奈良時代だったと思うけど、あの頃はまだ、たこ焼きが安かった
奈良時代だったと思うけど、あの頃はまだ、たこ焼きが安かった。買い物が終わってバスを待つ間に、母が「たこ焼き食べたいね?」と僕に問いかけた。兄弟の中で僕だけを買い物に連れていったことも珍しいことだったけど、「10個ぐらい食べるやろ?」と大盤振る舞いされたことが、僕を大いに驚かせた。母はかき氷を頼み、たこ焼きは1個しか食べなかった。僕は母が食べているイチゴのかき氷を気にしながら、生まれてきて抑制し続けた欲望の手かせ足かせを引きちぎってたこ焼きを食べ続けた。このあと、捨てられるんだろうか?線路で心中するんだろうか?天秤は、欲望よりも不安に傾いていく。バス停の売店で僕が少年サンデーを凝視していると、それも買ってくれるではないか。不安もあったけど、僕は今日の出来事をどうやって兄弟に自慢するか考えながら鼻を膨らませていた。僕を邪険にしていた母が、しばらくの間、僕にサービスをしたのには理由があった。ある日家族で県庁らしき建物まで行った。僕が書いた絵が貼ってあるではないか。