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青に届け



時間と空間の両脇には縄を持つ人がいて

その間で縄跳びをします

客観的にその距離と縄のスピード飛び込むタイミングを計ります

その一歩が一秒 あるいは一日 あるいは一年の場合もあります

けれどもそれはいずれにしても「今」に変わりはありません

測ることのできぬ見えない距離を目を瞑って

えいっとばかりに飛び越えるときもあります

その一歩ずつに広がる世界と逢うために

何度も 何度も トライします

上下運動は実在と不在の往復です

言い換えれば 生と死の狭間を行きかう呼吸のようなものです

吸って

吐いて

吸って

吐いて

そのうちにそこには白い雲のようなものが発生し

雨が降ったり 雷が鳴ったりします

なぜ このようなものが生まれるのか

世界は ぼくになにをさせたいのか

よくわかりません

ぼくはもっともっと高く飛びたいのです

野うさぎのように

縄を飛び越えて

言葉を超えて

時間を超えて

空間を超えて

生の大気圏と死の闇との狭間の

その境界にある膜のようなものを突き破って

その中に溶け込んで

海綿のようにでこぼこした 

このぼくの隙間に

あの 青空の 「青」を

吸い取ってみたいのです

ジャンプッ

野獣



いくつかの傷を負いながら野獣は戦っておりました

一面の緑の平原で横たわり傷ついた足や腕を舐めては

疲れた体を引き起こし大地を踏みしめ立ち上がります

遠い黄金のビクトリアへ思いを馳せる野獣の目には

戦うたびに沸々と湧き上がる自信の炎が燃え滾っておりました

その行く手に傷ついた1頭のケモノ

野獣にしてみればまだ子供のような生き物でありました

ケモノは牙を剥いて野獣の前に立ちはだかりました

野獣の目に優しさなど微塵もありません

怒りもありませんでした

ただ自分の首に喰らいついてきた小さなケモノを振りほどき

一層爛々と燃える瞳で見下ろすと

有無も言わさずその小さな肢体に噛みつきました

一瞬の出来事でした

全ての腱を噛み切られたケモノは血の気を失い

自分が何のために戦っているのかわからないかのように

意識のない真っ黒い瞳で野獣の牙を見つめておりました

首根っこを噛まれ それでも虚空に向かってもがいているケモノ

野獣はその牙を緩めず離そうとはしません

やがて遠く緑の平原の向こうに黄金の太陽がのぼり

野獣とケモノの肢体を照らしはじめました

どさりとケモノの体が落ちました

ケモノは意識を取り戻し太陽に向かって吼えました

ですが立ち上がることはできません

野獣はその顔をぺろりと舐めると

黄金に輝く太陽に向かって歩き出しました

ケモノは無数の傷跡を野獣の背中に見ていました

その盛り上がった背中のたてがみは

一歩踏み出すたびに

ますます眩しいほどに輝いていくのでした




やもり

なんかちょっと不思議なことがあった。これ実話。
4日ぐらい前、朝起きていつものようにキッチンの換気扇のあるところで
タバコを吸っていた。ふと玄関を見ると、天井に動くものがいる。
小さなヤモリだった。
別にいてもいいけど、と思ったけど殺虫剤を吹き付けた蚊の死骸とか食べたら
よくないなと思い、逃がすことにした。
ゴミ袋を手に靴箱の上にあがって、ゆっくりヤモリを包もうとした瞬間
ぴょんと飛んで、靴箱の裏に素早く逃げ込んでしまった。
まあいいか、あんまり追っても怖がるだろうとほっといた。
ずいぶんヤモリなんか身近でみてなかったけど、目が大きくて可愛かった。

んで、その夜、同じところでタバコを吸っていたら、また天井の隅に出てきた。
よーし、今度こそはと前より大きめの袋を持って、トライしたがやっぱり逃げられた。
しょーがねーな、外に出してやるっちゅうに、とぶつぶつ言いながら
その日はあきらめて寝てしまった。
それから2日間、ヤモリの姿は見えなかった。靴箱の裏も懐中電灯で照らして
探したけどいない。

んで、3日めの夕方。ヤモリのことは忘れていた。
キッチンにタバコを吸いに行き、灰皿を寄せようとしたら、なんとヒョロッとヤモリが
灰皿の影から出てきた。
おまえ、こんなとこにいたのか、と呟いて身近にあったザルを台の角に持っていくと
チョロチョロっと動いて一瞬俺を見たかと思うと、ひょいとザルの中に入っていったのだ。
そーかそーかとなんだか嬉しくなって、窓を開け、ザルを表に出したら、外の窓枠に飛び移って
あっという間に消えてしまった。

なんてことはない話だけど、なんであいつはあそこにいたんだろうと、今思うと不思議に思う。
毎日、同じ場所で俺がタバコを吸っているのを知って、わざとそこにいたんじゃないだろうか。
そうとしか思えない。外に出してやる、と言った俺の言葉が通じてたのかもしれない。
なんかそう考えるとちょっとウレシイので、そういうことにしておいた。

その夜、台風が来て激しい雨が降り出した。
おれは、ちょっと外に出したことを後悔した。
ヤモリって家守って書くんだよ。だから住み着いて欲しい気持ちもあったけど
今の家って窓を締め切っちゃうからな。住みにくいと思う。

またね。ヤモリくん。





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