ドラマ「はだしのゲン」を二夜連続で観て、不覚にも泣いてしまった。このドラマの原作は俺が幼少の頃「週間少年ジャンプ」に連載されていて、俺も読んでいた。絵もお話も強烈で、特に被爆者の描写は子供心に不気味で、俺の記憶に強く残っている漫画である。戦後20年、オリンピックの年に生まれた俺が子供の頃は、周りには戦争を体験している大人が多く、東京下町という土地柄もあって、戦中・戦後の食糧難や東京大空襲の凄まじさを、周りの大人から事あるごとに聞かされていた記憶がある。お陰で、食べ物の大切さや平和の尊さを実生活の中から学ぶことが出来た世代である。同時に、あの戦争に対しても「戦争はとにかく悪い」という先生や「あんな負け戦を長引かせた軍かまずかった」という近所の親父、「あれは売られた喧嘩を買ったまでの事よ・・・」と遠い目をする爺ぃまで、色々な意見を持った大人達の話も聞かされて育った。ドラマ「はだしのゲン」を観ていて、最も印象に残ったシーンは兵隊に志願した長男と、それを諫める親父の会話の場面である。負けると解っている戦に参加して、無駄死にするなと言う親父、それに対して、たとえ負けると解っていても自分や家族が卑怯だと言われる事が我慢出来ずに戦争に行こうとする息子。そしてその息子を最終的に万歳をしながら、戦地に見送る親父。俺はこのシーンを観ながら号泣してしまった。戦争は狂気である。戦争中はその国家の狂気の中で、人々も究極の状態に置かれたまま色々な選択を強いられる。だからこそ、その選択は純粋で、気高くそして悲しいのだ。

戦後62年、幸いなことにこの国は戦争をしないで済んでいる。しかし、この平和がいつまで続くか誰も解らない。この平和はけっして享受しているのではない。この国の先人達が奮闘努力の末選択し、血みどろで掴み取った平和だということを、肝に銘じよう。