「子のために離婚原因をグレーにして調停合意するのがよい」とは言えない場合~慰謝料の意味性1(序) | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

1.
「慰謝料あれこれ」シリーズの前記事
 慰謝料の意味性~人格の尊厳に関わる願いと闘いと困難と
の続きです。
シリーズもの乱立でアップアップ状態でございます(笑)。
 前記事では,慰謝料を請求するということが,単純な金銭問題ではなく,被害者の尊厳回復という意味を伴うものだというお話をしました。
 そして,離婚慰謝料の場合は,慰謝料が,離婚にからむものであることから,

 法律問題としては,離婚それ自体,離婚までの子の養育監護,子の親権,財産分与,養育費,子の面会交流などとからみあい

 事実問題としては,離婚が成立するまでの安心安全の問題,離婚が成立するまでの子の置かれる状況,離婚後の子の置かれる状況などとからみあい

全体の中で尊厳回復の意味と他の諸条件とのかねあい,一応の解決までのプレッシャーが重いことをお話ししました。

2.
 さて,私は,今,「不貞あれこれ」というシリーズで,不貞された配偶者サザエが不貞配偶者マスオの不貞の相手方となったタイコに対し,慰謝料請求をするという場合に生じる諸問題についてのシリーズを書いています。
 それと関連して,ここでは,不貞と離婚慰謝料について,こういうケースもあり得るという紹介をしたいと思います。

3.
 さて,いろいろなブログを読んでおりますと,過去のことで争うよりも発想を切り換えて離婚後の生活や子どものことを考えて将来志向で離婚問題を解決しよう,それには調停が一番であるというアピールを読むことがあります。
 それは,確かにそういう面もあります。その当事者が,その置かれた状況を踏まえて,調停合意で早期解決を図るということが,まさにその当事者のニーズに叶うという場合はいくらでもあります。私自身が代理人と関わったケースでも,多分,訴訟の判決決着より裁判上の和解決着の方が多く,訴訟化するケースより調停決着が多いのが実情です(申立代理人が関与することで,調停合意が促進されるという場合も現実にあります。もちろん,その申立代理人弁護士の姿勢に左右されますが。調停というのは本当にダイナミックなものです。)。

 ただ,本当に,実際のケースは様々であり,断定的に,「過去よりも将来を,子どものために,それには調停合意が一番」と言い切ってしまうと,そこからこぼれ落ちてしまうものが沢山出てきます。
 また,「過去に拘るのはやめましょう」という主張は,まさに過去に加害行為を行った加害者には,とても都合のよい主張となります。調停は合意ベースの解決ですので,事実関係はグレーです。そうしますと,過去をグレーにしておきたい,歴史を塗り替えたいという人にとっては,まことに有り難い解決ということになるのですね。
 こういう面もありますので,「子のことを考えて過去にこだわるのはやめよう。」と主張することは,その主張する人の意識は別として,まさに過去を葬り去りたい加害者の方々からの支持を集めてしまうという副作用も出てきたりします。
 ですから,本当に,さまざまなケースがある中で,十把一絡げにして断定的メッセージをアピールするということは,いろいろと危険なものがあると思います。
 そして,「子どものため過去を問題とせず調停合意が一番」ということが,まさに子どものことを考えると,そうは言えないというケースも現実に存在します。
 前振りが長くなりましたが,この記事では,そんな場合の一例を紹介しましょう。

4.
 さて,サザエ,マスオ,タイコの不貞の図に,タラちゃんを加え,さらにノリスケ,イクラちゃんも加えて考えていきましょう。

huteisannkaku

 男性がどうだ,女性がどうだということとは関係ない話ですので,敢えてノリスケ,イクラも加えてW不倫の四角形のケースで考えます。
 このケースで,マスオもタイコも不貞を否認しているとします。
 他方,サザエはマスオ・タイコの不貞を確信し,ノリスケもマスオ・タイコの不貞を確信しているとしましょう。
 そして,サザエーマスオ間,ノリスケータイコ間で,それぞれに離婚の問題が発生しているとします。
 その中で,マスオが,サザエに対し,サザエこそ,お隣のイササカ先生との仲が怪しい,自分の浮気をごまかして離婚したいがために,マスオの不貞をでっちあげたのだと主張したとしましょう。
 タイコもまた,ノリスケに対し,ノリスケが酒を飲んでは殴る蹴るし,ギャンブルをやりまくって家計をボロボロにしてきたのに,それをごまかして離婚したいがために,タイコの不貞をでっちあげたのだと主張したとしましょう。
 とりあえず,この記事では,分かりやすさを優先し,マスオータイコの不貞が実際にあったという前提で考えていきましょう。
 さて,このケース,どんな問題が潜んでいるでしょうか・・・・

5.
 次の記事に続く・・・

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