げんごろうのアサガオじまでおとまり(その2) | しのりの創作童話通り

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童話を書き始めたばかりのアラフォーが、これまで書いた童話をブログに載せています。
童話の中でも、特に好きなのは創作昔ばなしです(^^)

いよいよ、げんごろうたちは大きなみずうみにうかぶ小さなしまへおとまりにいくじかんがやってきました。げんごろうたちにとっては、小さなしまで水あそびをしたりおとまりするのがとてもたのしみです。

でも、おかあさんにとっては、げんごろうたちだけでおとまりにいくのはすこししんぱいになっているようです。

「げんごろう、みずうみに入るときはすいえいのししょうのいうことをちゃんとまもってくださいね。みんなも、みずうみでおよぐときはくれぐれも気をつけておよいでね」

おかあさんはげんごろうたちにきちんとちゅういすることをいって、げんごろうにおにぎりの入ったおべんとうをてわしました。

「おっかあ、大きなみずうみにうかぶ小さいしまへいってくるよ。じびきあみでおさかなをいっぱいとってくるからまっていてね!」

「げんごろうもみんなも、けがのないようにくれぐれも気をつけていってくださいね」

 げんごろうはげんきいっぱいのこえでおかあさんにあいさつしていくと、おかあさんはみんなにけがのないようにちゅういしながらおくり出しました。

 「げんごろう、きのうつくった大きないかだはどうするの?」

 サルが大きないかだを見てげんごろうにいいました。大きないかだは、どうぶつたちがもち上げようとしてもおもくてなかなかもち上がりません。

 「な~に、大きないかだぐらいへいきでもち上げることができるぞ」

 げんごろうは、大きないかだをもつと、らくらくともち上げることができました。大きないかだの上には、げんごろうとクマきちのおふとんものせています。げんごろうはとてつもないほどの力もちなので、クマきちもどうぶつたちも大だすかりです。

 「げんごろうが大きないかだをもっているから、ぼくたちも小さなしまへもっていくものはじぶんたちでもっていきましょう」

 クマきちやほかのどうぶつたちも、じぶんたちでもっていくものやさかなをとるためのじびきあみをもっていきます。

 げんごろうたちは、うたをうたいながら山の中をげんきにあるきつづけています。




 大きなみずうみ見たら ひとまわりでっかいぞ

 水あそび じびきあみ たのしみだな

 ヨイショヨイショと みんなでじびきあみ

 みんなであそんだら もっとたのしいよ




 どんなにあついときでも いつもげんきいっぱい

 おすもうや 木のぼりも たのしみだな

 ドスコイドスコイと みんなでおすもうだ

 みんなであそんだら もっとたのしいよ




 しばらくすると、クマきちやどうぶつたちはあるきつかれたのか、すわりこんでしまいました。

 「げんごろうくん、大きなみずうみまであとどのくらいでいけるの?」

 「もうちょっとして山の中を出るとすぐ目の前に大きなみずうみが見えてくるよ。おにぎりを食べると、またげんきになるからみんなで食べようよ」

 どうぶつたちがすわりこんだままでいうと、げんごろうは大きないかだをじめんにおいてからおべんとうを出しました。おべんとうには、げんごろうのおかあさんが作ってくれたおにぎりがありました。

 「小さなしまにはおさかなもいるし、山の中にはくだものもあるから食べものはだいじょうぶだよ。さあ、おにぎりを食べて大きなみずうみへ早くいきましょう!」

 げんごろうがそういうと、さっそくおにぎりをクマきちやどうぶつたちに分けました。そして、みんなでワイワイとにぎやかにおにぎりを食べました。

 おにぎりを食べおわると、げんごろうもどうぶつたちもげんきいっぱいになりました。げんごろうは大きないかだをもち上げてあるきだすと、ほかのどうぶつたちもふたたびみずうみにむかってあるきはじめました。ところが、クマきちはほかのどうぶつたちといっしょにあるいていたのに、大きなみずうみがすこしずつ見えてくるとあるくのがおそくなり、どうぶつたちのうしろからもすこしずつはなれていきました。

 「クマきち、どうしたの? さっきからげんきがないようだけど」

 げんごろうは、立ちどまるとクマきちを見てしんぱいそうなようすでいいました。

 「な、何でもないよ。ぼくだってたのしみにしているんだもん」

 クマきちはどうぶつたちがいる前でしょんぼりしたかおを見せないように、すこしつよがりながらいいました。そして、クマきちは大きなみずうみをできるだけ見ないようにあるきだしました。げんごろうやどうぶつたちも目の前に大きなみずうみが見えてきましたので、すこしでも早くみずうみにつくようにあるいています。

 げんごろうたちが山の中から出ると、とてもでっかくて大きいみずうみが目の前にひろがっています。そして、その大きなみずうみにうかんでいるのが小さいしまです。小さいしまといってもかなり広いところであるので、水あそびやじびきあみはもちろんですが、山の中に入って木のぼりをしたり、くだものを取ったりすることもできます。

 げんごろうは、この小さなしまでおとまりするのがとてもたのしみだし、すいえいのししょうに会えるのもたのしみです。どうぶつたちもげんごろうと同じように、小さなしまであそんだり食べたりすることをたのしみにしています。

 でも、クマきちだけは大きなみずうみの水を見ただけでこわいので、できるだけ目をつむったり、空のほうを見たりしています。

 げんごろうは、大きないかだをみずうみの入り口におきました。そのいかだからは、さらに少し長いなわが出ています。げんごろうは、そのなわをおなかにくくりつけました。

 「よーし、これからいかだにのって小さなしまへいくから、みんなもこのいかだに早くのってね!」

 げんごろうは、げんきいっぱいの明るいこえでクマきちやどうぶつたちにいいました。小さなしまにいくのがたのしみにしているどうぶつたちは、よろこんでいかだの上にのりました。しかし、みずうみの水を見ただけでもこわがるクマきちは、なかなかいかだの上へのろうとしません。

 「クマきちのことは、ぼくがまもってやるから、いっしょに小さいしまへいこうよ」

 げんごろうがクマきちにいうと、クマきちはげんごろうがじぶんのことをまもってくれるといってくれたので、ゆっくりといかだの上へのりました。

 「ぼくが小さなしままで、およぎながらいかだを引っばっていくよ」

 げんごろうはそういいながら、大きないかだをみずうみにうかべると、小さなしまへむかっておよぎながらいかだを引っぱりはじめました。大きないかだの上にはクマきちやどうぶつたちがのっているのでかなりおもいのですが、とてつもないほどの力もちであるげんごろうはらくらくとみずうみをおよいでいます。

 「げんごろうくんは大きないかだをらくらくと引っぱりながらおよいでいるんだね。げんごろうくんが力もちだから、ぼくたちも大だすかりだよ」

 げんごろうがおよぎながら大きないかだを引っぱってくれるので、どうぶつたちも大よろこびです。

 その中にあって、クマきちはいかだにのってからも空のほうを見上げていました。クマ

きちは、大きないけでおぼれたことがあったことから、大きないけやみずうみを見るだけでもこわがるからです。空には、小鳥たちが小さなしまへむかってとんでいます。小鳥たちはいかだにのらなくても、じぶんで空をとぶことができるからです。

 「いいなあ、ぼくも小鳥になればおよがなくてもいいのに…」

 クマきちは、小鳥たちを見ながら心の中でつぶやいていました。

 しばらくすると、げんごろうたちの目の前に小さなしまが大きく見えてきました。小さいしまを見ると、そこにはいろんな花がいっぱい広がっています。

 「いろんな花が広がっているなあ。小さいしまについたら、いろんなことをしてあそぶぞ!」

 どうぶつたちは、もうすぐしたら小さいしまにつくので、今からげんごろうといっしょにあそぶのがたのしみです。



 クマきちやどうぶつたちをのせた大きないかだは小さいしまにつきました。大きないかだが小さなしまにつくと、げんごろうはいかだを引きあげるとともに、クマきちやどうぶつたちはいかだからおりました。

 げんごろうは、いかだをひっぱるためにおなかにくくりつけていたなわをほどきました。げんごろうたちがたどりついた小さいしまには、いろんなしょくぶつがたくさんさいていました。その中でも、なつの花であるアサガオがたくさんさいています。

 「わーい、アサガオがいっぱいさいているよ。このしまの名前をアサガオじまと名づけたいけど、みんないいかな?」

 「げんごろうくん、ぼくたちもこのしまをアサガオじまとするよ。アサガオじまってこの小さいしまにぴったりの名前だよ」

 げんごろうが小さいしまの名前をアサガオじまと名づけると、クマきちもどうぶつたちも小さいしまにぴったりの名前であるので気にいったようです。

 「水の中に足をつけると気もちがいいぞ! みんなも、早く水あそびをしようよ!」

 「ぼくたちもげんごろうくんといっしょに水あそびをするぞ」

 水の中に入ったげんごろうがげんきなこえでみんなにいうと、どうぶつたちもたのしみにしている水あそびをげんごろうといっしょにするために、みずうみの中に入りました。

 「バシャバシャバシャ、やっぱり水あそびはたのしいな」

げんごろうはさっそく、どうぶつたちのかおに水をかけると、どうぶつたちもまけずにげんごろうのかおに水をかけています。そんな中、クマきちだけはいまだにみずうみの中に入ろうとしません。

げんごろうはみずうみからアサガオじまに上がると、クマきちがいるしまの入り口へいきました。

「クマきち、水あそびをすればみんなとたのしくあそべるよ。ぼくといっしょにみずうみの中に入ろうよ」

げんごろうがそういうと、クマきちはおそるおそるとあるきながらげんごろうと手をつないでみずうみの中に入ろうとします。クマきちは、心の中で大きないけでおぼれたときのことをおもい出すと、ほんとうはここからにげ出したいとおもいました。でも、げんごろうがクマきちのことをまもってやるといってくれたので、クマきちはげんごろうのいったことをしんじてみずうみの中に入りました。

「げんごろうくん、水の中に入ってもへいきだよ」

クマきちがみずうみの中に足を入れてもだいじょうぶだったので、いままでゆううつなきもちだったクマきちは明るいえがおにもどりました。

「やっぱり、クマきちはいつも明るくてげんきいっぱいなのがいちばんだよ」

「クマきち、みずうみに入るくらいでこわがらなくていいのよ」

クマきちが明るいえがおになったのを見て、げんごろうやどうぶつたちはいつものクマきちにもどったと大よろこびです。

「さあ、クマきちもきたことだし、みんなで水のかけあいっこをするぞ」

げんごろうはみずうみの水をおもいっきりクマきちやどうぶつたちにかけると、クマきちやどうぶつたちもげんごろうに水をかけています。

こうして、みんなでワイワイと水あそびをしてあそんでいると、みずうみの中からなぞの生きものがあらわれました。

「うわっ、なんだなんだ」

「いままで見たことがない生きものだぞ」

どうぶつたちは、いきなりあらわれたなぞの生きものを見てびっくりしました。しかし、げんごろうはそのなぞの生きものを見ただけですぐに分かりました。

「あっ、ぼくのすいえいのししょうだ! カッパのカッポまるさま、こんにちは」

「おお、げんごろうか。ひさしぶりですね」

げんごろうがカッポまるにあいさつをすると、カッポまるはげんごろうをやさしくむかえました。

カッポまるは、いつも大きなみずうみにすんでいるすいえいの名人です。げんごろうは、小さいときにカッポまるにすいえいをおしえてもらったことがあります。げんごろうがすいえいをとくいにしているのは、カッポまるのおかげです。

「みんな、ぼくのすいえいのししょうであるカッパのカッポまるさまだよ」

「大きなみずうみへようこそ。みずうみの中はいろんなおさかなもいるし、とってもたのしいぞ」

げんごろうがカッポまるをしょうかいすると、カッポまるはみずうみのなかを見るのがとてもたのしいということをみんなにおしえています。

「カッポまるさま、みんなで水あそびしたりしてあそんでいるんだよ。カッポまるさまもいっしょにあそぼう」

げんごろうはカッポまるを水あそびにさそいました。

「それっ、バッシャーン!バッシャーン!」

「ぼくもまけないぞ!パシャパシャパシャ!」

カッポまるは、水をおもいっきりげんごろうのからだにかけました。げんごろうもそれにまけないように、カッポまるに水をかけています。もちろん、クマきちやどうぶつたちもパシャパシャと水のかけあいっこをしています。こうして、水あそびにカッポまるがくわわったことで、ますますにぎやかになりました。



「こんどはアサガオじまに上がっておすもうをするぞ」

「げんごろう、こんどはわしにかてるかな?」

「ぼくはおすもうがだいすきだし、カッポまるさまにはまけないぞ」

げんごろうはおすもうがだいすきですが、小さいときにアサガオじまにやってきたときには何かいやってもおすもうではカッポまるにはかてませんでした。でも、げんごろうはとてつもない力もちでげんきいっぱいの男の子なので、こんどはカッポまるにぜったいにかつぞと心にきめました。

げんごろうたちはアサガオじまに上がると、さっそくどひょうを作って、みんなでおすもうをはじめました。さいしょは、サルとウサギのとりくみです。

「はっけよーい、のこったのこった」

サルもウサギもおたがいにゆずりませんでしたが、さいごはサルがウサギをどひょうの外に出してよりきりました。

つぎは、クマきちとサルがどひょうに上がりました。サルはいきなりクマきちにとびかかりましたが、クマきちは子グマといってもつよいので、クマきちはどひょうの外にサルをなげとばしました。

「どすこい、どすこい」

いよいよ、げんごろうがどひょうに上がりました。どうぶつたちはげんごろうにむかっていきましたが、いずれもげんごろうになげとばされてどひょうの外へ出てしまいました。クマきちもどひょうに上がってげんごろうとおすもうをとりましたが、やっぱりげんごろうは力もちなので、クマきちはどひょうの外になげとばされてしまいました。

「やっぱり、おすもうではげんごろうくんにまったくかなわないよ」

クマきちもどうぶつたちも、げんごろうの力にはまったくかないません。それをきいたカッポまるは、げんごろうとおすもうをとるためにどひょうに上がりました。

いよいよ、げんごろうとカッポまるのよこづなどうしのとりくみがはじまります。

「げんごろうくんもカッポまるさまも、どちらもかんばれ!」

クマきちもどうぶつたちも、よこづなどうしのおすもうを見るのがたのしみです。

「はっけよーい、のこったのこった」

げんごろうもカッポまるも、おたがいにあいてをもち上げてどひょうの外へ出そうとしますが、なかなかもち上がりません。げんごろうは、小さいときにまったくカッポまるにおすもうでかつことができなかったけど、とてつもないほどの力もちであるげんごろうにとってはカッポまるにぜったいにまけないと心の中でおもいつづけていました。

げんごろうは手足に力を入れて、カッポまるをすこしずつもち上げると、げんごろうのあたまの上までカッポまるをもち上げました。

「えーいっ!」

「ドッシーン!」

げんごろうはりょううでに力を入れてカッポまるをどひょうの外へなげとばしました。

「カッポまるさま、いままでとちがってきょうはなげとばしてかったぞ! すごいでしょ」

「さすがのわしも、おすもうではげんごろうの力にはかなわないよ。それにしても、げんごろうはすごい力こぶをもっているし、ほんとうに力もちでげんきいっぱいの男の子になったなあ」

げんごろうは、りょううでをまげてすごい力こぶをカッポまるに見せながらカッポまるにおすもうでかったことをげんきなこえでいいました。すると、カッポまるは、いままでおすもうでまけたことがなかったげんごろうにまけてしまったので、すっかりまいってしまったようです。

 げんごろうのすごい力こぶはまさにげんきで力もちの男の子のシンボル。げんごろうが力もちでげんきな男の子になっているのを見て、カッポまるはやさしく見まもっています。




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