マイナス金利付き量的・質的金融緩和を2016.01.29に公表(実施は2016.02.16)した黒田東彦日銀総裁が経済財政諮問会議に提出した資料を見てみましょう。

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必要な場合は更に金利を引き下げる、とあります。
注意:これは、個人の銀行の預金金利ではありません。下図のピンク色の部分、当初は約10兆円に対して-0.1%の金利とする(100億円を銀行から日銀へ)そうです。
しかし、210兆円に対しては引き続き+0.1%の金利(2,100億円を日銀から銀行へ)とするそうです。

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詳しく知りたい方は、当ブログの記事(*3)とそのリンク先をご一読なさってはいかがでしょうか。

「本石町日記」氏が、日銀が導入したマイナス金利に対して、
「銀行などに対するステルス課税?」
とつぶやいています。

なるほど、日銀当座預金の一部に対する-0.1%の金利が「ステルス課税」であるならば、+0.1%の付利は銀行への「ステルス補助金」とも言える訳ですね。

この「ステルス補助金」は、金融政策決定会合議事要旨(*4)2008.10.31の白川方明(しらかわ まさあき)氏が日銀総裁の「白い日銀」時代に、始まったようです。

日銀のマイナス金利に批判的な論調は大手メディアなどで見かけますが、+0.1%の付利については、批判的な論調を余り見かけません。

長谷川幸洋氏の記事(*5)から、批判的なコメントを引用します。

"当たり前だが、もともと当座預金に金利は付いていなかった。そこに0.1%の利息をつける異例の政策を採用したのは、2008年11月のこと。あの白川方明総裁時代だ。なぜ利息を付けたかといえば、理由はざっと3つある。

1つ目は、言うまでもなく民間銀行を支援するためだ。

0.1%の利息のおかげで当座預金は増え続け、いま民間銀行は日銀からざっと年間2,200億円の「補助金」をもらった形になっている。普通の企業が預金する1,000万円以上の大口定期でも、金利は1年で0.025~0.035%程度だ。日銀の「銀行優遇」は文字通り、桁違いなのである

それから日銀OBが天下っている短資会社への支援もある

短資会社というのは、日銀と民間銀行の短期資金を仲介するブローカーだが、短資会社は取引手数料が収益源なので、金利がゼロになって取引が減ると、収益が細る

ところが当座預金に0.1%の金利を付けておけば、短期資金の金利はそれ以下に下がらないので取引が続き、収益はそこそこ確保できる。天下りOBを食わせていくためにも、日銀は短資会社を守りたかった

3つ目は国債金利の低下を防ぐ狙いだ

民間銀行からみれば、日銀に預けておけば0.1%の金利を得られるのだから、利回りが0.1%以下に低下した国債を買う必要はない。つまり国債の利回りは0.1%以下に下がりにくくなる。これは財務省支援策だ。

もともと、こういう理不尽な0.1%の付利政策をさっさと撤廃すべきだったのだ"

日銀の庭先を綺麗にしたがる「白い日銀」といったところでしょうか。


さて、経済と物価の見通しは、どうでしょうか。
2015年の実質GDP、2016年の物価上昇率が下振れしています。
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日銀のマイナス金利付き量的・質的緩和やアベノミクスの失敗で、株価下落が起きているとした論調を見かけますが、米中独の株価も下落しています。また、日銀が意図したように、国債金利が低下しています。

日銀やアベノミクスの影響力はそこまですごいのでしょうか(汗
この辺りは、別のブログ記事(*6)にリンク先を紹介しております。


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企業収益と雇用環境は「悪くはない」のですが、2015年10-12月の実質GDPは、マイナス成長になり、2014年4月以降は約2年間、消費が停滞し続けています。
GDPギャップも残ったまま。

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QQE3はまだでしょうか。
国庫納付金(日銀→政府)を減らしてまで行っている+0.1%の付利(「ステルス補助金」)がなくなるのは、いつでしょうか。

また、停滞が続く消費へのテコ入れとして、消費再増税凍結、復興増税廃止、減税、給付金など、行方不明になっている「機動的な財政政策」よ、帰ってこい、と。



【参考情報】
(*1)《黒田議員提出資料》(2016.02.18,黒田東彦日銀総裁)

(*2)《平成28年第2回経済財政諮問会議資料》(2016.02.18,内閣府)

(*3)《【メモ】日銀が導入したマイナス金利(マイナス付利)について》(当ブログ)

(*4)日銀金融政策決定会合議事要旨(2008.10.31開催分)

(*5)《バカげた妄想で金融政策を批判する左傾メディアの「本性」》(2016,長谷川幸洋) 

(*6)《アベノミクスと日銀金融政策の限界で株価暴落?!》(当ブログ)