ストリップ・スペシャル

ストリップ・スペシャル

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2015年9月10日(木)
俺はJR渋谷駅のハチ公改札に出た。
ハチ公が渋谷道頓堀劇場の方向を見つめている。

待つことしかできない、悲しき忠犬ハチ公。
だが、俺は違う。
行くことができる。
羽音芽美が出演する劇場へ行くことができる。

その日の渋谷は雨だった。
道玄坂の上から雨が滝のように流れている。
俺が羽音芽美を見に行く時は雨降りが多い。
もしかしたら、雨男なのかもしれない……。

そして劇場入りした俺はロビーで休憩。
羽音芽美からツイッターの通知が届く。
衝撃的な画像が添付されていた。
右目が腫れている。
おそらく疲れとストレスで目が腫れたのだろう。

決して弱音を吐かない羽音芽美。
だが、体は無言のサインを発していたのだ。

休業から復帰して約8ヶ月。
いまだ体調が優れない日々を送っているそうだ。
それなのに、それを感じさせないステージ。
羽音芽美は自分の仕事に忠実な人だ。
いつも多くの観客を楽しませている。
5年前に出会った頃から魅力は増すばかり。
復帰後もステージに立ってくれてありがとう。

問題のステージ。
目が腫れた状態で踊れるのだろうか。
俺は心配した。
だが、見守ることしかできない。
大人しく羽音芽美のステージを待った。

1回目のステージが始まる。
演目は3作目の『アラビアン』

右目に眼帯をして登場。
人間の利き目は右目だという。
利き目をふさいだ状態で踊れるのだろうか。
ステージから落ちるのではないか。
その心配は杞憂に終わった。

彼女はプロの舞台人だった。
見事なステージを見せた。
俺は信じることができなかった自分を恥じた。

時は過ぎ4回目のステージが始まる。
平日の遅い時間なのに、ほぼ席が埋まっている。

そして羽音芽美は4回踊りきった。
直後のオープンショー。

羽音芽美は泣いていた。
どんな思いで涙をにじませたのだろう。

本舞台に戻り、あいさつ。
「みなさん…ありがとうございました……」
涙で声もにじんでいる。

くるくる回す『めいみん棒』
バイバイの代わりに暗転時にいつもやる動作。
泣いていても、いつもの動作を忘れない。

外に出ると雨は止んでいた。
雨が羽音芽美に乗り移ったのだろうか。
俺は雨よりもハレが好きだ。
おっと、目のハレは好きじゃないぜ。

今週が終われば、新作のレッスン、
衣装製作、音編集が始まる。
ほぼ3連投と言っても過言ではない。

9月21日~30日まで晃生での新作披露に期待して、俺は渋谷を後にした。
羽音芽美の『雅(みやび)』を10個ほめる。


1.独自性のある和傘の使いかた

・最後のポーズ
和傘の頭ろくろを(てっぺんの出っ張り)持つ。
天の部分を客席に向けて、生まれたままの姿でポーズ。
そして客席に向けられる笑顔がかわいい。
157センチと小柄な体が大きく神々しく見える。

・和傘の天が半透明になっている。
フィルターやスモークの役目を果たす。
和傘越しに見える姿も幻想的で美しい。

傘だけでも、羽音芽美の美学とこだわりが感じられる。

2.独自性のあるポーズ

ベットステージで魅せる3連続ポーズ。
足に傘を這わせてポーズを取る。
体力を必要とする難しいポーズ。
こんなポーズ見たことない!!

3.衣装
赤とピンクを基調とした着物。
和を感じる布で、リボンのように髪を結ぶ。
ベットでリボンをほどくと、髪が広がり色気を演出。

4.選曲

1曲目
フランス語の曲。
ハープの音色が心地いい。
着物だからといって、あえて日本の曲を選ばない。
古きを破り、新しきを生み出す。

2曲目
ロック調の激しい曲に変わる。
緩急のつけ方、盛り上げ方がうまい。

3曲目
この作品のテーマソング
「万華鏡」がキーワード。
せつない。

4曲目
アニメ主題歌
クールな女性ボーカルが切なさく激しい曲。
盛り上がりはクライマックスまで最高潮。

5.踊り

和傘を持って、ゆったりと踊る。
和傘を巧みに使う。
立ったまま上体を後ろにそらし、和傘をゆっくり上下させる。
日常しない動きが、非日常感を演出し没入感を高める。

6.踊り2

2曲目から踊りに激しさが加わる。
曲と踊りで緩急をつけ飽きさせない。
かぶり席に上方から、ストンと着地する場面。
迫力があり、サプライズ的な演出に目が釘づけ。

体を半回転させ、印を切るような場面。
キレがあって、とてもかっこいい。
羽音芽美の踊り方が好きだ。

7.表情

瞳を閉じて登場。
閉じたまましばらく踊る。
幻想的でこれからを期待させる。
せつない表情、決めの笑顔、時に浮かぶ涙。
短いステージでいろいろな表情が見られる。

8.生まれたままの姿になる

ベットでは、薄布ひとつも纏わず全裸になる。
バストをたくし上げてプルンと下ろす。
エロチシズムを感じる。
さまざまなお客さんに楽しんでもらいたい。
そんな心意気を感じる。


9.引っ込みがない

ステージ中、一度も引っ込みがない。
観客の興味を持続させ、飽きさせないつくりになっている。

10完成度が高い

完成度が高いため、何度見ても発見がある。
座る場所を変えると更に発見がある。
何度でも見たい。

『雅』はよく考えて作られている。
これだけの作品を完成させた力量に感服する。
おそらく、ステージで見せる、1のために100の努力があったのだろう。

『雅』は羽音芽美の代表作だと思う。
しかし最高傑作ではない。
最高傑作は未来から現代へまだ旅の途中。
俺はその作品を見られるなら全てを捧げてもいい。

魅せてくれた
話してくれた
笑ってくれた
癒してくれた
許してくれた

もう少しこの世界にいよう。
希望を与えてくれた。
世界一かわいいよと叫びたい。

しかし、それだけ才能があるだけに体調が惜しまれる。

2015年1月結の晃生、2月中の西川口、俺はたくさん観に行った。
体にも負けず、羽音芽美は頑張っていた。
明るく楽しく元気に観客を楽しませていた。
拍手を受ける羽音芽美の笑顔が輝いていた。
とても美しかった。
俺は毎ステージ感動して、ひそかに涙ぐんでいた。

いま、羽音芽美は月の光と同じ輝きを放っている。

月の光は愛のメッセージ
月の光を放つ羽音芽美は愛の使者。

羽音芽美は俺が応援する最後の踊り子。
これからもずっと応援させてもらいたい。
2014年3月27日、俺はA級小倉劇場を訪れた。
約40名の客入りでスタート。

【香盤】
1.黒崎優
2.麻樹紫陽花
3.西園寺瞳
4.吉沢伊織
5.小澤マリア

2005年にデビューした吉沢伊織は、
A級小倉劇場に最も貢献した踊り子だ。

その人気はすさまじく、2010年は7回乗った。
年間71日であり、1年の約5分の1を小倉の地で過ごした。
また、その年は1月頭、1月中と連続20日間乗った。

この大記録は破られる事はないだろう。
吉沢伊織以上の踊り子が今後、現れるとは思えない。

その人気の理由はどこにあるのだろうか。

1.ステージの良さ

吉沢伊織のステージは、わかりやすく大衆性がある。
使用している曲は奇をてらわず、オーソドックス。
歌詞とリンクした振り付けと豊かな表現力を持つ。
どんな客でもステージの良さが理解できる。

2.地方劇場を大事にしている

新作の初出し、周年の開催を区別することなく行う。
広島第一劇場も大事にしており、
関東より先に新作の初出しした事もある。

広島客と小倉客はイコールで結ばれる。
つまり、広島客は小倉客でもあるのだ。
A級小倉劇場に吉沢伊織が出演する際は、
広島からも遠征客が訪れる。

3.客を大事にしている
客の事を良く覚えている。
名前、どこから来ているのか。
以前はどこの劇場で出会ったか。
どんな話をしたのか。
驚くほど良く覚えている。
踊っていない時も真剣で真面目なのだ。


そんな稀代の踊り子、吉沢伊織を見に行った。

1回目、4番目に登場。
演目は名作『冬物語』

暗転した場内、曲のイントロが流れる。
照明に当てられて、瞳を閉じた吉沢伊織が登場。

踊り始めるが、いつもと違う。
踊りにキレがない。

2曲目が流れる。
吉沢伊織の瞳に涙が浮かんでいる。

彼女は前日、自身のtwitterでこんな発言をしていた。

「やばいっお熱が出てきた。風邪?」

体調が悪かったのだ。
熱で体がツラいから涙したのではない。
思うように踊れなくて悔しいから。
客に100%のステージが見せられなくて悔しいから。
だから、涙が浮かんだのだ。


あとで分かったのだが、
この時、40℃の高熱でインフルエンザにかかっていた。
そんな状態で踊れるわけない。

しかし、吉沢伊織はフルで踊りきった。
踊り子としての意地なのだろうか。
それとも、期待を裏切りたくないという、心がそうさせたのだろうか。

さらに驚くべきことは、ポラのサインだ。
そんな状態にありながら約15名分のサインをすると言う。
無理だ。
吉沢伊織はオープン終了後、楽屋に戻り倒れこんだ。


結局、1回目で降板した。
A級小倉で降板したのは、初めてのことだった。

吉沢はtwitterで「たくさん迷惑お掛けした」とあやまる。
そんな時まで、気を遣う吉沢伊織。
なんて、真面目で責任感の強い踊り子だ。

これまで、A級小倉劇場の為に尽くした吉沢伊織を誰が責める事ができるだろうか。

常連客も高熱で踊った彼女を「プロだ」と褒めていた。
責める者など誰もいない。
劇場スタッフも仕方がないこと語っていた。
吉沢伊織は安心して回復に専念して欲しい。

吉沢伊織は過去に18連投したこともある。
約6ヶ月、休みなしで全国を飛び回った。
しかし、踊り子である前にひとりの人間だ。
病にかかることもある。仕方がないことだ。


そして、1名欠いて4人の踊り子で2回目が始まる。
トップの黒崎優が登場。
吉沢伊織の作品『光の射す方へ』を踊る。

すぐに気が付いた。

黒崎優の踊り方が吉沢伊織にそっくりだと。
まるで、降板した吉沢伊織の気持ちを引き継いで踊っているように見えた。

終始、笑顔で楽しそうに踊る黒崎優。
とても素晴らしいステージを見せてくれた。
彼女の存在だけで、胸がいっぱいになった。


時は過ぎて4回目。
この回、黒崎優は2回踊った。

1番で『ワンナイ2012』
4番で『光の射す方へ』

どちらも、本当に素晴らしいステージだった。
1日、5回踊った黒崎優に敬意を表する。

吉沢伊織と黒崎優は同じ2005年にデビューした。
いわゆる「華の2005年組」

吉沢の方が5ヶ月先輩だが、2人は本当に仲が良い。
仲が良過ぎて、チームを組んだこともある。
吉沢伊織は良い後輩を持った。

そして、翌日から雪見ほのかの代演が決まった。
残り4日の代演、オファーを断ることもできたはず。
それなのに、代演を引き受ける雪見ほのかも素敵だ。
雪見ほのかは、吉沢の3ヶ月後輩。
吉沢伊織は良い後輩を持った。

『華の2005年組」

踊り子同士の友情に俺は涙した。
2014年2月吉日、A級小倉劇場。
南かずさの『休業作』を見た。

18年前、踊り子としてデビュー。
長く続けるつもりはなかった。
幸せな結婚を望んでいた。

結婚式で着るつもりでウェディングドレスを発注した。
でも実際に着ることはなかった。
そこにどんなドラマががあったのだろう。
俺にはわからない。

時を経て、休業作でウェディングドレスを着てステージに立った。

今まで一番凄いダンスだった。
今まで一番美しい微笑みだった。

踊れないから休業するのではない。
踊れるのに休業するのだ。
それが踊り子としての誇りなのだろうか。

ベットステージ。
「心からとても感謝してます」の歌詞で深くお辞儀。
その姿に観客から、惜しみない拍手が送られる。

直後のポラタイム、ファンの男がポラ10枚撮り。
俺にはわかる。
あの男、泣くのを我慢している。
別れを惜しんでいる。
ポラ1枚の時間では足りないから、10枚撮っている。
それでも時間は無情に過ぎて行く。

「あくまでも休業ですからね!」
そう強がる男も居た。
「帰ってこなくていいよ…帰ってこなくて…」
そう、ブツブツと呟く男もいた。
ファンの心理は複雑だ。

俺はどちらの気持ちも分かると思った。

俺がただひとつ言える事。
ありがとう南かずさ。
多岐川美帆という、キャリア5年のストリッパーがいる。
彼女のステージに共通する特徴として、以下の2つが挙げられる。

•無表情で正面を見据えながら踊る
•一部、コミカルな振り付け

一見すると異様なのだが、多岐川はこのスタイルで、他に類を見ない独自の『多岐川スタイル』を確立した。

その多岐川による『20作目』赤いドレスで始まる作品を見た。

通常、ストリップの作品はダンス3曲、ベット2曲の計5曲で構成されている。
しかし、この作品はダンス10曲、ベット2曲の計12曲で構成されている。

限られた時間内に12曲を詰め込んでいるので、大胆でチャレンジングな編集がされている。

使われている曲の歌手は多種多彩。
以下の歌手の曲を使っている。

•元ハロプロのソロアイドル
•現ハロプロのユニットアイドル
•おかまタレント
•アメリカの女性アイドル
•韓国人男性イロモノ
•avex女性ソロシンガー
•大物時代劇俳優
•邦楽男性フォークシンガー
•邦楽バンド
•邦楽ロックバンド

ごった煮とも言える選曲で、
めまぐるしく曲が変わる。
曲調が変わる。
リズムが変わる。
手拍子がしにくい。

大阪の劇場仲間が、俺にこう言った。

「あの作品、あんま好きちゃうわ」

要するに駄作の烙印を押したのだ。

焦点の定まらない選曲で、ストリップの常識から外れる作品だから、そう思うのも仕方がない。

だが、俺はその焦点の定まらない選曲にこそ、謎が隠されていると感じた。

俺は謎を解くために、しばらくの間、彼女を追跡調査することにした。

結果、大和で8回、晃生で4回、小倉で8回、合計20回見た。

歌詞を注意深く聞くことで、
多岐川からのメッセージを読み解いた。

─────────────
アイドルを目指している私。
ディスコでエキゾな彼と出会った。
付き合ってるけど片思い。
シンデレラストーリーはいつ始まるの。
江南スタイルみたいな暮らしがしたい。
私はストリッパーになった。
踊り続ける私。
おかまみたいと言われたこともある。
毎日、サンバみたいなお祭りよ。
そうやって今日まで生きてきた。
別れた今ならあなたを愛することも、憎むこともできるわ。
素敵な別れよ、出会いの未来があるから。
─────────────
多岐川の『20作目』は、一見すると散漫な印象を受けるが、実は出会いから失恋、今後もストリッパーとして生きていくという、決意が語られていると推測した。

この推測が当たっているか本人に確認したい。

やれやれ、また旅に出る準備をしないとな。