野沢 尚
深紅

友人が勧めてくれたミステリーです。


小学校の移動教室の夜、奏子(かなこ)の留守中に、父、母、弟2人を一家惨殺されてしまうのです。

第一章は、東京に帰るタクシーの中から家族が殺された事実を知り、それを認識するまでの長い一夜を書いています。


そして第二章では、興味深い殺人犯人の上申書が掲載されています。


これを読んだ読者が、犯人につい同情してしまうのではないかと思うのです。


そして、第三章以降、物語は佳境に入ります。


一家惨殺されて、自分だけが生き残ったことに罪悪感を感じる奏子。

自分も一緒に殺してくれればいいと言う未歩。


同じ年の2人は全く別の人生を歩いています。

表面的には恵まれているように見える奏子ですが、心の中には癒えない苦しみが渦巻いています。


この2人が出会った時、物語が大きく動くのです。


引きずり込まれるように一気に読みました。


野沢さんが言いたいことが完全に私に伝わっているかはともかく、物語としては構成も上手く、面白かったと思います。

終り方も良かった。


2人の少女の未来が明るいことを願って本を閉じました。