話には聞いたことがありましたが、まさか自分のところにまわってくるとは思ってもみませんでした。
とある分野(仮にA分野とします)の和訳案件。「ハイライトされた部分3カ所のうち、どのくらい引き受けてもらえますか」という打診と問い合わせがありました。ちょうどいろいろと立て込んでいたということもあり、無理はせずに2カ所のみ引き受けました。すなわち、残り1カ所は別の翻訳者さんのところに。
それから1カ月後くらいだったでしょうか。「逐一訂正していたら時間がいくらあっても足りない」ということで、その別の翻訳者さんが担当された部分をすべて訳し直してほしという依頼がきました。参考として、その方の訳文も送って下ったのですが、影響される恐れがあると思ったので、その訳文は一切見ないという条件を伝えて、作業を開始しました。一体何がダメだったのか…
そこで、先日、そのエージェントさんにご挨拶に行った折、「何がどう悪かったのか差し支えない範囲で教えてください」とお伺いしてみました。
どういった分野でもそうですが、その分野の中で枝分かれしているため、特定の分野が得意だったとしても、全ての「枝」の部分も大丈夫かと聞かれれば、そうではない方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回もA分野ではあるのですが、とても細かい枝の一つであったため、内容が困難であったために質がよくなかったのでは、と考えていました。偶然なのですが、私はピンポイントでその「枝」の末端部分を実務で携わっていたので、全体像が見えた分、落ち着いて取り組むことができたのでした。
私の質問の答えとして返ってきたのは、大きく分けると「定訳(調査)」、「日本語力」に起因すると思われるものでした。
1.定訳(調査)
・さっと調べた程度では見つからないかもしれないが、きちんと調べれば定訳が見つかるものに対し、きちんと定訳が使われていなかった。
2.日本語力
・サッと読んだだけでは頭に内容が入ってこない。何度も読み返さないと何を言わんとしているのか、訳文からは分からない。読み返しても分からない部分も多い。
・「X」という英単語に確かに「Y」という意味はあるが、前後の流れからして「Y」という訳語の選択はあり得ない。
ということで、この人は他の分野であっても、同じようなことになるだろうというご意見でした。
てっきり内容の問題かと思っていましたので驚きました。もう少し詳しく話してくださいましたが、基本的なことですよね。
翻訳に対する基本的な姿勢の問題だなぁと思いながら聞いていました。
私に最初からやり直しを依頼することで、エージェントは単純計算で時間とお金が倍かかってしまっているわけです。翻訳者なんだから、とりあえず訳文を仕上げて納品すれば後はしらな~い!という考えの方が残念ながらいらっしゃるのですが、そういう姿勢でいいのでしょうか。
以前にも書いたかもしれませんが、私はできるだけ後工程に迷惑をかけたくないという思いで取り組んでいます。だから、調べ物も徹底的にします。この点に関しては、今回こちらのエージェントで「『よくこんな細かいことまで、というところまで調べ尽くしてくださっているのがよく分かる。これは時間がかかっても仕方がない』と話してるんです」とおっしゃっていただき、ホッとしました。徹底的に調べ物をしているのが透けて見える訳文というのも果たしてどうなんだろう・・・という思いはありますが。
納期など、厳しい条件でも気軽に引き受けてくださるのはありがたいけれど、出来あがってくるものが今回のようなものだと困ってしまうので、無理な場合ははっきりとそう言ってほしい、ともおっしゃっていました。この点については、私は基本的に、短納期のものは納期の交渉をするか断るという姿勢でいます。
今回の方がどういう状況で引き受けられたのかということは知る由もありませんが、きちんと「断る」という選択肢も自分の中で用意しておく必要がありますよね。
ただ、日本語力となりますと…
なかなか難しいですね。英語もそうですが、やはり普段からどれだけ言葉に接しているかが勝負といったところでしょうか。自戒を込めて・・・
ちょっとまとまりのない文章になってしまいました。
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