照りつける太陽。
どこまでも青く澄み渡った空。
そう、この時期になると小生は思い出す。
あの潮騒を。太陽の季節を。
潮の匂いと甘酸っぱく、そしてほろ苦い記憶とともに―――。
12年前。
小生は江の島海岸にいた。
ココナツの香りの漂う砂浜。
焼けた砂の上を歩く小生の心は躍っていた。
「ここから何かはじまる―――」
否応なしにそんな気にさせる魔力が海にはあった。
都会の喧騒とはまた違った賑わいがそこにはあり、
老若男女問わず、いつもの自分を脱ぎしてはしゃぎまわっている・・・。
そう、すこしだけ大胆になれる季節、夏。
小生は夏のそんな力を信じていた。
そう、少しばかり小生はそんな夏の力を過信していたのだ。
小生「ヘ~イ彼女、どこからきたの~?」
大事故です!
おなご「しらな~い」
小生「そうなんだ~?名前は?」
おなご「しらな~い」
小生「そうなんだ?」
そう、小生はイケメンでもなんでもないただの小さいオッサン。
小生は夏の魔法という名の勘違いをしていたのだ…。
小生の夏は終わりを告げた。
小生の頭の中で太陽のkomachi angelがいつまでもリフレインしていた。