「実践的『哲学』入門」(前半) | 新人経営コンサルタントの奮闘記録-読書を通じての徒然日記-

新人経営コンサルタントの奮闘記録-読書を通じての徒然日記-

経営コンサルタントとして活動し、早5年目。そんな新人が、ビジネスという魑魅魍魎がうようよ跋扈する世界で活躍するために、自己研鑽・自己武装(『読書』)をしております。その記録を記載していきます。どうぞ宜しくお願い致します。

週刊東洋経済 2010/8/14-21
「実践的『哲学』入門」(pp.34-73)


「週刊ダイヤモンドが『Twitter』や『もしドラ』といった実務で具体的に使える特集を組むのであれば、我々(週刊東洋経済)は、『哲学』といった抽象度の高い特集を組む!」


週刊東洋経済の夏の合併号は「哲学」ということで、この特集で東洋経済は、ライバルとの戦略的差別化を上手に図ったのではないかな?と私個人としては、そう思っています(「抽象・教養」(週刊東洋経済)vs「具体・実務」(週刊ダイヤモンド))。


ただ、本当に学術的なリベラルアーツとしての哲学を扱えば、それこそ難解であるがゆえに、本誌読者のほとんどがついてこれない。


やはりと言いますか、そこは経済誌。「そんなことは十分に承知している!」と言わんばかりに、実務に有用であることを示す「実践的」という文言を付加しております!


では、どのように「実践的」なのか?ここでは、その点に少し触れたいと思います。ただ、それ以上に私にとって興味深かったのが、4つの思想を分類した「哲学ポートフォリオ」(なお、この用語は小生による造語)。従って、それも記したいと思います(記述は、こちらの方が厚いのですが(笑))。


また、どうも昨今は「哲学」が人気のようで(その背景として、マイケル・サンデル氏の存在を無視することはできませんが)。では、なぜ哲学が人気なのか?その理由とその哲学オリジナルの考え方、つまり「哲学的思考力」とはどういうもので、どのようにすれば身につけることができるのか?この点についても触れてみたいと思います。


なお、今回はかなりの量がありましたので、前半と後半に文章を分けました。


ということで、ここでは前半を記していきたいと思います。

どうぞ宜しくお願い致します!


------------------------------


【前半】
週刊東洋経済流「哲学ポートフォリオ」
現代の重要テーマを4つの主義で斬る!


【後半】
■哲学が人気を博す理由と「哲学的思考力」
■大前氏流「哲学的思考力の鍛え方」には要注意!


------------------------------


週刊東洋経済流「哲学ポートフォリオ」


では、まず初めに、夏の合併号の簡単な目次から。


--------------------


【目次】


■あなたは何主義?(p.38-)

■日本・世界の15テーマを「政治哲学」で徹底解明(p.41-)

■マイケル・サンデル教授 「正義と善」の哲学を語る(p.50-)

■大前研一が誌上講義! 「哲学的思考力の鍛え方」(p.58-)

■厳選!!哲学・思想書20冊(p.61-)

■ ティナ・シーリグ スタンフォード大学講師(p.66-)
  20歳で知っておきたい現代を生き抜く実践哲学

■あなたも参加する?「哲学カフェ」の熱い議論(p.70-)


--------------------


この目次を見て、個人的に触れないわけにはいかないのが、「あなたは何主義?」(pp.38-40)でしょう。


ここでは、北海道大学准教授・橋本努氏による著書『経済倫理=あなたは、何主義?』を参考に48の質問を用意し、読者がその質問に回答することで、自らがどのような思想傾向があるのかを認識させてくれます。


私自身は良くも悪くも、右でも左でもないと思っていたのですが(つまり、ノンポリ)、この質問によって、どうもそうではないらしいということに気づかされました。


そういう私自身の新しい発見もあったのですが、しかし何よりも「政治的自由度」「経済的自由度」といった2つの軸を設けて、思想(主義)を4つに分類し、ポートフォリオで図解している点はかなり新鮮でした(p.40)。


ここでいう4つの主義とは以下の通りです(4つの主義は、本文をそのまま引用しているのですが、どうもわかりにくいかもしれません。恐縮ですが、その場合は、是非本誌に直接目を通して下さい。その方が理解が増すと思います)。


なお、「政治的自由度」とは《個人の自由をどこまでみとめていいか》であり、「経済的自由度」とは《民間企業や市場にどこまで自由を認めていいか》になります。


----------

リバタリアニズム(自由至上主義:Libertarianism)
【経済的自由度:「高」-政治的自由度:「高」】


個人の自由を最大限に尊重。国家には最小機能だけ求め再分配(福祉政策)に否定的。「ネオリベラリズム(新自由主義)」を含む。極端な形は「アナーキズム(無政府主義)」


※主な哲学者・思想家:ロック、ハイエク、フリードマン、ノージック


----------

コンサバティズム(保守主義:Conservatism)
【経済的自由度:「高」-政治的自由度:「低」】


経済活動への政府の干渉は抑制する一方、政治的には家父長的な伝統的道徳観を尊重。「古典的自由主義」と「新保守主義(ネオコン)」の2種類。


※主な哲学者・思想家:シュトラウス、ベル、クリストル


----------

リベラリズム(自由主義:Liberalism)
【経済的自由度:「低」-政治的自由度:「高」】


政治的には個人の自由を尊重するが、経済的には「再分配」を重視。人類共通の「正義」を主張。宗教的に中立。「福祉国家リベラリズム」とも称される。「社会民主主義」を含む。


※主な哲学者・思想家:カント、ロールズ、ドゥウォーキン、セン


----------
コミュニタリアニズム(共同体主義:Communitarianism)
【経済的自由度:「低」-政治的自由度:「低」】


リベラリズムが主張する個人の権利や正義より「善」の優位を主張。宗教も重視。現オバマ政権が近い。極端な形としては「共産主義」「全体主義」。


※主な哲学者・思想家:アリストテレス、ヘーゲル、マッキンタイア、サンデル


----------


本誌にも記されていますが、「政治的自由度」「経済的自由度」といった2つの軸で4つの主義を分類してしまうのは、あまりに単純化しすぎで、細かい点を見過ごしてしまっているかもしれません。


ただ、大まかに自分自身の思想傾向を把握する上では、この2つの軸は効果的かと思います。ここは大変面白いので、もしまだ質問に回答して自分が何主義かを診断していない方がいらっしゃれば、それは少々勿体無いのでチャレンジしてみることをおススメします。


現代の重要テーマを4つの主義で斬る!


そして、次が本誌が「実践的」哲学であることを証明する箇所なのですが、それが《日本・世界の15テーマを「政治哲学」で徹底解明》(pp.41-49)。


4つの主義では、「消費税増税」や「労働規制」、「ギリシャ危機」といった現代の重要なテーマを、どのように認識し解決を図るのか?その点をこの箇所で簡潔に記されています。


現在解決しなければならない課題に対して、4つの主義はどう斬り込んでいくのか?つまり、どのようにアプローチし、解を見いだしていくのか?


ここが、本特集で「実践的」哲学と記される由縁です。


なかなか読みごたえがありますので、こちらも目を通すことをおススメします。


ただ言うまでもなく、読む際には「懐疑的思考」を忘れずに!全ての文章をまに受けることなく、「本当にそうなのか?」と考えながら読むこと。これも「実践的」哲学の基本ですよね。


--------------------


ここまでが前半になります。


繰り返しになるのですが、自分の思考傾向は4つの主義のどれに該当するのか?は是非試して頂ければと思います。


私にとって、この点を把握するだけでも、夏の合併号は大きな価値がありました。


まさか、自分がそういう思考傾向を持っていたとは思ってもいませんでしたので、皆さんにもそのような発見があるのではないかなと期待しています。


では、次回は後半に入りたいと思います。


See you next time!!


【哲学関連記事】

『哲学思考トレーニング』


【科学論関連記事】
『科学哲学』


【教養関連記事】

「合言葉は教養よりも実用性」

週刊 東洋経済 2010年 8/21号 [雑誌]/著者不明
¥690
Amazon.co.jp

経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ)/橋本 努
¥1,680
Amazon.co.jp