「海岸や川の河口近くから離れて近づかないでください! 様子を見に行かないでください!」
切迫したアナウンサーの呼びかけに早朝のお茶の間に緊張が走った。
17日午前8時6分ごろ東北地方を襲った地震。NHKは津波注意報の発令を受けて、連続テレビ小説「マッサン」の放送を中断、スタジオのアナウンサーが被災地の住民に繰り返し避難を促した。
気象庁によると、震源地は岩手県の宮古から東へ約210キロの沖合で震源の深さは約10キロ、規模はM6・9と推定。青森、岩手、宮城、秋田の4県で震度4を記録し、岩手県の久慈港で20センチ、宮古で10センチの津波を観測した。
それから5時間40分後の午後1時46分ごろ、再び強い地震が襲った。青森県で震度5強を観測。震源地は岩手県久慈市から東へ約30キロの沖合で、震源の深さは約50キロ、規模はM5・7と推定される。
いずれも東日本大震災の余震とみられ、気象庁は「今後1週間は震度5弱程度の余震が起きる可能性がある」と警戒を呼びかけた。
巨大地震はいつきてもおかしくない-。これが地震学会での共通認識だが、地震調査委員会が昨年末に公表した「全国地震動予測地図」最新版(2014年版)をみると、それを再認識させられる。
昨年1月時点で、今後30年以内に震度6弱以上の強い揺れに見舞われる確率を、都道府県庁所在地ごとに示したもので、「想定外の巨大地震となった東日本大震災の反省を受け、計算手法を変更し、プレート(岩板)境界で起きる海溝型地震や内陸の活断層地震の予測を基に弾き出している。新たな研究成果や地盤の最新データも反映した分析となっている」とは気象庁関係者。
特筆すべきは、M7級の首都直下地震が懸念される首都圏の確率が大きく上昇した点だ。
横浜は前回調査(13年版)から12ポイント上昇して78%となったほか、千葉も6ポイント上がって73%。上昇幅が特に高いのが、東京とさいたまで、前者は20ポイント増の46%、後者は21ポイント増の51%となった。
夕刊フジで「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」を連載中の武蔵野学院大学・島村英紀特任教授(地震学)は、「首都圏の地下は、江戸時代の300年間で17回もM6~7級の大地震が発生している。ところが、1923年の関東大地震以来、ぱったり大きな地震が起きなくなった。むしろ、ここまで動きが沈静化しているほうが異常だ。東日本大震災以降、地震の活動期に入った現在では、いつ巨大地震が起きてもおかしくない状況が続いている。今回のデータはそのリスクを改めて示した形だ」と指摘する。
「全国地震動予測地図」では、M8~9級の「南海トラフ巨大地震」が懸念される西日本の各地でも高い確率を示している。巨大津波の被害が想定される高知は前回調査と変わらず70%の高確率を維持し、和歌山は4ポイント上昇の60%。上町断層帯などの活断層が延びる大阪は45%となった。
今月6日には、徳島県南部を震源とするM5・1、震度5強の直下型地震が起きているだけに不気味さは募る。
島村氏は「過去に発生した南海トラフ巨大地震では発生前に、先の徳島の地震のような直下型地震が何度か起きている。巨大地震の明らかなさきがけで、警戒は怠れない」とし、こう続ける。
「今回の(政府の)調査で高確率を示した地域はもちろん、発生確率が低い地域も油断はできない。特に危ないのは東日本大震災が起きた三陸沖の周辺地帯だ。17日に起きた2回の海溝型地震はいずれも警戒エリアの北端を震源としている。南側では、房総沖や茨城沖で中規模の地震が頻発している。巨大地震を起こしたプレートのひずみの影響で、大規模地震が起きやすくなっている。今回の地震は、1つの警告と捉えたほうがいい」
“その時”への備えが急務だ。