人物を決める | 交心空間

交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 物語『冬の花火』の解説(2)です。


 二つ素材「花火と宇宙」を決めた次は、この素材を生かしてくれる『人物』
を考えました。つまり「花火をする人は誰で、どんな背景(風景的と心情的)
で花火をしているか」です。
 元来花火は夏の風物詩で、情緒や楽しみをもたらしてくれます。ここで考え
たのが、ただ楽しむために花火をするのではなく、「ひとときの安らぎと夢を
見せてくれるから」という動機付けです。これをドラマチックになるよう膨ら
ませまて、「安らぎを求める人は誰か」を探りました……。
 結果、「仕事に疲れた人」に辿り着きました。勿論、他にもいくつか候補は
ありましたが、商談を横取りされたサラリーマンと、泡沫の夜を彩るホステス
が浮かび、『冬の夜、繁華街の路地裏で花火を接点にこの二人が出逢い、憂さ
晴らしと新たな活力をもたらしていく』という構図を考えました。
 繁華街の中だと華やかなので花火が映えません。しかし、場所(風景)を路
地裏に移すことで一転します。暗さと人通りのなさから「淋しいイメージ」が
漂います。ここでする花火なら「ひときわ映える」という意図です。また、花
火が「夏の楽しみ」としたら、その逆にあたる「冬なら物憂い」と考えました。
そして、暗さは「宇宙のイメージ」に繋がります。


 ショート作品とはいえ、大まかな流れの出来上がりです。ドラマ脚本なら、
これらからさらにキャラクターを明確にしたり、エピソードのネタ集めをしな
がら構成を煮詰めていきますが、いくつかのキーワードをイメージしつつ、大
まかな流れ(物語の骨子)を意識して書き始めることにしました。


----------------------------------------------------------------------
週刊ブログランキング ← 冬に花火をした人は1票投じてください。いないか…