我々のセンパイ世代、50代後半から60代、70代の方々は、勤勉でガムシャラな方が多い。
とにかく何をやるにしても、アクセル全開、全力投球!
ワタシはそういうセンパイ方が大好きなのだが、それゆえに心配なことがある。
それは、人一倍パワフルだったセンパイ方も、年齢的にさすがに無理が効かなくなってきたということ……。
少林寺拳法を一所懸命修練していたセンパイ世代の仲間が、体調を崩して、稽古を継続できなくなったという話を聞くと、本当にさみしいし、悲しくなります。
よく、少年部は「育てる拳法」 青年の拳士には「鍛える拳法」 中高年の拳士には「養う拳法」と言われますが、おじさん・おばさん(失礼!)になってきたら、アクセルをゆるめることも、肝心なのではないでしょうか?
レースの世界には、アクセルの「全開率」という言葉がある。
直線区間が長い高速タイプのサーキットなら全開率が高く、クネクネしテクニカルなサーキットは低くなる。
F1でいえば、市街地サーキットのモナコGPが、約40%
もっとも全開率の高い、イタリアGPのモンツァで、68%
日本の鈴鹿サーキットで、61%と言われている。
しかも、全負荷・全開となると、全体のたった10%
今年のメルセデスF1のパワーユニットの最高出力が900馬力だそうだが、
その900馬力のフルパワーを使うのは、レース中の10%だけ……
なので、本当に速いエンジンは、全開時の最高出力より、ハーフスロットルからのピックアップ、レスポンス、全体としてのつながり、扱いやすさ(ドライバビリティ)の方が、大事だったりする。
人生も同じようなものではないだろうか。
全開ばかりでは、F1だってコースアウトしてしまうし、エンジンもマシンももたなくなる。
抑えるところは抑えないと、トップチェッカーも受けられないし、完走できない。
人間も、いつでもどこでも身体を張っていたのでは、身がもたない。
普段はできるだけリラックスして、いざというとき、身体を張る。
つまり、平常身を養って、緊張身とはおさらばするのが、修行者の目指すところだと心得ている。
だから、我孫子道院では、引き続き「頑張る」は禁句とします。
(「頑張る」=「頑なに張る」=緊張し、筋肉の固まった状態=平常身の正反対だから)
「修行」とは、「継続」するという意味のインドの言葉が語源で、「続けていくことで、変わること」こと。
全開バリバリの人生は、とても魅力的で、ワタシもパワフルな人が大好きなのだが、全開か全閉しかないエンジンなんて、どんなにピークパワーが大きくても使いにくいに決まっている。
なので、ワタシも含め、おじさん拳士は、フルスロットルではなく、ハーフスロットルで勝負できる、柔軟で、絶対的なパワーより、フィーリングのいい“エンジン”を目指し、修行を継続し、全うできる道を歩んでいこうではありませんか。
もちろん、若者の皆さんは、どうぞ遠慮なく、全開バリバリの少林寺拳法ライフをお楽しみください(笑)。
本日の「身体の知能指数」 (PQ=physical quotient) 『102』