今回は新曲というより、二年前に作った楽曲のリメイクである。

音質、各パートをバージョンアップさせた。

RISING / Flag of Roots

※イヤホン推奨

RISING《ライジング》

作詞曲：鬼将軍

暴こう偽りに染まった歴史
嘯《うそぶ》く藤花《ふじばな》糾《ただ》すは梅花《うめばな》

謂《い》れなき虚言《そらごと》道理なき政《まつりごと》
呪い求むるなら確と見届け

雷神輝かせ虚《うつろ》を燃やし撃つ
雷神哀《かな》しみの雨で洗い浄《きよ》め

牛頭《ごず》の囁きが東風《こち》に聴こえ来る

雷神輝かせ虚《うつろ》を燃やし撃つ
雷神哀《かな》しみの雨で洗い浄《きよ》め

雷神轟く音で大地を揺さ振って
雷神導く智慧闇照らす光となる

天地《あめつち》動かす音霊《おとだま》の力で

旧バージョン：RISING / Flag of Roots

菅原道真《すがわらのみちざね》!!

それは平安貴族、日本史上最恐の怨霊である!!

身分の低い自生でありながらも、天性の才能で天皇の信頼を得て、右大臣《うだいじん》（今でいう副首相）にまで上り詰めた実力者である。

しかし、朝廷で権勢を振るっていた藤原時平《ふじわらのときひら》の陰謀により、京から九州の太宰府《だざいふ》に左遷され、無念のあまり、死後は大怨霊となった。

道真排斥の首謀者たちの度重なる病死、さらに天皇の屋敷に雷が落ち、数名が死亡するという事件まで起きる。

道真を重用し、そして時平の讒言《ざんげん》を真に受けて道真左遷を命じた醍醐《だいご》天皇は、落雷事件の後、ショックを受けて崩御してしまう。

道真の政治思想は、天皇を中心とした中央集権体制を実現することだったが、これがあくまで専制を進めたい藤原氏の思惑と対立した。

そして藤原時平の陰謀により、道真は朝廷から排斥されたというのが事の発端で、それ以降の日本は、藤原氏が影から天皇を操る時代に。

やがて「怨霊・道真の祟りに違いない！！」と噂され、道真は「天神様」すなわち雷神として崇められるように。

また、道真が優れた学者でもあったことから、学問の神様としての天神信仰が盛んになった。

日本人としての判官贔屓《ほうがんびいき》精神か、私はなぜか、やらかした人、優秀だが不遇に見舞われた人、そして怨霊になった人に共感することが多い。

なにより、すでに平将門の楽曲も作ったぐらいなので、怨霊マニアを名乗ってもいいと思う。

怨霊を慰めれば、強大なる守り神になるという信仰もあるように、言霊と音霊によって怨霊を鎮魂し、味方につけているのだ。

もちろん「RISING」という曲名は「雷神」＝道真を意味しており、生前の道真の意志から、怨霊になった道真の激昂までを詩にした。

全然なっていないが、雰囲気だけはLAメタルを意識したつもりである。

よく聴けば、ギターソロは「通りゃんせ」で、和風ホラー的な要素も入れてある。

無粋だが、歌詞の解説をしていこう。

「嘯《うそぶ》く藤花《ふじばな》糾《ただ》すは梅花《うめばな》」

＝嘘をつく藤原氏を糾弾するのは私である。

道真は梅を愛したことでも知られ、また家紋も夢の花（梅鉢）とされている。

「謂《い》れなき虚言《そらごと》道理なき政《まつりごと》」

＝根拠なき誹謗中傷、正当性のない政治。

いずれも藤原氏の行為への怒りを指している。

「牛頭《ごず》の囁きが東風《こち》に聴こえ来る」

また道真は、牛とも縁が深かったともいわれ、道真を祭神とする神社では、かならず牛の像が祀られている。

道真と牛にまつわる伝説。

・道真の出生年は丑年である
・左遷時、牛が道真を泣いて見送った
・道真は牛に乗り大宰府へ下った
・道真には牛がよくなつき、牛を愛育した
・牛が刺客から道真を守った
・道真の墓所の位置は牛が決めた

この曲では、牛＝牛頭天王《ごずてんのう》としている。

また「東風《こち》に聴こえ来る」は、道真が左遷先で詠んだ以下の有名な歌をもとにしている。

東風吹かば
にほひをこせよ
梅の花
主なしとて
春を忘るな

「天地《あめつち》動かす音霊《おとだま》の力で」

これは道真と同時代の紀貫之《きのつらゆき》により書かれた、古今和歌集の仮名序の一文を参考にしている。

〝力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をも憐れと思わせ、男女の仲をも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり〟

文章博士《もんじょうはかせ》でもあり、陰陽道や神代文字、そして呪術にも長けていた道真は、言霊の力によって国づくりを行おうとしていた。

そして死後は雷神（怨霊）となり、雷鳴という音霊によって大地を揺さぶり、是非を問うた。

楽曲についての詳しい情報はこちら。

フラオブ楽曲リスト

RISING 〜雷神〜