最後の授業が終わると、同時に終わりのチャイムが鳴った。
生徒は開放されたかのように早足で教室を出る。
「んんっ…、やっと授業終わったー!!」
私はズレ下がった眼鏡のブリッヂを上げ、教科書を鞄に詰め込んでいく。
「お前さぁ、教科書くらい学校に置いていけば?鞄重くて帰るの苦労してんの自分じゃん。」
「良いの。私は龍太と違って家でたっぷり予習してんの!こう見えても、私成績は龍太には
負けてないから!!」
「はいはいわかりましたよ優等生さん!」
生徒たちは部室へ向かう中、私達は下駄箱へと向かい家へと帰った。
*
「ねえ、茶斗 幸田って一年にいたっけ?」
「さぁな。まだ入学したばかりだから他のクラスまでは知らねぇ。」
「あの人、"ハンターBrown"って言ってたけど…。」
「なんだそれ。留亜は知ってるのか?」
「うん。まぁ…。SEIRENの中でも一番とも言われる狙撃手。なんか、一度も外したことないらしいよ。
それに、大会でも結構ランキング上らしい。」
「へぇー…。それって結構凄腕なのか。」
「まあね。あの"ハンターBrown"は、狙撃タイプのアバター使ってるけど、狙撃って一番難易度が
高いのよね。」
私達は、今日の休み時間にあった出来事について話していた。
あの"ハンターBrown"と手合わせできると思うだけで、心がわくわくしていた。
「あれっ…?留亜達ここの道なんだ。」
ふと振り返ると、後ろに桃色の髪をした見慣れた顔の少女が走ってきた。
「うん。そうだよー。」
「崎谷もここの道を通っているのか?」
「ううん。今日はちょっと用事があって…。」
「へー、そっか。」
「ねぇ、留亜。部員の件についてなんだけど…。」
「ああ、それなら大丈夫!」
「…え?」
琴根はポカンとした顔をし、私を見つめていた。
「茶斗 幸田。知らない?こーんなちっこい奴。A組なんだけど。」
私は、腕を使って茶斗 幸田の身長や性格や外見について琴根に説明した。
しかし、琴根は首を傾げたり横に振ったりと、どうやら茶斗 幸田については知らないようだった。
「ごめんね。私も他のクラスについてはまだわからないの。でも、新しい部員が増えて良かったね!」
琴根は、小さなガッツポーズをして喜んでいた。私以上に。
「あ、じゃあ私こっちの道だから。じゃあね。」
琴根は小さく手を振り、小走りで人混みの中へと消えていった。
「崎谷に言わなくて良いのかよ?駆け引きの話。もしお前が負けたら…。」
「大丈夫!私強いもの!!」