小説『 人形と悪魔 <約束の章> 第一節 』 | SKILLARTGALLERY

小説『 人形と悪魔 <約束の章> 第一節 』


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■作品タイトル
『 人形と悪魔 <約束の章> 第一節 』

■作者
AZL

■スキルアート
小説

■作品
その街には腕のいい人形職人のおじいさんがいました。
おじいさんのつくる様々な人形達は評判で
わざわざ遠くの街から買いにくる人も少なくはありません。

今日もおじいさんは人形をつくります。

人形を作る事はおじいさんの仕事でもありましたが、
何よりおじいさんは孫娘が喜ぶ顔がみたいと思う一心で作っていました。

明日は丁度その孫娘が家族と共に隣の町から遊びにくる日です。
それに合わせておじいさんは孫の為に1体の人形を仕上げます。
その小さな人形は白い羽が背中についた天使のお人形です。
おじいさんは娘の喜ぶ顔が見たくて仕方ありません。
丁寧にプレゼント用の箱に包みと、大きなリボンをかけて準備をします。

おじいさんは仕事でどんなに疲れていても孫の顔さえみられれば元気がでてきます。
わくわくしながらその日は眠りにつきました。

けれども翌日になってもその孫はおじいさんの元を訪れませんでした。

おじいさんは少し心配になりましたが、きっと父親の仕事が忙しくなり、
こちらに来れなかったのだろうと思い、少し残念な気持ちになりながらも
仕事に取りかかる事にしました。

その日は人形の材料を街に買い出しに行った後、
貴族の女の子から頼まれていたお姫様の人形を作って1日を過ごしました。

そのお人形が完成する頃、1通の封筒がおじいさんのもとに届きます。
おじいさんはまた仕事の依頼だろうと何気ない気持ちで中身を確認すると、
それは家族からおじいさんに宛てられたものでした。

そこには孫が流行病で亡くなった事が書かれていました。
おじいさんはショックのあまり、手紙の内容をろくに確認もしないまま
その場に封筒を投げだすと居ても立ってもいられずに孫が住む街へと慌てて出かけます。

数日かけておじいさんは孫の家にたどり着きます。
そこには悲しみに明け暮れる家族の姿がありました。
主の居なくなった孫の部屋を覗くと、おじいさんからプレゼントされた人形達が
丁寧に飾られていました。

家族の話では女の子はおじいさんからの人形を一番の宝物にしていて、
よく友達にも自慢していたそうです。
ベッドの上で最後を迎えた時も小さな人形をその腕に抱えていたそうです。
家族からおじいさんにそのお人形を渡されます。

そのボロボロになった人形は、おじいさんが人形職人になる前に初めて作った
不細工で粗末な人形でした。

おじいさんは不思議に思いました。

この人形の事は確かに孫に話しましたがプレゼントした記憶はありませんでした。
未熟な腕で造られたこの人形は売る事も出来ないので、捨てる為に家の軒先にゴミと一緒に
置いていたものでした。

言われてみれば確かに置いていた場所から無くなっていましたが、
捨てるものだったので気にもとめていませんでした。

家族に詳しくこの人形の事を聞くと、家の外に捨てられていた粗末な人形を
こっそり女の子が持ち帰ったそうです。

おじいさんにはこの不格好な人形をどうして孫が持ち帰ったのかは解りませんでした。


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