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高峰は、鷹のような警察人生を送ってきたのだと思う。空高く舞い、常にアンテナを張り巡らせ、獲物を見つけたら急降下で地上戦に入って仕留める。体力と精神力が削がれる戦いこそが狩り(捜査)なのだ。それなのに、ずっと続けていないとだめになってしまいそうな焦燥感に襲われ……鷹も、時には休むことが必要だろう。
歳を重ねたからではない。明日からの新たな戦いに備えてだ。「後輩に道を譲れ」と言われてもおかしくないが、なに、俺がどかないのは後輩たちがだらしないからだ。
俺たちを超えて飛べ-鷹の休息が終わったその日に。
定年を後に控えた同期の2人、捜査一課ナンバー2で理事官の高峰と主に公安畑を歩いてきた目黒中央署署長の海老沢。
飛翔弾事件の容疑者であった4人の被害者は元左翼の活動家だった。
捜一と公安との確執を織り交ぜて、過去の公安事件に関連する被害者の事件を追うこととなった。定年間近の警察人生に想いをはせながらときが過ぎていき犯人を追い詰めていった。
過去の事件から経過した時間が長く、そこまで恨みを長く継続するのは難しいもの。
終わりには解決に導かれていくのだが、変わり映えもなく物語が淡々として流れていった。それはそれでこれでこれでよい刑事ものだった。
<目次>
第一章 過去を殺す
第二章 つながらない糸
第三章 消えた男
第四章 警戒警報
第五章 襲撃
第六章 二十三年
堂場瞬一さん
1963年茨城県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年「8年」で第13回小説すばる新人賞を受賞。2013年より専業作家となり警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている