羊飼いの贈り物 | SKILLARTGALLERY

羊飼いの贈り物

アメーバ作品No.012

羊飼いの贈り物

アメーバスキルアーティスト 

YUKI  


アメーバスキルアート

童話


アメーバメッセージ

被災地の方々の多くの人命が助かり、力及ばずながら優しさが届くことを祈るばかりです。

アメーバ作品


羊のハルは、四月が嫌いでした。

羊の毛を刈られる時期だからです。

ただ、ハルの毛は他の羊達と違って、上物の毛らしいのです。

そこへ、羊飼いのバズが、バリカンを持って羊小屋に入って来ました。


「お前達、おとなしくしてるんだぞ」

と、バズは、次から次へと羊逹の毛を刈っていきました。

ハルは、羊小屋の端の方で、体を小さくしています。

他の羊逹は、みるみる間に丸裸になっていきました。


「さあて、最後はお前だけだな」

バズはそう言うと、ハルの毛を刈り始めました。


「お前の羊毛は、上物だから高く売れるんだ。ヘへへ、今夜はパンじゃなくてステーキだな」

もう少しで刈り終わろうとした時、バズはバリカンの刃先で、指を少し切ってしまいました。

すると、ハルはバズの傷口を優しく舐め始めました。


「大したことない。大丈夫だ」

バズはそう言うと、残りの毛を刈り終えて、バリカンを置いたまま羊小屋を出ていきました。

その日の夜、冷たい雨が降っていました。

羊逹は、寄り添うように眠っていましたが、ハルは寒くて眠れませんでした。

足がガタガタして、まるで冬のようです。

そこへ、バズが置き忘れたバリカンを取りに、羊小屋に入って来ました。

バズは、寒そうにしているハルをチラッと見ると、バリカンを持って羊小屋を出ていきました。

夜もふけて、雨はいつの間にか止んでいましたが、寒さはそのままでした。

ハルは、羊小屋の隅で体を丸くしていました。


すると、ハルの体の上に、パサッと何かが乗りました。

ハルがよく見ると、それは新品の大きな羊毛ジャンパーでした。

とても暖かいジャンパーです。

ハルは、足の震えもなくなり、気持ちよく眠りにつきました。

バズは、暖炉の前でパンをかじっていました。


「ステーキは、また今度だな」

バズは、スープを飲みながら微笑みました。


(おわり)


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