雨の朝、
春のそこそこひんやりとした空気に、
新緑が青々と目に入る。
ある漢詩が思い出された。
渭城朝雨浥輕塵
いじょうのちょうう
けいじんをうるおす
客舍青青柳色新
かくしゃせいせい
りゅうしょくあらたなり
勸君更盡一杯酒
きみにすすむ
さらにつくせ いっぱいのさけ
西出陽關無故人
にしのかたようかんをいずれば
こじんなからん
（王維）
旧友を送り出す朝に、
もう一杯のお酒を勧める、
名残おしさと寂しさが
朝の雨の光景とかぶってくる。
さて、
中国で、
商船三井のタンカー1隻が
差し押さえられた。
差し押さえの名義は、
日中戦争直前の1936年に
中国の会社が
日本の海運会社に貸した
船舶をめぐる訴訟で、
中国人原告への
賠償金29億円を支払うよう
命じた判決に基づく。
判決は、2007年のこと。
中国が
日本企業を相手にした
強制執行としては
初の大掛かりなものとなる。
差し押さえられた船舶は、
「BAOSTEEL EMOTION号」
BAOSTEELは、
宝の鋼。
宝鋼集団有限公司は、
中国国有持株会社だ。
商船三井とは長年に渡る
ビジネスパートナーだ。
EMOTIONは、
感情。
日本船籍を差し押さえた
中国の感情には、
旧友にもう一杯のお酒を勧める、
そんな気持ちがあるはずだ。
対立軸でなく、
酒を酌み交わし、
朝の雨に別れを惜しむような
関係形成ができないのだろうか。
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