「いい人たちだったんだね」
「そうだね……話してみないと分からないこともあるね」
「私たち、みたいにね」
それを聞いたリコが照れくさそうに笑う。今まで見た中でこの表情が一番可愛らしいなと素直に思った。
辺りも本格的に暗くなってきている。
私とリコはまだ人通りの多いうちにお互い家に帰ろうということになった。
「早川さん、一人帰れる?」
「うん、リコこそ平気?」
「平気だよ。家、そんなに遠くないし」
「そうなんだ……あ、そうだ」
公園の入り口まで来て、一度足を止める。
「私のことはチサって呼んでよ。早川さんなんてよそよそしいって」
「……分かった。今日はありがとう、チサ」
「ううん、こっちこそ本当にありがとう。……あとさ、リコが無理しなくたっていいんじゃないかな」
「……何の事?」
「え、あ、あの人たちもいるし、もうフラフラになってまで危険なことをしなくても……」
「あ、ああ……うん、分かった。チサに心配かけたくないし、やめるよ」
「そっか……よかった」
意外にもあっさりと、私の頼みを受け入れてくれた。
最後に二人で手を振り合って、別々の方向へと分かれた。
リコと色々なことを話した。少しだけ、リコの気持ちが分かった。
何か、言いようのない満たされる想いのする時間だった。
でも、それでもなお。私の中で新たに芽生えた違和感は拭えなかった。
今日のリコはよく話をしていた。見たことのないくらい饒舌だった。……不自然さを覚えてしまうほどに。
あれが彼女の本来の姿だというならそれで納得できないこともない。でも、ルイへの想いなど私の訪ねていないことまで自分から話すほど、彼女が大っぴらな性格とはとてもじゃないが思えない。
あれはどこか、言葉を並べ立てることで自分の身を守ろうとしているような……
そして結局聞けずじまいだった”鈴森桐江”のこと……
「…………」
考えていても仕方ない。
聞かされたことを聞かされたまま、私は受け止めるしかない。
いや、受け止めるべきなのだ。そう言い聞かせる。
無言で後ろを振り返る。
視線の先には少しずつ小さくなり、次第に闇に溶けていくリコの姿があった。
私にはその背中が、どこか泣いているようにも見えて。そして――――
――――今すぐ肩を掴んでこちらを向かせて、その涙を間近で……