事実を逆手に真実隠し | 交心空間

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◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 茶髪・ピアスをやめれば1万円……。
 その報道と波紋の主である秋田経済法科大学のコメントについては二週間前
に伝えました。その続報ですが、その前に、経緯を振り返るためそれらの記事
とコメントを掲載します。


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『学生の茶髪とピアス、やめれば現金1万・続ければ懲戒』

 秋田市の学校法人「秋田経済法科大」(小泉健理事長)が10月、同大と、
系列の秋田栄養短大に、茶髪とピアスを禁止する規則を設ける。
 従わない場合には「懲戒」もあるが、指導に応じて改めた学生には褒賞金1
万円が付いた学長賞を贈る“アメとムチ”を用意。文部科学省学生支援課も
「聞いたことがない事例」と言う。
 新たに制定された「学生の頭髪・装身具に関する要綱」では、男女とも、頭
髪について「周囲に不快感を与える特異な髪形、染色、脱色は禁止」、装身具
も「華美を避け、品位を保ち、ピアスは禁止」と明記した。該当する学生には、
新設された教育指導室担当の教官らが指導。どうしても指導を受け入れない学
生には、教授会に諮ったうえで注意処分などの「懲戒」もあり得るとする規定
も盛り込んだ。
 大学、短大合わせて学生約1800人が在籍しているが、対象となる学生は
50人以上とみられ、褒賞金は総額100万円を用意する。
 元検事で弁護士でもある小泉理事長は、「ニートやフリーターなどの問題は、
学生のモラルやマナーの低下も一因ではないか。学生の服装や頭髪の乱れは、
大学や本人の評価にもつながる」が持論。秋田県内の高校などには、この取り
組みを記載したパンフレットを配布して教員や保護者にアピール、志願者の確
保にも生かしたい考え。
 学生からは早速、「なぜそこまでする必要があるのか」という反発が寄せら
れているという。
                   【読売新聞 2006年9月29日より】
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『 茶髪・ピアス報道について』

 この規則の主旨はあくまでも「社会に出してはずかしくない学生の教育」と
いうことです。
 そのために守るべきマナーを守ってもらいたい。服装や頭髪等の身だしなみ
も他人に不快感を与えないものにしてもらいたいということです。どのぐらい
の頭髪の色か、ピアスは耳もだめか等の細則や、褒章制度(1万円)等につい
ても今後検討した上で具体的に制定していく予定です。
 学生を社会に貢献できる人材に教育していきたいという目的における一つの
方策とご理解いただければ幸いです。
          【秋田経済法科大学HP・ニュース&トピックスより】
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安易が招いた波紋 (2006年9月30日)


 そして同大学が最終的にくだした決定、一連に関する表明、それを受けての
報道は次のようなものです。


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『学生の頭髪及び装身具に関して』  学長 小泉 健  2006年10月6日

 このたび、本学で新たに導入いたしました「学生の頭髪及び装身具に関する
要綱」につきまして、各方面から多くの反響を頂いております。この件につき
まして寄せられました様々なご意見・ご関心に対し感謝申し上げますと共に、
改めましてその趣旨についてお伝えしたいと存じます。

 本学は建学以来50有余年、「真理・調和・実学」を重んじて多くの有為な人
材を社会に送り出して参りました。実学を重視し、優れた職業人、社会人を育
成する姿勢は脈々と受け継がれてきております。
 大学は本来、自由にものを考え自由に意見を述べ合い、各人が自らの責任の
もとに自主的に行動することを保障されている空間であります。そのような中
にあって、学生の頭髪及び装身具について基準を設け、強い指導を行うことに
ついて様々な意見があることは承知しております。
 しかしながら近年、学生の意識と社会的常識との段差が目立ってきているこ
とも事実であります。社会人として一般的なマナーやモラルを在学中に教育す
ることは、いわば大学の使命のひとつとなっております。
 高校から大学へ、大学から社会へ、学生の成長を連続したキャリア形成のプ
ロセスとして受け止め、その実りある教育のひとつの手段として、私共は今回
の選択をいたしました。対象となる学生は決して多くはありませんが、さまざ
まな社会的ルールやマナーの指導と併せて、今回の決定に関しても学生と十分
に話し合い、納得のいくように指導していきたいと考えております。

 一部マスコミで「報奨金の支給」が報じられておりますが、そのような決定
はなされておらず、実施するものではありません。かかる報道が誇張され、拡
大されて伝えられていることは甚だ遺憾とするところであり、本来の意図する
ところが歪められて伝わることを深く憂慮いたしております。
 以上述べて参りました趣旨を十分お汲み取り頂き、今後とも本学へのご協力、
ご指導・ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
          【秋田経済法科大学HP・ニュース&トピックスより】

学生の頭髪及び装身具に関して 【秋田経済法科大学】
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『まじめな学生には恩恵なし?茶髪・ピアス褒賞見送り』

 学生の茶髪やピアスを禁止する規則を設けた秋田市の学校法人「秋田経済法
科大」(小泉健理事長)が、指導に応じた場合の褒賞金(1万円)の実施を見
送ることを決めた。
 法人によると、同大と、系列の秋田栄養短大で、茶髪、ピアスの禁止を明記
した「学生の頭髪・装身具に関する要綱」が校内に張り出された9月末以降、
褒賞金について「髪を染めている学生に恩恵があって、まじめな学生にないの
はおかしい」「金で学生を釣るのか」などの批判的な意見が殺到。
 図書カードに替える案も検討したが、「人間教育の一環と位置付けた禁止措
置の趣旨が曲解されるのは本意ではない」と褒賞金の実施を断念した。
                   【読売新聞 2006年10月14日より】
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 ──結局「決定」に踏み切る信念がなかったのなら、ここは素直に「謝罪」
すべきではないでしょうか。それなのに同大学の表現(コメント)では、報道
に対する「批判」とも受けとれますね。
 確かに、当初報道された時点では「最終決定」はされていません。したがっ
てこの結末は『その事実を逆手にとって真実を隠した印象』があります。核心
は「決めようとした意向の存在」ではないでしょうか。これに批難が集中した
から取りやめた。報道と世論の批難が決定後であったなら、ここまで強気な姿
勢は見せられないはずです。いうなれば世論に助けられたわけですから、その
事実のほうを素直に表して「謝罪・感謝・方針転換」の路線をとるのが当然の
道といえます。


 人の行いは、ひとたび道を逸れるとどんどん転がり落ちるケースがあります。
この出来事は「同大学が悪者」のように受けとれますが、事の発端は一部の大
学生のあり方が問題なのです。それが、真実のもっと奥にある真実です。この
先さらに転がり落ちないためにも、それを徹底的に大学側も大学生も考えるの
が、本来「教育の場」のあるべき姿ではないでしょうか。