-------------------------------------------------

 誰しもが「後悔している」って経験あるよね?


 僕は中学生のときの経験で心が痛み続けている事があるんだ。
懺悔として告白するね。

 僕の中学校の近くに廃墟となったレジャーランドがあってね、なかのアトクションのメリーゴーランドや塔はそのまま放ってあった。で、いつの頃からか「土曜の夜に、あのレジャーランドの塔の一番上のバルコニーに立っていると霊が現れる」という噂があったんだ。

 僕はその噂を同級生の好奇心旺盛で霊現象に関心があるAに話した。

 Aは「へぇ、じゃ、俺がチビの頃に死んだ父さんに会えるかも」と嬉しそうに言っていた。Aは母子家庭だ。

 週末の夜、お母さんには「ちょっと出てくる」と行って家を出て、塔の一番上のバルコニーに立った。そしたら目の前に男の人が現れた。Aのお父さんだ。Aのお父さんは「大きくなったな」と嬉しそうに言ってAのほうに手を伸ばした。

 「父さん、父さんだ」とAも喜んでお父さんに手を伸ばして体を前に出した。

 帰宅しないAを心配して、Aのお母さんは警察に捜索願いを出して、Aは塔の下で仰向けになって死体として発見された。バルコニーから落ちたんだ。

 Aのお葬式に行ったけど、お母さんの心労でやつれた顔がかわいそうだった。Aのお母さんは参列した子供達に「貴方達は幸せに大きくなってね」と言ってたな。優しいお母さんだ。


 僕はAのお母さんとはその年の前にも顔を合わせている。
夏休みのある日、おじいちゃんの薬をもらいに病院に行ったときだ。帰りがけに1階のロビーにいる女性に声をかけられた。「あら、あなた、Aと同じクラスの・・・教室まで連れて行ってくれた子よね」。その顔には見覚えがあった。Aのお母さんだ。夏休み直前の懇談会の日に、廊下で教室を聞かれたから僕が案内したんだ。

 

 Aのお母さんは「Aの見舞いに来たんですよ」と話した。

「A君が入院!ケガの具合どうなんですか?」と僕が尋ねると、Aのお母さんは「たいした事ないの。軽症だけど念のために精密検査したほうがいいだろうってことで入院してるの」と彼女は言っていた。


 僕達はもう一度エスカレーターでAの病室まで行って一緒に入った。

「A。今、下でお友達と会ったのよ」とAのお母さん。

Aは僕に笑いかけた。僕もにっこり笑った。おでこと腕に絆創膏を貼ってあるけどたいしたケガでもなさそうだ。


 Aのお母さんは「横断歩道で信号待ちしてたら、すごい勢いで後ろから当たられて道路に出ちゃって車に当たったって。危ないわねぇ」と話していた。


 そんな事を思い出しながら家に着くと、おじいちゃんに「A君のお母さんの様子どうだった?」と聞かれた。

 

 「顔色悪くてね。やつれていたよ」と僕が答えると、おじいちゃんは涙を浮かべて「かわいそうにな。A君は母子家庭だったんだろ。息子が支えだったろうに・・・」とうつむいて小さな声で言った。

 ・・・あれから長い年月が過ぎた。Aのお母さん、元気を取り戻して幸福になっているだろうか?今でも僕はAのお葬式の日、お母さんに、「A君はお父さんのいる天国に行ったんです。ふたりで天国からでお母さんを守ってくれます」。そう言って慰めれば良かったと思ってる。
 すっかり大人になった今だったらそう言ってるけど、まだ子供だったから気が回らなかったなぁ・・・。後悔してるよ。

 これで僕の懺悔の話はおしまい。

---------------------------------------------------


さて、いくつ怖いところが見つかりましたかな?かな?