駒組みの手順と意味・矢倉編-初手~24手 | 2手目△8四歩の世界

2手目△8四歩の世界

将棋倶楽部24で三段の居飛車党が2手目△8四歩から始まる定跡の歴史および現状について簡単にまとめます。観戦時にガイドとして使っていただければ幸いです。記事中では棋士の敬称は省略します。

 矢倉の駒組みに関して、まず、新24手組といわれる組み方を1手ずつ解説する。なお2手目△8四歩の意味は省略する。

 25手目に▲3七銀と指せば4六銀型や加藤流、▲6八角と指せば森下システムへと進む。

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初手からの指し手

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀
▲5六歩 △5四歩 ▲4八銀 △4二銀 ▲5八金右 △3二金
▲7八金 △4一玉 ▲6九玉 △7四歩 ▲6七金右 △5二金
▲7七銀 △3三銀 ▲7九角 △3一角 ▲3六歩 △4四歩


・3手目▲6八銀

 矢倉を目指すならばほぼこの一手。他に△3二金との交換は先手得だと見て、▲7八金△3二金の交換を入れてから▲6八銀という手もないわけではないが、後手は△3二金とは限らないため、余計な変化を与える可能性がある。


・4手目△3四歩

 現在、先手陣は角が浮いた状態であり、△3四歩は先手に角道を止めるよう強制する意味がある。形を決めさせて選択肢を狭めさせる。


・5手目▲6六歩

 5手目を▲7七銀とするか、▲6六歩とするかが大きな岐路。5手目▲7七銀は中央が薄くなるため、矢倉中飛車や5筋交換~△5二飛~△8二角のような変化を与える。一方、5手目▲6六歩は6筋に争点ができるため、右四間飛車や棒銀の変化を与える。

 現在は5手目▲6六歩の実戦例が多いが、どちらが最善か結論は出ていない。


・6手目△6二銀

 序盤はどんどん金銀を押し上げていくのが矢倉の指し方。△4二銀と上がっても同じようだが、先手に振り飛車にされたときに後手の選択肢が減っている。


・7手目▲5六歩

 かつてはこのあたりで▲2六歩と突いて、後手に△4二銀と形を決めさせていたが、飛車先を保留する指し方が生まれたことで、先手矢倉の可能性が格段に広がった。▲2六歩を保留する欠点があるとすれば、▲2六歩~▲2五歩と飛車先を伸ばすのに時間がかかるため、後手は角筋を通したまま急戦に出ることができる点がある。

 7手目▲5六歩に代えて▲4八銀だと、△8五歩▲7七銀△7四歩▲2六歩△7三銀▲2五歩△6四銀と早繰り銀に出るような変化を与える。これで先手が悪いというわけではないが、余計な変化を与える必要はない。


・8手目△5四歩

 ▲5六歩に△7四歩~△7三銀は先手の飛車の横利きが通っているし、▲7九角~▲4六角(あるいは▲2六歩~▲2五歩~▲2四歩△同歩▲同角)と素早く反撃する筋もあるため、無理筋。

 △5四歩に代えて△6四歩から右四間飛車を目指す手もあり、加藤(一)が得意としている。


・11手目▲5八金右

 ▲7八金と上がらず、早囲い(▲6七金右~▲7七銀で6八~7八と玉の移動ルートを用意することで角の動きを1手分省略しようという指し方)を見せる指し方。


・12手目△3二金

 △5二金右と追随すると、先手に早囲いに組まれてしまう。△3二金は急戦(矢倉中飛車や米長流)を見せて、早囲いを警戒する指し方。


・13手目▲7八金 

後手の早囲いがなくなったのを見て▲7八金と先手も早囲いをあきらめる。11手目▲5八金右の真の狙いは後手の早囲いを防ぐことにあった。なおも早囲いにこだわる指し方として藤井流がある。


・16手目△7四歩

 △7四歩は5筋交換型の急戦(阿久津流)などの含みを持たせた手。▲7七銀と上がってくれば、のちに△5二飛の転換の余地がある分得となっている。

 △7四歩▲6七金右の交換が後手損(たとえば▲4六角が飛車取りに当たるなど)とみれば、単に△5二金もある。


・19手目▲7七銀

 △5二金(右)と▲7七銀はセットになった指し手。△5二飛がなくなれば中央に備えておく必要はあまりなくなる。


・20手目△3三銀

 ここで△6四歩▲2六歩△8五歩と指せば、米長流急戦矢倉となる。後手の△6四歩は急戦の合図で先手は▲2六歩を保留する意味がなくなるため、▲2六歩~▲2五歩と後手を牽制することとなる。


・23手目▲3六歩

 次に△6四角と出られるとなかなか▲3六歩と突けなくなって、攻撃陣の構築に支障をきたす可能性がある。


・24手目△4四歩

 △6四角と出ると▲3七銀と▲3七桂の2つの選択肢を与える。△6四角は先手が▲3七銀と指した瞬間に出たい。