少し前のブログに、アメリカで元ジャスダック社長マドフの投資詐欺事件で被害にあった投資家たちが、税金で少しは還付して欲しいとIRS(米国歳入庁=国税庁)相手に交渉を続けていることを書いた。日本では円天やオレンジ共済などの被害者も「自分の欲」で投資した結果、あり得ない利回りなどを期待した者の自己責任ということで、税金還付などは論外ということであった。

しかし今回、アメリカの反応、決断はあまりにも早かった。ウォールストリート・ジャーナルによると、これらの被害者の損失額の95%まで今すぐ損金計上できるという、アメリカ史上かつてなかった税務面の救済措置を決定した。被害者は(損失額×95%-損失回収額)を損金計上でき、個人の災害盗難損失における制限(損害額から100ドルを差し引き、その額が所得の10%を上回る部分のみしか控除できないというもの)の適用はなく、更に驚くべきことに、その年度で控除しきれない損失額は、過去5年間に納めた所得税から控除できるというもの。それでも控除できない損失額が残れば、将来20年間で相殺可能としている。日本では考えられないことで、オバマ大統領の決断は予想だにしなかった。日本の首相がそのようなことを言い出すと、財務省などは「殿、ご乱心」という話で終わるというもの。今回は元本の他、実際には現金として受領していないが課税された所得(Phantom Income)を損失額として含めることも可能となった。

日本で仮に円天の被害者にこのような救済措置をとったら、国民や世論はどんな反応をするだろうか。米国の社説では、このような寛大な措置を政府がする背景には、現在の経済危機において、何兆円もの金額を問題のある銀行、保険会社や大企業に廻し、個人の救済には何もしなかったという国民のプレッシャーがあったからだとしている。しかし日本では、欲をかいて墓穴を掘った者を税金で救済できないだろう。その理由は何といっても、日本人は世界に最たる「ねたみの国民」であるからで、他人の金儲けをねたみ、他人の不幸を「蜜の味」と感じる国民性からかもしれない。