11月に、浪人時代で最大の出来事が起こる。


一つ目は当時付き合っていた彼女に振られたこと。

恥ずかしながら初めてちゃんと付き合った彼女。

彼女は、当時ひとつ下で、高校3年だった。

お互い受験生として励まし合っていたし、支えだったし、

なにより大好きだったのだ。


当時の俺はどうしようもないくらいショックを受けたものだった。

それこそ世界が終わるんじゃないかって勢いで落ち込んでいた。


そしてなにより一番問題だったのは、

彼女がすでに、推薦で某有名私立大学に進学を決定していた事だった…。



「これで大学にまで落ちたら、俺最高に格好悪いぞ…!」


正直彼女に負けたくないという気持ちが生まれてきていた。

「絶対見返してやろう!」

そう決意した。


ダラダラ目先の楽しみばかり追いかけていた俺にとって、

この出来事は意識を変える大きな出来事となった。


この悔しさをばねに、勉強の決意を新たにした矢先、

更なる出来事が起こった。




それは父親の失業だった。



いつどうなるかわからない時代。

家族の為に懸命に働いていても、いとも簡単に積み上げたものが崩されてしまう。


社会に対して漠然とした不安。

今いる環境の不安定さ。

これからの自分に対する危機感。


そんなものが徐々に自分の体を覆っていくのがわかった。


同時に、

今までいかに自分が甘えていたのか。

何も考えないで生きていたのか。

好きなことばかりやって生きてきたのか。

そんなことを感じた。


父親は昔から俺に何一つ将来に対する口出しをしなかった。

高校に行けとも言わなければ

勉強しろとも言わない。

そういう意味では珍しいタイプの親だと思う。

友達同士のような親子関係は、

ある意味ではとても放任主義的だった。


そんな父親が始めて息子に将来に対する要望を口にした。


「大学に行け」



それは、


本気で勉強することを決意した瞬間だった。



続く、、、。