東京マラソンが始まってから、ここ数年はマラソンブームと言えるでしょう。
どの大会も参加者は1万人を超える規模が集まります。
ランニングの何がいいかというと、まず金がかからないということです。
とはいえ、ウェアやシューズは意外に金がかかります。シューズも厳密に言えば1年で2、3回は変える必要があり、道具に凝り始めるとシューズが10足単位で増えていきます。
でも、ゴルフは練習するにもお金がかかります。
ランニングは練習にお金はかかりませんから、毎日でもできます。
マラソン大会も、東京マラソンのような大きな大会でも1万円ちょっと、それより小規模の大会なら6〜8千円程度で参加できます。
何より、フルマラソンを完走すると、高い確率で「すごいですねー」と感心されます。
毎日ゴルフしても、こうは言われません。
もちろん健康にも良いのは言うに及ばずです。僕は体重が79kg→65kgまで減りました。
話が逸れました。
ゴルフとランニングの共通点の話です。
それは、ズバリ道具に関する考え方です。
ゴルフはクラブ、ランニングはシューズがそれに当たります。
現在のゴルフクラブは、低重心で深重心。スライスしないようにフェースもだいたいフックに入ってます。ようはまっすぐに飛ばせるように、ありとあらゆるサポート機能が入っています。
一方、現在のランニングシューズも同じで、初心者向けと言われるモデルは、たっぷりとソール(特に踵)にクッションが入っていて、さらに着地するときに足がねじれないようにアウトソールにねじれ防止のサポート機能も付いています。
一見、ランナーには至れり尽くせりのような気がします。
実際、ショップに行って「初心者なんで」と店員に言うと、間違いなくこのタイプのシューズを勧められます。
しかし、これだけランニングが人気になって、いろんなメーカーから高機能シューズが発売されていても、けが人が減るどころか、むしろ増えているのが現状です。
「Born to Run」でこのあたりのことが触れられています。
むしろ沢山あるサポート機能のおかげで、人間が本来持っている感覚が生かせないのだと。
足に着地するときの衝撃がダイレクトに伝われば、人間は自然とダメージの少ない姿勢をチョイスして走るようになる。厚いクッションのおかげで、足に感じる衝撃やねじれの感覚が殺されているのだと。
僕も実際に素足でアスファルトの上を走ってみました。
それまで疲れてモモや膝が張っていたのが、素足で走ると、衝撃で痛くなるどころか、逆に徐々に張りがなくなっていくという不思議な体験をしました。
そこからこのナチュラルランニング(素足や薄底シューズで走ることをそう呼びます)は眉唾ではなく、何かあると確信しました。
「Born to Run」は2010年にアメリカで発売され、瞬く間に話題になりました。
帯に「全米20万人の走りを変えた!」と大げさなコピーが踊っていますが、実際それくらい多大な影響を与えたようです。
この頃から各メーカーから「素足系シューズ」「裸足感覚シューズ」と呼ばれる、薄底で、ソールの柔らかいシューズが次々とリリースされました。Nike Freeのような感じのシューズといえばわかりやすいでしょうか。
必要最小限の機能しかない、薄くて軽いシューズを愛用するランナーをミニマリストランナーと呼んだりします。
それから、しばらくはミニマリストと従来ランナー(ナチュラルラン否定派)との論戦が続きます。
僕のように「Born to Run」に影響され、安易に薄底シューズを履いた結果、けが人が続出したからです。
この辺りは難しいところで、薄底のシューズを履いたからといって、直ちに走りが改善されるわけではありません。クッションがない分、衝撃は強いので、普通のシューズよりは怪我のリスクは上がります。
通常はウォーキングから始めて、1km→3km→5km→10kmと徐々に距離を伸ばして慣らしていきます。1年くらいかけて普段走る距離くらいまで伸ばすのがセオリーなのです。
即効性を求めたために怪我をしてしまったランナーたちは徐々に素足系シューズから離れていき、ブームも少し下火になり始めました。
「やっぱりクッションあったほうがイイヨネー」に揺り戻してきたわけです。
最近はそれなりにクッションがあり、足の機能や感覚を損ねないように過剰なサポートがない中間系のシューズがメインストリームといったところです。
もう一度話を戻します。
要するにゴルフにしても、ランニングにしても、道具の過剰な機能が上達を阻害しているという側面があるということです。
初心者だからと言って、過剰なサポート機能のついた道具を使うと、いつまでたっても本当の意味で上達しないのではないでしょうか。
道具はできるだけニュートラルであるべきだと思います。
多少調整するとしても、それは、ここ一番の時の、一時的なものであるべきです。
いろいろごちゃごちゃと書き連ねましたが、僕が一番言いたかったことは上の6行くらいのことです。
みなさん、下手でも初心者でも、むしろ上級者用のものを使いましょう。余計なサポートはいりません!あと早急に結果を求めず、気長に取り組みましょう。
長い目で見ればそれくらいの方がわりと近道だったりします。