新入社員 | ■■■現役商社マン/武浪猛の商社マン流人生指南■■■     若き血に燃ゆる者たちへ!

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このままじゃ、日本国は滅亡の国家に成り果てる。 世界の中で揉まれてきたオレは、オレ流の武士道というものを育んで来た。オレの言葉が、少しでも君ら若者の心に刺さればと思って、オレはこのサイトを立ち上げた。 さぁ、この国を元気にしようじゃないか。

読者からの質問だ。

「ブログを拝見させて頂きました。既に30代後半で新入社員を受け入れる側になりますが、興味深くブログを拝見しました。


失礼を承知の上でのメッセージですが、***にお勤めの方ではないですか。知人にも連絡し、もしかしたらあの方ではないかと色々と推測し、楽しみながら読ませてもらいました。

今年の新入社員は如何ですか。採用試験も始まる頃かと思いますが、今年の総合商社志望の学生さんは如何ですか。

そういった話がブログに登場するのを楽しみにしています。」



たまに来る問い合わせだが、***はオレの方で伏せさせてもらった。オレがどこに勤務しているかというのは、たいした話ではない。所属先でオレのメッセージの重さが変わるものでもないからだ。オレは他の誰でもない武浪猛として、メッセージを発している。
そんなわけで、今後も、もしかしたらあの方ではないかと色々と推測しながら楽しく読んで頂きたい(笑)。


さて、社会人諸君は恒例の新人配属が一段落した時期だろうか。初のボーナス月でもあるな。今年度は、不幸なことに、オレの部署には新人が入らなかった。これでますます部署の平均年齢が増加してしまう(笑)。人事部には、来年度は是非、新入社員をオレの部署に配属して欲しいと思っている。


なぜ、オレが新人を求めるのか。何よりも、やはり新人は部署に活気を与えてくれる。どうしても日々同じメンバーで仕事をして、一緒に出張なんかしていると、良い意味で阿吽の呼吸もあるが、悪い意味ではマンネリ化が生まれてしまう。オレの部下たちなんて、口には出さないが、「また猛さん、この前と同じ話を始めたよ」としんどく思っているかもしれない(笑)。自部署がマンネリな雰囲気になって来たら、要注意だ。こんな雰囲気のところに、たとえ新人でも、いや真っ白な新人だからこそ、まったく新しい異文化を持ち込んでくれる。


マンネリについて書いたが、記憶力の悪いオレが、いつもと同じ話をするぐらいならかわいいものだが(部下はそう思ってないかもしれないが・・・)、組織の意思決定の場面でのマンネリ化は、危険極まりない。


だが、どうしても「雰囲気、空気による意思決定」というものが存在するのが現実だ。


これは俗人的な要素で決まることが多い。例えば「XX課長がそこまでおっしゃるなら・・・」「○○くんが心血注いでここまでやったんだから、今更この案件から撤退できない」などの発言だ。これを表立って言うこともできないから、後からそこに何らかの合理性的なものを見出し、もっともらしく飾るのが、雰囲気による惰性の意思決定だ。


もう少し例をあげたい。オレがビジネスでAという市場を狙っているとしよう。オレが会議でMBA仕込の強烈なプレゼンテーションをすると、普通は部署の連中は皆、萎縮してしまう。この空気に釣られて、B課長は

「猛さんがそこまで強い想いがあって勝算があるとお考えなら、やってみない手はない」

と発言する。それに乗っかって、C部長代行も

「そうだな。やる方向で進めてみることで異議はない」

という話になる。



これを受けて、若手のK君はA市場の成長性、規模など詳細を調べ、

「現段階においては規模は小さいものの、欧米大手企業は工場新設を加速しており、今後の市場の成長性は高い。現状、他商社は未だに同市場に進出しておらず・・・」

などともっともらしいことを社内文書で書いて、分厚いEXCEL分析シートをくっつけて、一見すればとても論理的な資料にまとめてくれるわけだ。流行のロジカルシンキングなんて、この程度のものだ。


ロジックを勘違いしている連中が多いようだが、表面だけロジカルなアウトプットなどいくらでもある。パワーポイントやエクセルの普及やら、ロジカルシンキング研修のせいで、こう言う一見こぎれいだが中身の無いアウトプットばかり出す輩が増える一方なのが、嘆かわしい。重要なのは、ロジカルかどうかなんてどうでも良くて、本当に知恵熱が出るほどに考え抜けるかにかかっている。


話しを戻すと、本来であれば、オレのプレゼンに対して、要点をついた問いが投げかけられて、市場Aの状況構造を深く読み解き、状況が変わった場合どう対処するか、競合他社と戦って詳細があるのかなどについて、ハイレベルなディスカッションを繰り返しながらチームメンバーで磨き上げて行った上で、最終判断をするのが、本当の意思決定プロセスのはずだ。


残念ながら、こう言う闊達な議論をベースにした意思決定方法は、日本の組織の中ではまだ少ない。会議出席者には極めて高いレベルの思考力が要求されるが、このような訓練を日本ではなかなか受けられない。何より教えられる奴もいない。


上の例では、オレのプレゼンテーションに萎縮してしまい、迎合した発言をしたB課長とC部長代行が「雰囲気、空気」による意思決定を助長してしまった。しかし、そこで誰かが臆することなく、


「猛さん、一つ質問させてください。具体的な市場Aの成長率の見込みと、我々の競争優位性はどこにあるのでしょうか?」

と質問してくれてこそ、本当のディスカッションのスタートだ。こう問われて、オレも自分の説明に不足があったこと、もしくは考えに漏れがあったことを自覚できる(さすがに、上のレベルの問いが漏れるほど、オレも落ちぶれてはいないが)。


注意したいのは、上のような鋭い質問は、あくまでオレのアイデアに対する疑問であって、オレの人格否定ではないと言うことだ。どうも、日本人の多くは、意見と人格を混同してしまいがちだ。昔の記事でも書いたかもしれないが、海外での交渉の場面では、時に追い込んだり、シラを切ったりした後でも、ディールが成立すれば、一緒に楽しく飲みに出かける。




こんな本気の戦いをしたからこそ、お互いの実力やプロフェッショナリズムに敬意を表することができて、敵がライバルに、そしてライバルが戦友になる。


こう言う仲間を世界中に持てた時、オレは商社マンになって良かったと心から思える。




オレから先輩社員にお願いしたいのは、どうか新人教育という名の下で組織の雰囲気に染まるような教育はやらないで頂きたい。これでは教育ではなく、洗脳だ。ビジネス知識や、基本スキル、社会人としての常識というハードな面の教育は効率的に行い、人としてどう考えるべきか、組織とはどうあるべきかなどのソフト面は、一人一人が自分で掴み取らせるようにして欲しいと言うのが、老兵からのお願いだ。日本が今後さらに世界に打って出て行くときに必要なのは、若者の恐れを知らぬ勇気と独創的なイノベーティブマインドだ。それを摘んでしまうような価値観の押し付けは、絶対にしてはならない。




また、逆に読者にもいるであろう新入社員に伝えたいのは、

「知識と良識は徹底的に吸収しろ、ただし魂だけは売るな」

と言うことだ。


人としての考え方、価値観は君だけのものであり、人の影響は受けるかもしれないが、強引に変えさせられる権利はない。また、無防備に全人格的に誰かを信奉するのも危険だ。世界に一人しかいないキミと言う人間の人格は、自分で生き抜いて自分で獲得するしかないのだ。





こういう自立した考え方だと、会社に入ってから多くのバッシングをうけるかもしれない。依然として日本の一部の組織は、郷に入れば郷に従え、組織への滅私奉公であり、雰囲気、家族感が重要視される。しかし、こんな旧態依然とした組織は、今後、次々とグローバル化のハリケーンに吹き飛ばされる。



組織内部の波風など吹き飛ばして、世界の嵐の中で打ち勝つ、耐え忍ぶ強い精神力を持って欲しい。言っておくが、グローバル・ビジネスの現場はもっともっとタフだ。




最後に、質問をくれた方から「今年の新入社員はどうか」と聞かれていたことを今さら思い出した・・・。

つい熱くなってしまうオレには、よくあることだ(笑)。ここまで読み進めてきたオレの部下たちは、

「猛さん、また質問と的外れなことを言ってるよ・・・」

と心の中で思っているのだろう。



この的外れだけど、時に鋭いことを言うのが、オレらしいクリエイティビティだと、オレは思っているが(笑)。




質問に端的に答えよう。そもそもオレは「最近の若者は・・・」と言う論調が大嫌いだが(こう言うことを言われた若者職は、どうか「最近の老人は・・・」と言い返して欲しい)、一つだけ確かなのは、オレの新入社員時代に比べれば今の若者の頭脳は100倍優秀だ。


社会の複雑性がまったく違っている現代を生き抜いているだけのことはある。オレなんて、女のコにモテたい、良い服を着て美味しいものが食べたいと言う単純明快な田舎根性だけで突っ走ってきたからな(笑)。




そして、この100倍優秀な若者が大きく飛躍するかどうかは、我ら先輩の肩にかかっていることを肝に銘じるべきだ。



Takeshi


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