ACT205妄想【23】 | 妄想最終処分場

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10/19発売の本誌ACT205の続き妄想です


2ヶ月もあいてしまった上に、どんどん当初のテイストとずれて行ってしまう。

行きつく先が軽くなってしまってどうにも纏まりませんがこのままいきますー。








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ACT205妄想【23】



「魔法でも、夢でもないよ」


動きを止めたキョーコの手から、ころりと蒼い原石が転がり落ちる。蓮は自分の足元に転がってきた石と、キョーコの体の上に落ちたままだった対照的な桃色の雫も一緒に拾い上げた。


「現実なんだ。ちゃんと俺を見て。許されることじゃないけど、謝らせて?」


拾い上げた蒼い原石は朝日を浴びて菫色に輝き、桃色の雫と寄り添うように蓮の手の中に納まっている。蓮はその二つをごとキョーコの手を包み込んだ。


「コーンも、プリンセス・ローザも…君に持っていて欲しい。君の笑顔を願って俺が贈ったものだから」

「え…、あ…の……」


混乱から思考停止したキョーコに蓮は苦笑した。


「最上さん、夢じゃないんだ。…最初に夢に逃げ込んだのは俺の方だけど」


溢れた恋心と、触れた相手を欲することを止められなかったあの日、キョーコが苦しまないようにと熱に浮かされたあの時間を夢だと囁いたのは蓮の方だ。でもそれは、キョーコのためと言い訳しつつ現実を見れない自分への言い訳だった。


「敦賀…さん?」


最上さんと自分を呼ぶ声に呼応するようにキョーコの口から声が零れ落ちた。


「うん」

「コーン?」

「…うん。そうだよキョーコちゃん」


キョーコは自分の問いかけに両方とも頷いて答える相手に目を瞬かせた。


「…コーン…?…敦賀さん…?…目はコーンの色なのに、他は敦賀、さん…?あなた、誰?」


「…久遠」


蓮は一呼吸置いたのち、自分の本当の名を口にした。


「く、おん?」

「そう。俺の本当の名前。昔もそう名乗ったつもりだけど日本語のヘタだった俺の発音は幼い君の耳にコーンって聞こえてたんだよね」

「むかし?」

「この石を渡した時だよ。昔…京都の河原で。君は俺をコーンと呼んで、妖精だって信じてた」

「敦賀さんが……コーン…?」


ようやく繋がったらしいキョーコからの疑問に蓮は頷く。


「黙っててごめんね。この石を拾ったあの時から、俺は君がキョーコちゃんだって分かったのに、ここで自分の力で生きるために過去は持ち込まないって決めてたから打ち明けるつもりはなかったんだ。でも…」


一度区切り、一呼吸おいてから蓮の言葉は続いた。


「素の…久遠の姿で君と会ってしまって、コーンとして駆け寄ってきてくれたのが嬉しくて。でも君の叶わぬ恋を聞いて苦しくて…。君が欲しくてたまらなくて、過ちを犯した。ごめん…ごめん、最上さん。君をこんなにも苦しめて、謝って許しを請うことではないのはわかってる。でも…」


自らが贈った二つの石ごとキョーコの手を握りしめた蓮は懺悔するように顔を伏せた。


「止まらなかった。俺じゃない誰かを想っていても君に触れたら……」

「敦賀…さん…?」


敦賀さんと呼ばれ、蓮は罪悪感を振り切って顔を上げてキョーコを見つめた。


一番大切な言葉を伝えるために。


「最上さん、君が好きなんだ…。俺の過去や覚悟なんかより君を欲する気持ちを止められなくて、大切にしたい君を傷つけてしまうほど」


意を決して紡ぎ出した台詞に、キョーコの息を呑み込む音が聞こえた。もう後戻りはできないと覚悟した蓮の口からは次々と言葉が迸る。


「愛を否定する君に愛される自信なんてなかった、だったら一番身近な先輩でいいから近くにいたかった、醜い俺を知られたくなかった、今の関係を壊したくなかったんだ!」


叫びと懇願に近い蓮の声に、キョーコは茫然と目を見開いていた。


「………私…?」

「こんなに惨めで愚かな感情だけど、君を想う気持ちを持て余している」

「……う…そ」

「嘘じゃない。最上さん、キョーコちゃん…君が好きだ」


逃げずに真っ直ぐ絡めた視線は、キョーコの方が耐え切れないとばかりに俯いて分断された。カーテンの隙間から零れる光で仄かに明るくなった部屋で、蓮はじっとキョーコを見つめていた。その手は二つの石ごとキョーコの手を離すまいと握り続けている。

しばらくの沈黙の後、蓮の耳にわずかに空気を震わせる程度の小さな音だったが、確かにキョーコの声が伝わってきた。


「…………怖かったんです。好きな人がいるのを知ってたから」

「…うん」

「………だから、一番近い後輩の自分を失いたくなかった」

「…俺も今の関係を失うのが怖かった」

「…でも、気持ちが止まらなくて…コーンの優しさに縋って身代りにしたんです」

「…身代りでもいいからって求めたのは俺だよ」

「…こんな汚くて、卑怯で…っ」

「卑怯なのは俺も同じ」


いつまでも続きそうなキョーコの言葉を遮ったのはやや強い口調の蓮の声だった。


「俺も卑怯なんだ。許されないと自分で言ってるのに謝って。そして今だって期待してる」

「……期待?」

「俺が君を想うように、君が俺を想ってくれてるんじゃないかって」

「………っ」


途端、キョーコの表情が強張った。


「君が会いたい気持ちが止められなくてここに来たって言ったこと、後輩として側にいたいと言ったこと」

「…………」

「俺に好きな人がいるって君には話したことがないと思っていたから、君が好きなのは俺じゃないんだって思ってた」

「え…?」

「あの鶏君は坊っていうんだね。恋を理解できない俺にアドバイスをくれたのは、君…だよね?本人に相談してたなんて。あの着ぐるみの中身が君だなんて想像してなかったよ」


思いがけず出てきた単話題にキョーコは目を泳がせる。色々と不都合があって蓮には内緒にしていた坊の仕事に後ろめたさが湧き出してきたのだ。


「ねえ、最上さん。俺は鶏君に相手はどんな子だって言ってた?」

「………こ…高校生…で」

「君も高校生だろう?」

「……4つ、年下…で」

「俺と君の歳の差は4つだろう?君は役者の命が惜しければ落とせって言ってたね」

「で、でも…っ、敦賀さんの好きな人って『キョーコちゃん』じゃ…」

「それは君の名前だろう?…あれ?でも俺は鶏君に名前まで言ってなかったんじゃ…」

「敦賀さん風邪をひいたときに神々しい笑顔で『キョーコちゃん』…って。愛おしいと思っている、嘉月の…美月を見る表情と同じでっ。その時、敦賀さん私のことようやく名前で最上さんって呼んでくれるようになったくらいで…っ」

「石を拾って君がキョーコちゃんだって気が付いた後だったからね。無意識って怖いな…自覚してないそんなころから君を気にしてたのか…」

「………」


キョーコの言い分をことごとく反論するように覆していく蓮に、キョーコはついに黙り込んでしまった。


「………なんですか、コレ…。意地悪というか、いじめっ子というか…。コーンは優しいのに…」

「だから、俺も卑怯だって言っただろう?」


とうとう絞り出された台詞に蓮は小さく笑った。先ほどまでお互いを卑下して懺悔しあっていたのに、射し込む光とともに妙な軽快さが入り混じる。


「俺が君にしたことは許されることじゃない。でも、君も俺と同じ想いを抱いててくれるなら…って期待してる」


小さく笑みを零した後、真剣な目で蓮に射抜かれてキョーコは身動きが取れなくなった。


「ねえ、最上さん。君の口から君の気持が聞きたい。卑怯で甘い期待を持つ俺に、審判を下して?」


朝日に照らされた部屋で、蓮の懇願にキョーコの視線は彷徨い宙を泳ぐ。


「君が好きなんだ。君の気持を聞かせて」


黒髪に碧眼の見知っているけど見慣れない想い人を前に、キョーコはようやく覚悟を決めた。




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一回に入りきらんかった…。尻切れトンボ気味ですがここで区切ります。

途中の重さに対してそれでいいんかー!!??というお叱りが聞こえてきそうですが耳をふさぎます・・・。もうテイストがかわりまくり!!