著者: 森 絵都
タイトル: いつかパラソルの下で

森絵都さんのファンの私。

この本は完全に大人向けの小説です。

森さんのファンの方が聞いたら嫌な気分になられるかもしれませんが、私個人としては、大人向けの本より、やっぱり児童向けの本を書いて欲しいなというのが本音。


というのは、こういうテーマの本は他の人でも書ける。

でも、本に馴染まない子供たち、まだ人生の指針が見つかっていない思春期の子供たちにメッセージを送る筆力がある人はそんなにはいないと思うからです。


この本は大人向けだけど、ヤングアダルトと共通するのは、大人になりきれてない、厳格な父親の影を引きずる女性が主人公ということ。

つまり、どの世代向けであっても、「今の自分を受け入れていない」主人公が、自分を受け入れて元気に生きていくというのがテーマというのは共通する作者の思いなのでしょう。


最近、たまたま読んだ本が、同じ父親像に結びついていて、老年の恋について考えました。

最近読んだ、「魂萌え!」 も、「阿修羅のごとく」 も、死んでから父親(夫)が不倫していたことを知るのです。

女性にもてるような柄でもなく、真面目一本、堅物の壮年、老年男性が、人生最後に一花咲かせたい、もしくは、自分が男性であることを忘れたくない。

家庭にいる妻よりも、女である新鮮な外の女性に心を寄せる。

そんな男性の出てくる本をたまたま偶然に続けて読んだせいでしょうか。


主人公が、抜け出せない思春期、父親への思いを卒業して、生きていくというテーマより、老年の男性の性(サガ)を考えてしまった私です。


読んでいる間は、主人公の気持ちも分かったし、律儀な末妹の気持ちも分かりました。

一見、チャランポランな兄や、鬱気味のお母さんの気持ちも、父の不倫相手の言う言葉もそれなりに理解できました。

でも、読み終わった後、「読んで良かった!」と思える程ではなかったのは何故なのか。


とりあえず、ハッピーエンドだったのですけれどね。

なんとなく、スッキリしない私でした。