には、海外の市場シェアを奪うことにつながるが、海外市場というのはその国から見れば内需に直結するものも少なくない。


つまり、他国の内需産業をも食い尽くしてしまう仕組みだということだ。


国内に拠点を置き貿易による輸出によって貿易黒字が出るというのは、相手国から買うより相手国に売る方が多いということだけど、輸出するもの全てが相手国で賄えないものではないはずだ。


つまり、内需産業の市場シェアをも奪っているということだ。


また複数国が同じ生産物をひとつの国に輸出している場合、輸出国同士でシェアを奪いあい、輸入国の自国産業も競争を余儀なくされ、負ければシェアを奪われ、場合によっては産業縮小または消滅につながる。


単純に考えてその輸入国の内需が縮小し、国力が落ちればその国の通貨価値も下がることになり、そうなれば産業界全体にも影響が及び失業率も上がり、景気が低迷することさえある。


そうならない為に?輸入国ではバランスを保ち、各国は高い関税をかけたり、場合によっては輸入差し止めをしたり、輸出防衛策に走ったり、輸出に力を入れることによりバランスを保ちながら自国産業と輸入品・輸入サービスとのバランスをとる。


貿易には貿易収支と経常収支がある。この2つは貿易のバランス保持、さらにバランスのバロメーターにもなるものだ。


貿易収支に黒字が出れば一般的に経常収支は赤字、貿易収支が赤字なら一般的に経常収支は黒字。


さらにCIFやBOFという方法によって自国通貨建て取引か相手国通貨建て取引かが決まる。


でも、相手国通貨建ての取引だった場合、変動相場制である現代では世界情勢によってそのときにならないといくらもらえるのか払わなくてはならないのかわからないというのではお互いにリスクがある。


そこで貿易を行う場合には相手国企業との契約時に期限付きでその時点の為替に関わらず、二国間の為替レートをあらかじめ決めておくのが一般的な慣習となっている。


さらにそれぞれの国ではこうした日々変動する為替レートでは財務、経理上忙しすぎて仕方ない。この為、あの国との為替レートはこのくらいという多少の上下動を見込んだレートで仮に計算しておいたり、戦略を立てたりする。


この通貨建てによってそれを外貨として保有しておくのか、換金するのか、換金するならどのタイミングが自社にとって最適なのかも考える必要がある。


さらに世界経済が安定しているときと異なり、昨今のようなアメリカ発の世界経済低迷期にアメリカドルを持っている事が得策なのかどうかは悩ましいという状況も出てくる。


為替相場だけではなく、こうしたそれぞれの国の経済状態や産業などの局面から株などの投資でも自国ではなく他国に目が向けられることも多い。


こうした証券市場を取り巻く環境の中で日本はさんざん他国を食い荒らしておいて、日本の企業の多くが外国の機関投資家や外国人投資家による企業買収防衛策に躍起になっている。


世界の目から見たらこれはどういう状態だろう?


「ずるい!」


の一言だろう。


この点は以前書いたので省略するとして、国内の産業間に大きく話を戻す。


大手クライアントは自社が身を置く業界でさらに競争原理が働き、品質、サービス、価格競争が起きる。


ただ、現代は品質やサービスを重視せず、価格に終始してしまうケースが多く見受けられる。


とにかく安くだ。


そして何か問題が起きたときには、モノづくりの世界ならリコールで無償回収、そうでない場合には責任の擦り付け合いが起こり、事の真意は別として価格競争に追いやられた立場の弱い仕入先が犠牲になる事が多い。


企業トップの謝罪シーンは頻出するようになってきた。


これは企業がジェントルマン(紳士)になったのではなく、消費者が情報を得やすい社会になったから、隠蔽がバレて非難を浴びるよりはいいと判断しているとしか思えないケースも多い。


逆に消費者が情報を得られなかった時代は、隠蔽が当たり前になってたという事。


政界の議員や官僚でも見られるように。


上に立つ人間は人間なりにそれが人道的に見て善か悪かに関わらず、パニックを起こさない為にとか建前論を掲げたり、社内では暗黙の了解で上司には逆らえない、仕事がなくなったら困るという足元を見た風潮が少なくとも日本には蔓延していて内部告発を抑えていた。


PL法(製造企業責任法)ができたときも、裁判で企業が敗訴するケースが多くなり、知財でも一時金で済まして(澄ました顔して)きた企業も特許権を主張する元社員に企業が敗訴したり、食品偽装のひとつである消費期限切れに伴う隠蔽も暴露されるなど長いものに巻かれて泣き寝入りするしかなかった時代ではなくなったことも大きい。


だから、とても紳士的な態度で非を認めているわけではないケースが極めて多いと考えて間違いない。


これだけ化学も科学も技術も進歩しているにも関わらず、偽装は別としてリコールや現実に事故が起きる大きな原因になっているのが、過当競争であり、これに伴う執拗なコストダウンと安全管理が困難などころか、無理な納入期日の短縮にある。


これを「努力しろ」の一言で片付けてしまう構造に起因している。


よく企業トップの謝罪会見で「目標達成に尽力してくれ」とは言ったが、偽装や手抜きを指示した覚えはないという明らかに意図があったが、具体的には言ってないよという悪質さが見える事が多い。


こうした暗黙の了解を利用した悪質な故意のやらせに対して監視、監査機能が働いていない事は明らか。


昨今、社外取締役や監査役を採用する企業が増えたものの、パフォーマンス以外に期待していないというよりむしろ何も意味を持たない前提で導入しているに過ぎない。


これは、外部の経営コンサルタントにしても会計監査法人、最近話題の内部監査人にしても同じだ。


社外取締役や監査役も経営コンサルタントも会計監査法人も内部監査人もその企業に雇われているか、その企業からの報酬で成り立つのだから立場的に弱くなる。


社外取締役に至っては提携関係のある企業のトップだったり、そうでなくてもそうそうその企業を見てる暇などないような企業トップが選任されている。


こうした仕組みは政治家や官僚が作り、財界が調味料を加えるわけだけど、抜け道をわざと作っているとしか思えない。


しかし、資本主義経済の仕組みからすると企業から報酬をもらわずに明確な第三者の立場で「その企業と無縁のどこかの機関」が監視するのは難しいという現実がある。


そうなると短絡的に出てくるのが税金だけど、なんで企業が真摯に取り組むべきことで責任持って常識的に道徳的に理にかなった姿勢で事を成すべきことに監視する為の費用を国民が負担しなきゃいけないんだ。そりゃ本末転倒だ。という事になるだろう。


さらに企業にとって限りなく囲い込みが可能な社外取締役、監査役、内部監査人、会計監査法人でもその企業にどれほど関与でき、知ることができるのか疑問であるのに全く無縁の第三者機関にどれほどの力が発揮できるのだろうか。


消費者庁設立に向け動き出している政府。


手っ取り早い策ではあるけど縦割り行政の弊害を理由にさらに省庁を増やそうとしている政府。


小さな政府はどこへ?


ずっと言っているように官僚制度を廃止して公務員全体の利権や法外報酬をやめて、さらに政府や国民が明確な目標を与え、その達成に全てをかける体制にすれば、嫌でも縦割りはなくなる。


国民の税金で賄われる公務員報酬が民間報酬より高いのはおかしいのだから。


これまでは、議員の資格は選挙により安泰ではない、政府の仕事は民間に比べレベルが高い?と考えられていたようだ。


これに官僚がぶら下がった。


でも、議員や官僚の年金は、安泰だし、国民の年金のように杜撰ではない。


さらに政府の仕事が民間に比べてレベルが高く高度だったのは、日本が復興しはじめた大昔の話だ。


現代は民間の方がよっぽどレベルが高い上に忙しい。


さらに現代は官僚や議員の体質にはことごとく問題がある。それでも氷山の一角であることを考えると法外な報酬を得る理由が全くない。


だから、官僚制度を廃止して公務員全体の利権や法外報酬をやめて、さらに政府や国民が明確な目標を与え、その達成に全てをかける体制にして、嫌でも協力せざるを得ない状況を作れば、民間並みのレベル付近までは近づくだろう。


おのずと縦割りもなくなり、新しい省庁などいらず、小さな政府に向かい、税金は(当たり前なんだけど)無駄遣いされず、有効に使われる。


メリットがかなりある。

ところで内部監査、システム監査、会計監査、システムアナリスト・・・


とかく資格、資格と騒がれる日本。


でも実際には資格なんて持ってても意味がないとか、資格より経験だという人もいれば、経験があれば資格があるならそれに越したことはないという人もいるし、資格優位の捕らえ方をする人も多い。


内部監査人や今やITを駆使した企業システムは企業経営と切っても切れない重要な生命線を維持する為の設備となっているし、日々の活動によりそこに蓄積された情報を活用することは重要なポイントであることからシステム監査やシステムアナリストなども実は経営にかなり近い位置にいなければならないにも関わらず、日本では形骸化していてさほど重要視されていないし、システム面から経営に関わる提案はあるにしても、経営自体への直接的な発言権もほとんどないのが実情ではないだろうか。


でも、こうしたシステム監査やシステムアナリストも資格がある。


たかが資格?されど資格?


資格を取る為に多くの時間を費やし努力をしてようやく取得した資格。こと経営に近い資格は、本来機能すべき、本来実力を発揮すべき素養を活用できない仕組みの中におかれている気がする。


中小企業診断士もそうだ。とかくMBAが騒がれ、外国語で学び、外国語でコミュニケーションをとり、外国語で熱いディスカッションをこなし、経営ノウハウを習得し、MBAを取得したことが評価されるはずのこのMBAが日本ではいまだにあまり重要視されないらしい。


アメリカ式の合理主義による徹底した標準化と日本の経験の積み上げを重視する傾向という文化摩擦があるからだろう。


まして、トヨタのように世界中の人々が知る大企業が日本発であり、カイゼンなど脚光を浴び、ソニーのように・・・、松下(パナソニック)のように・・・世界の経済界でも代表的な地位を獲得していることから文化の違いによる体質の違いはますます広がっている。


これらの日本を代表する一般に人気のあるグローバル企業は、内製化、子会社化、グループ化、輸出邁進にいとまがなく、さらには現地法人設立によるまさに相手国内需シェア奪取に躍起になっている企業群だ。


個人で見れば家族で見れば一族で見れば同族経営。


でも、法人格で見れば同属経営であり、同族経営と同属経営には規模以外の違いがあるようには思えない。


つまり、同族経営の弊害の多くも同属経営企業は世界規模で広げているという側面がある。


この側面は軍事的な戦争と経済が結果同じことをしていることを表しているんじゃないかな。


世界各国は内需を大切にし、自国で賄えるものは自国で賄い、極力自国で生活圏を作ることが結果的に経済縮小になったとしてもいいんじゃないかな。


競争が激化すればするほど人は知恵を絞り、さらに激化する。


既に今のスピードに人の心は追いつかず、心の病を患う人が増えているんだから。


地球や自然環境にも優しく持続可能な地球規模の営みの実現のためにも。